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argue, claim, indicateの違い~エディンバラ授業ノート#7~

突然ですが、下記の3つの文章を読んで、その違いが判るでしょうか?

  1. X argues that ~

  2. X claims that ~

  3. The work of X indicates that ~

3つともXさんが何かしらを主張した・示したことを意味しているので、全部同じなような気がしますよね。
でも実は、使い方によっては大きな誤解を招くことがあるのです。

私も大きな違いはないだろうと思っていた人間でした。
しかしアカデミックライティングにおいては意図的に使い分けているようなので、ぜひその内容を皆さんにも共有したいと思います。

例で挙げた文章はどういう状況かというと、Xさんの先行研究を引用しているケースですね。
アカデミックライティングにおいては引用(いわゆるcitation)をすることがしばしばあるので、読むうえでも書くうえでもよく見かける表現です。

では3つの文章でどのような違いがあるのでしょうか?

Google翻訳では

まずそれぞれの文章がGoogle翻訳でどのように訳されるかを見てみましょう。

  1. X argues that ~:Xは~と主張する

  2. X claims that ~:Xは~と主張します

  3. The work of X indicates that ~:Xの働きは~を示しています

3つ目の文章は明らかに「働き」ではなく「研究」と翻訳するべきですが、Google翻訳では「働き」になってしまっていますね。
とはいうものの、意味としては3つともほとんど同じように見えます。
特に1番と2番は丁寧語かそうじゃないかの違いしかないですよね。

ChatGPTに翻訳してもらうと

Google翻訳なんて使わないよ。時代はChatGPTでしょ!
という人のためにChatGPTにも翻訳を依頼してみました。
結果は下記のような感じ。

  1. X argues that ~:Xは~と主張している

  2. X claims that ~:Xは~と主張している

  3. The work of X indicates that ~:Xの研究は~を示している

Google翻訳とほとんど同じ結果ですが、3番目のworkをきちんと「研究」と訳してくれているのはすごいですね。

3つの文章の違いとは

翻訳を見る限り、3つとも特に大きな違いは無いように思いますよね。
しかし違いはあるのです!!
その違いというのは、書き手がXの意見に対して肯定的か否定的かというポジションを暗示しているという違いなのです。

argueの場合

X argues that ~ と書いた場合、書き手はXの意見に対して中立的なポジションを取っている状態になります。
読み手からすると、その後の議論の展開としてはどういう風に展開されるのか推測できず、ただXさんはそう言っていたという事実が提示されているという状況です。

claimの場合

X claims that ~ と書いた場合、書き手はXの意見に対して否定的なポジションを取っている状態になります。
読み手からするとその後に続く議論は、Xさんの意見のどこかしらを否定する方向で話が進むのだろうと推測をするということです。

indicateの場合

The work of X indicates that ~ と書いた場合、書き手はXの意見に対して肯定的なポジションを取っている状態になります。
読み手からすると、その後に続く議論はXさんの意見を正としたうえで進んでいくのだろうと推測をするということです。

混同してしまうとどうなるのか

この3つを適切に使い分けなければどうなるでしょうか?
私たち日本人が読者の場合は大きな問題にならないでしょうが、英語ネイティブの人が読むと非常に読みづらい文章になってしまうのです。

例えばXさんがオールドファッションは美味しいと言っていたとします。
そして私もオールドファッションは美味しいと考えており、それを主張する論文を書きたいとします。
この場合に使用するべきはThe work of X indicates that ~ですが、もしX claims that~を使用してしまうと、否定的な意見を期待して読み進めていたのに肯定的な意見が出てきて、どっち?となってしまうわけです。

日本語での似たようなケース

日本語で類似のケースを挙げると、下記のような文章でしょうか。

Xさんはオールドファッションが美味しいなんてぬかしとるけどなあ、
俺もオールドファッションは美味しいと思うでえ!

「~なんてぬかす」という表現は、動作としては「言う」と同じですが、書き手の主観的な判断は否定的であることを示していますよね。
その後に続く「オールドファッションは美味しいと思う」という文章を見ると、読み手としては賛成するんかい!とツッコみたくなる文章です。
お笑いとしては面白いですが、論理構造としてはわかりづらくなっていますよね。

Xさんはオールドファッションが美味しいなんてぬかしとるけどなあ
オールドファッションなんて不味いやろ!だって味せえへんもん!

こっちの文章だとすごくすんなり入って来ますよね。
「ぬかす」という動詞と後に続く文章の論理的な構造が適切にマッチしているので、読み手としては期待通りの結論が出て来ていて読みやすいというわけです。

第二言語習得の壁

第二言語を学ぶ際にぶつかる壁として、それぞれの単語が持つニュアンスを理解するのが難しいということがあるかなと思います。
今回の argue, claim, indicate はいずれもXさんの主張としてこんなものがありますということを挙げるための表現ですが、日本語に訳すとその違いはほとんどなくなってしまいます。自分が読み手だけで留まるなら問題ないですが、書き手に回った際にその違いを意識できていなかったら、ネイティブからは非常に読みづらい文章になってしまうわけですね。

高校の英語でargueとclaimの違いは?ってやったような気もしますが、すべての単語でそれをやるとなると非常に難しいですよね。

動詞の使い方以外にも、受動態にすると英語では堅い表現になるからアカデミックライティングにふさわしいとかそういうこともあったりします。
日本語だと受動態の文章は受動態になっただけで、丁寧さが増すとかあんまりないですよね。
英語には敬語などが日本語ほどしっかりしていない代わりに、Registerという概念で文章の堅さを表現しているそうです。こういう概念も日本語話者からするとなかなかとっつきづらいところかなと思ったりします。

まとめ

同じ「主張する」という動詞であっても、使い分けをしっかりしないと、読者の混乱を招いてしまうので注意していこうという話でした。
こういうアカデミックライティングでの表現の使い分けなんていちいち覚えていられないよという私のために、下記のようなサイトもあるので参考にしてみてください。

ちなみに、留学に行ったとしてもアカデミックライティングが不安…という方のためにエディンバラ大学は下記のようなプログラムを提供してくれています。

今回の記事で紹介したargueとclaimの違いについて学んだのも、このacademic language courseに参加して知ることができました。
メインの授業とは別にこうしたサポート授業を取ることができるのもエディンバラ大学のいいところですよね。

#ChatGPTにアカデミックライティング風に修正してって依頼したらいい感じに直してくれるんだよな

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