男が家事を好きでもいいじゃないか。
「スープより、パパのお弁当がいいなぁ」
手をつなぎながら歩く娘が言った。
娘が通う幼稚園は、週に1日だけスープの日がある。それぞれが家にある野菜を持ち寄って、それを先生たちがスープにしてくれるのだ。
野菜がキライな娘にしてみたらそれは、ただ野菜スープが嫌だ、というだけのことかもしれない。
それでも、ぼくは本当にうれしかった。
※※※
ぼくは家事そのものが、好きなんだと思う。家事をすることが、というよりは「家事」という営みそのものをとても大切なことと思っている。 だから、そもそも仕事と家事が比較されるととても嫌な気持ちになる。だって、比べることになんの意味がある?
昔は、男なんだから仕事だけに集中していればいいと思っていた。家事が得意だなんて、出しゃばらずに、できないフリをして、彼女をたてていた方がお互い幸せだろうなんて思ったりもしていた。
男の料理は特別なときにつくる、特別に美味い料理で、日常の料理は女性の領域だと思っていた。
そして、そう思っていたことは、ぼくにとって少し息苦しいことだった。
結婚し、ぼくは家事を自分が好きであることを少しずつ受け入れていった。
子どもが産まれて、ぼくにとって家事は仕事の合間にする「ついで」ではなくなった。仕事と家事と育児の垣根はすっかりなくなった。
料理を食べてもらって喜ばれることを嬉しいといつも思うし、毎日作り続けることがいかに面倒くさいかを身をもって知った。
掃除ができない日が続けばイライラするし、スーパーで野菜が10円安ければ宝くじに当たったような気持ちになる。
日々の生活を通して家事が好きなんだという気持ちを、まっすぐに受け止められるようになった。
家事が好きなんだというコンプレックスを感じることもなくなった。
そしてぼくは、自分らしく息をすることができるようになった。
いまは、仕事よりも育児を優先することが多い。仕事よりも家事を優先することもあるし、仕事が最優先のときもある。
「仕事だから、つねに仕事こそ最優先」とは考えなくなった。
仕事の都合があるように、妻や娘の都合がある。それらは、その時々で優先順位が変わる。
それでいいんだ、と思う。
だって娘から「パパのお弁当がいいなぁ」なんて言ってもらえるのは、仕事じゃ絶対に味わえない喜びだから。
では、また明日。