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【息子のサッカーを見て、見えてきたこと Vol.53】デゼルビ戦術に対する考察
こんにちは!
前回に続き、ブライトンについての戦術を考察します。ブライトンの基本的なフォーメーションは4-3-3または4-2-3-1です。
三笘選手は主に左ウイングで出場しています。右サイドで起用された時は、あまり活きなかったケースがありました。
どうしても右足のアウトサイドをベースに斜め前に入っていくのが得意の選手ですので、右サイドのライン際にいると、窮屈さが目立ちます。
伊東純也選手ですと、右サイドにおいても、左斜め前に走って行けますし、縦の突破に特徴があるので、同じ右利きのサイドの選手でも特徴が違うと言えます。
さて、この4-3-3や4-2-3-1をベースに、ポゼッションを行っていきます。そのポゼッションの特徴を見ていきたいと思います。
①GKを使った、パス回し
これでもかと言うほど、自陣のボール回しでは、GKを使って徹底的にボールを回していきます。GKからは常にパスの選択肢が3つ+αある状態です。
3つと言うのは、両CBにパスをするための右と左それぞれにあり、セントラルMF(昨シーズンだとカイセド選手やマカリスター選手、グロス選手)が少し落ちた、正面のコース。
正面のコースの場合、基本的にはダイレクトで、両CBやサイドバックに渡すような展開となります。一方でここは弱点もあり、次回の弱点の回に回します。
上記で+αとしたのは、GKからの一発の裏の展開と言うのは選択肢として常に念頭においています。相手がプレスで前掛かりになると、相手の陣地に大きなスペースが生まれます。
ここを足の速い選手が常に狙っており、あえてのロングボールを放り込んでいる様子が伺えます。ポゼッションのパス回しが絶対なのではなく、点を奪うことを常に意識しているのだと感じます。
②CBのボールの持ち方
自陣ペナルティエリアの前を通過した後のボールの繋ぎ方として特徴的なのはCBのボールの持ち方。
わざと相手のFWのプレスを引き出すために、ゆっくりドリブルしたり、足の裏で引きながら、ゆっくりと移動させます。ここでのポイントはCBの顔が常に上がっていること。
上がっているからこそ、相手との距離や次に出す味方を意識できている印象です。相手のゴール前(アタッキングサード)に行くまでは、ダメだったら、CBやGKまで戻してやり直します。
前は相手の密集がありますが、後方には常に安全なスペースが確保されています。相手のプレッシャーがなければ、CBがドライブ(ボールを運ぶこと)で前方まで運ぶことが可能です。
ここでCBからワイドに開いた前線の選手(左の三笘選手や右のマーチ選手)に斜めのパスを供給していきます。多くが斜めのパスですが、それにより相手選手の意識が外に向きます。外、外、外と来たら外を警戒するからこそ、中が空いてくる。
また、右寄りに立つCBは右利き、左寄りに立つCBは左利きを置きます。それにより、CBからサイドに展開する際に外側から巻いてくるボールとなり、相手に取られるリスクが下がりますし、外を警戒して開いたポジションを取ると、センターのパスが通りやすくなります。
③ミスの少ないパス回し
非常に高速にパスを行うので、技術の高さを感じます。デゼルビ監督がブライトンの指揮官を引き受けるにあたって、現状戦力をしっかりとチェックしたそうです。
彼には理想のサッカーがあり、それを実現するには高い基礎が求められます。ブライトンの選手たちはまず前提として非常に高い基礎が整っています。
その上で、ミスの少ないパス回しが高速で展開されています。ミスを発生させない工夫として感じるのは、
(a)足元でパスを繋ぐ
(b)パスの距離を長くし過ぎない
(a)ですが、足元で繋いでいるため、出し手と受け手のイメージが合致しやすく、出し手と受け手の意思の相違が発生しにくいという長所があります。
相手に読まれやすいのが、短所ですが、そこはピタッと止まる(フロンターレの「止める」と同様の技術)ことにより、展開が可能となります。
風間八宏さんの名言として「正確なのが一番早い」というのがありますが、正確に止められる(その分顔が上がる)からこそ、次のプレーを早く展開できます。
(b)では、パスの距離が長いと、ずれてしまったり、後ろのDFに取られたりというケースが発生し、相手ボールになってしまいます。
また、(a)と三笘選手は大きく関係します。フロンターレでも度々、披露していましたが、彼の0からのトップスピードというのが活きてきます。アタッキングサードにおいて戦術三笘が大きな武器となっています。
あと、スペースに出す際の工夫も見えます。それは、相手が走っている方向に出すこと。意図があった状態で味方へのパスを出せるため、ミスは減ります。
④ネガティブトランジションのレベルの高さ
ボールが相手に渡った瞬間(ネガティブトランジションの発生)に守備を行っています。このスピード感が速いため、素早く回収し、またボール回しが再開されます。
この時、後方のスペースを担保にやり直しをしているという印象です。
アタッキングサードで、いかにゴールを達成するかはどのビッグクラブも頭を悩ませる場面です。現にブライトンであっても、高いポゼッションを達成しつつもスコアは完敗であったゲームがいくつかあります。
・単独ドリブル突破
・コンビネーションを使った突破
・クロス
・ミドルシュート
・セットプレー
これがゴールのパターンと言われています。ここを達成できる選手には高い給料が用意されるというのが現代のプロサッカーです。
マンチェスターシティで言うとは、ハーランド選手やロドリ選手、デブライネ選手がこうした一発を持っており、高い技術と一発の武器の融合があり得ます。
ただ、資金が潤沢なクラブは世界でも10個ほどですので、他の数多のクラブは知恵と工夫が求められます。その時、優秀な監督と言うのは大きなアセットであると感じます。