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子育ての難しさに翻弄される夜

現実と夢の間を行ったり来たりしていたころ。
パパー、とぼくを呼ぶ声が聞こえた。

暗闇の中、目を開けて声のする方を見る。
もう一度、パパー、と心配そうな申し訳なさそうな声が聞こえた。

「わたし、お腹痛くなっちゃった」
その一言で、ぼくは完全に覚醒する。

「わかった、じゃあトイレ行こっか」

***

東京にいるママに会うため、車で京都から8時間。
ホテルに着いたのは深夜12時をまわっていた。
道中SAに寄って、ごはんを食べたり観覧車を眺めたりしながら長時間のドライブは楽しく終えた。
ホテルをチェックインすると目が覚めてしまった娘とシャワーを浴びて、就寝したのが1時過ぎ。


スマホをつかみ、時間を見る。
2時8分。
娘を抱え、トイレに連れて行く。

ホテルの部屋に入り一緒にシャワーを浴びたとき、浴槽とトイレが同じところにあることに衝撃を覚えた娘は、なんども、狭ッ!! と言ってははしゃいでいた。

そのトイレで、いまは憂鬱そうにうつむいて座っている。

おなか痛いのに、でーへん。

そう言うとめそめそと泣き出した。
深夜のホテル。様子も、具合もわからない。めそめそと泣く娘の背中をさすりながら頭をフル回転させる。

車やSAで食べたものを思い出し、下痢や嘔吐がないことを確認する。娘はベッドに戻るとおなかが痛くなるからと、椅子の上にうずくまりながらしくしく泣いている。

また、おなか痛くなった。

苦しそうな娘を抱えて、再びトイレへ。だけど、座ってるだけでなにも出ない。
おなかをさすり、背中をなで、抱っこしてあやすも娘は泣くだけ。

なにかヤバイ病気だったらどうするか?
朝一で病院へ行かないとダメか?
旅先で熱や風邪になったら、帰りはどうする?
車で8時間は耐えられないか、新幹線か、そうしたら車はどうするか。。。

娘をあやしながら、頭は最悪の事態に備えて絶えずシミュレーションを繰り返す。

おなか痛いよぉ。

トイレに連れて行っては、なにも出ずに戻ってくる。

一晩で30回近く。

数分置きに、時にはトイレから戻った途端にまたトイレへ、を繰り返す。

ねぇ、おうちに帰りたい。いまから帰ろうよ。

不安げに娘が訴えてくる。

なんどトイレに行ってもなにも出ない。
治らないおなか。
家に帰りたいと訴えてくる娘。

長旅の疲れと、場所見知りでセンシティブになっているんだなと気づく。ぼくも枕が変わると眠りが浅くなる方だけど、娘もそうなのかもしれない。


パパも、知らない場所で寝るの小さい頃嫌だったよ。なんかさ、落ち着かないんだよね。

パパもおうち帰りたくなってたの?

そう。いまもおうちが一番好きだなぁ。

ふーん。オトナなのに?

大人だって、そういう時もあるよ。


いつの間にか、娘は眠っていた。時計を見ると明け方の4時半。今夜は長い夜だった。

***

パパー。ねえ、起きてー。

ようやく訪れた深い眠りから、再び起こされる。窓からはもう朝日が差し込んでいる。

どうした? おなかいたい?

「ちゃうねん、朝やで! おなかすいたー!」

***

子どもって元気だ。
親の心配なんて尻目に、さっさと自分で着替え始めている。

子どもは、症状と原因が一致しないことがよくある。わからない原因を探って、親は病院へ行くかどうか、なにをしてあげるべきかを判断しなくてはいけない。
子育ての難しさに翻弄された夜でした。

***

今日も、見に来てくれてありがとうございます。
東京出張&旅行も後一泊。明日、note更新できるのかなぁ??
ぜひ、明日もまた見に来て下さい。


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三木智有|家事シェア研究家
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