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病魔さん、こんにちは

最初の違和感

今から21年前、娘を産んでしばらく経ってから、私は舌の裏側にポコっと膨んだ白いデキモノに気がつきました。
昔から体質的に口内炎が出来やすかったので『あ〜またか〜』と気にも留めずに放置。そのうち治るだろうとタカを括っておりました。

当時も毎日の腹痛と頭痛、全身の不調が続いており、家事育児の疲れが出ているだけだろうと考えていました。
その上、当時の夫が『病院に行きたいなら、パートに出て稼いでから、自分の金と自分の健康保険使って診てもらえ。俺の金を無駄づかいするな』と言うので、従順だった私は受診を我慢していました(ばかですな)

3ヶ月ほど経っても舌にできた口内炎は治るどころか、白く大きくなり、真ん中がベコっと凹んで火山の噴火口のような形になりました。
夫に見せて分かってもらおうとしても『気持ち悪いもの見せんなよ。その辺でオッさん引っ掛けて金もらって医者行け』というばかり(ゲスですな)

さらに1ヶ月後、実姉家族の家に遊びに行った時、実姉と義兄に『口内炎が治らなくて困ってるの』と言ったところ『ちょっと見せて』と言われ舌のデキモノを見せた途端

『ぅわ!それ、口内炎じゃないよ!とにかく早く歯医者さんに診てもらいなさい!』

横にいた夫は異を唱えようとしましたが、実姉夫婦はそれを許さず、近所の歯科医に診てもらえることになりました。

病魔の目覚め

近所で評判の良い歯科医に電話を入れ受診しに行きました。
『口内炎だったら、すぐ治りますからね』と言いながら、私の口内を診た先生の顔が一瞬で曇りました。

『う〜ん・・・町医者が手を出しちゃいけないかもしれない。大きな病院紹介するから、検査してもらってください』と言って紹介状を書いてくれました。
歯科医の先生が即座に電話を入れてくれて、緊急で予約を取ってくれたので、大学病院の口腔外科で診てもらうことになりました。

大学病院の口腔外科医の先生は、他の口腔外科医二人と一緒に診察した後
『早めに手術して、取り除くのがベストだね。手術後は3日で退院できるけど、しばらくは喋れないから、お仕事調整してからにしましょう』
先生方とのお話の後、病院から所属事務所に電話を入れて相談しました。
当時の私は声優を生業としており、レギュラー番組を3本いただいていました。
うち2本は月内に収録が終わる予定で、もう1本はドラマCDと雑誌の取材を残すのみとなっていました。
事務所と相談の上、予定を早めていただき、レギュラー番組の全てのスケジュールを完了させてから手術することになりました。

当時娘は2歳、いつもいるママが突然いなくなる事態に、泣くことはなかったものの、ずっとバァバに抱きついたまま離れなかったそうです。
普段から娘をほったらかしにしていたパパには一切近寄らなかったと聞いています(この頃からだったんですね)

大学病院とはいえ、短期入院施設だったので、入院手術から退院まで3泊4日という弾丸スケジュールで口腔手術が行われました。
執刀医の先生は口腔外科でも腕がいい人気のある先生だったので、手術を見学したい医学生や看護学生が沢山いました。
手術台に上がってから麻酔で眠るまで、見学室にいる学生さんの多さにビビりまくっておりました。
この時の手術で舌の半分と舌の裏の口底部分を切除しました。

麻酔から覚めて、最初に見た風景は。泣きじゃくる夫と呆れ顔の看護師さんでした。『ゆっくり休ませてあげてくださいね』と言われているのに、私が眠ると揺さぶり起こすの繰り返し。後で訊いたら『死んじゃったら困る』と思って必死だったそうで(クズですな)
このままでは患者の体に障るので、夫には早々に帰ってもらい、ようやく眠ることができました。

手術で病変の初見のある部分を全て切除し、病理検査に出した結果

『診断名 舌癌』

幸い癌細胞が病変部位に留まっていたので、転移の可能性はほぼ無いという診断でしたが、念の為に抗がん剤治療を通院で受けました。
一番弱い薬なので、影響はそんなにないと聞いていましたが、やはり不調続きで、退院してからも家事育児をこなすだけで精一杯でした。
退院してから、1ヶ月も経たないのに、夫からのモラ攻撃再開。
『もう手術終わったんだから、病院行かなくてよくね?』
『えらっそ〜に抗がん剤治療とか言っちゃって。ドラマのヒロイン気取りですか?』その他もろもろ、毎日攻撃されました。
挙句の果てには『手術失敗してくれりゃ、後腐れなくて済んだのに、めんどくせ』
と吐き捨てられたこともありました(あんたがめんどくせぇ)

退院3ヶ月後に仕事復帰できましたが、元通りに喋れるようになるまで、かなりの年数を要しました。

これが最初の舌癌体験です。
この後二度病魔さんが追いかけてきますが、今回はここまで。







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