暇とわたし(短編小説)

7時半、カーテンの隙間から差し込む眩しい太陽で起き、あったかいシャワーを浴びる。
もちろんスキンケアは入念に行う。オイルマッサージも欠かさず行うこと。
朝ごはんはオーガニックのベーグルとアサイーヨーグルト。そして豆乳で作ったココア、これがわたしの1日のはじまり。


そんな訳あるか。憧れもすぎる。


朝、目が覚めてとりあえずやることと言えばスマホチェック。特に誰から連絡が来ている訳でもないのに何となく気にしてしまう、それがルーティン。

ぐだぐだ、スマホの光で目が起きはじめてうだうだ、30分はだらだらする。

カーテンを開けて、背伸びして、右に3秒伸びをして、左に3秒伸びをして、ようやく1日のはじまり。
朝ごはんと言う名の昨日の夜ごはんの残りを食べてひと休み。
そしてもう一度布団に入る。これがわたしのほんとうの1日のはじまり。

暇、うん、暇だ。
何をする訳でもない、この日常は真の暇。

何してたっけ、普段。暇じゃないとき。何時もは。


この街に来てから何もかもが退屈だ。

春から大学生になった私は、実家から出て一人暮らしをはじめた。一人暮らしそのものは気楽で慣れてきているが、何せ、暇。
実家でも特にすることがなく暇なのに、一人暮らしときたら更に暇。


何でこんなに暇なのかな、大学の課題もそこそこあるのに。やりたくないし。
サークルも特に入りたいと思うものがなく、よって友達もまだいない。

嗚呼、暇。

実家も対して田舎ではないし、電車で通おうと思えば通える距離だけど、朝起きてからのゆっくりとした時間の為に一人暮らしをはじめた。

ひとり、暮らし。

近所の小学生達の声が聞こえてくる。登校時間なのか。楽しそう。バイク、車、鳥の鳴き声、街の音が聞こえてくる。


何の変哲もない、ちょっと都会のこの街で、ひとり、暮らしている。

あぁ、そっか、ひとりだから暇なのか。
こんなに外は賑わっていて、楽しそうなのに、私は1人で布団にいて。
外に出てみたら暇じゃなくなるかもしれないのに。いつもそんなことを考えてはやめる。


私はまだこの街のこと、何にも知らない。
知ろうともしていない。
ひとりでいる。

この街の中で、ひとり、暮らしはじめたばかり。
今はまだ、このまま暇でいいのかもしれない。

この部屋とこの街からお別れする日まで。

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