ここだけ
暖色系のライトだった。
照らすというよりも包むような光で、
私はわざと ゆっくりと瞬きをした。
目が合うと吸い寄せられるように
首に腕を回して距離を縮める。
可笑しいおかしい可笑しい。
こんなに好きなのに、私のものじゃないなんて。
鳩尾の奥底が握られるような痛みが響いた。
高い体温を感じて、大きく深呼吸をする。
藺草の香りと古びた太い木の匂いがした。
でもそれ以上に何にも比喩できやしない
あなたの優しい香りが身体いっぱいに巡り、
多くの水分を含むと、こころへ入り込む。
そしてそこで私の寂しいを拾っては、
涙点に集まって気づいたら溢れてるんだ。
それでも私はゆっくり瞬きをする。
零れた滴を拭わないまま微笑むのは、
私のかわいそうの増幅薬の代わり。
やっぱり可笑しい。こんなに溢れるのに。
触れれば温かくて、止められない程藻掻く。
唯一の幸は、多分きっと、
苦しいのは私だけじゃないということ。