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「生きちゃった」石井裕也

これは、ユーロスペースで映画を観た際、予告を観て引き込まれて、観にいこうと決めていた作品でした。

い、いや、観た後、めちゃくちゃに引っ張られて、終わり方も、今!?みたいな場面で、そのラストに向かっていくシーンの熱量もすごくて、エグられたというか、ほんと観に行ってよかったです。

仲野大賀さんも、若葉竜也さんも、大島優子さんも、みんなほんとに素晴らしかった、剥き出しの演技を見せつけられたような気分になりました。

男女の3人組の幼なじみで、女性一人、男性二人だった場合、女性が好きだった方とはうまく結ばれないようになっているこの世の中はなんなんだろう、とか武田とはなんで結ばれなかったんだろう、とか、お互い気持ちは知っていたんじゃないかな、とかそんな余計なことを考えました。お互いが大切だからこそ間にいた武田もしんどかっただろうな。「そんなに暇じゃない」っていう彼が好きでした。

あっちゃんのお兄さんが、人を殺めてしまうシーンは思わず目をつぶりたくなった。兄弟だからこその、愛、があるゆえの、あの行動になってしまったんだろうけど、それだけはやめて、って思わず思ってしまいました。でも、許せなかったんでしょう、どうしても。その気持ちもわからないこともないから、不思議ですよね。

あっちゃんと奈津美が、会話をする際お互いに一切目を合わせないだとか、側から見ればそんな二人の関係は破綻していると思われるかもしれない。でもあっちゃんは本当に奈津美が好きで、好きだからこそ言えない気持ちが多くて、本当に大切だからこそ、余計なことを言うぐらいだったら、という気持ちが湧いてくるの、ものすごく分かります。ましてや夫婦で、一緒にいることが形式として確約されていれば、日本人の言わなくても伝わるだろう、という察してくれ、まではいかなくても、あえて多くを語らないといった空気感が出てくるのも仕方ないような気がしました。

でも、奈津美の気持ちも痛いほど分かります。口に出して欲しい、ちゃんと「今は自分が愛されている」と、確信したかったと思います。妊娠中にあんな場面に出くわしたら、もう信じられなくなってしまうと思います。母親としても在り方もすごくよかった。奈津美の女としての生き様は、とにかくかっこよかったです。娘のために、自分が好きだと思えた人間のために、すごく懸命に生きている姿が良かった。最後あっちゃんと話した時、罵られた方が楽だっただろうに、あんな風に、「うん」って言われてしまうと本当にもうどうしようもないんだな、って思わされるよな・・・って、もう節々に痛いほど奈津美の気持ちが伝わってくるシーンばかりでした。

とにかく観終わったあとの余韻がすごくて、ずっと頭ん中をいろんな気持ちがぐるぐるしてました。お酒が飲みたくなったし、観た人の感想を漁りたくなったし、一人で夜道を散歩したい気持ちにもなった。生きていると、生きるってよくわかんないけど、生きちゃったな、って思う日の方が多い。なんで自分が、生きているのか、本来生きているべき人間が死んじゃったりするのか、なんて考えてもどうしようもないことを考えたりする。

英題の方がこの作品にはしっくりくるかもしれないです。思ったこと、素直に、好きな人、大切にしたい人にだからこそ、思っていること素直に吐き出せるようになれたらいいのにな。

#映画 #映画レビュー #生きちゃった #ネタバレ #仲野大賀 #大島優子 #若葉竜也

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