知的財産権について ~エディンバラ授業ノート#3~
授業ノート#1で、クリエイティブ産業の特徴について説明しました。
そのなかで、クリエイティブ産業は「個人の創造性を元に、知的財産の活用を通じて商品やサービスを生み出す産業」だという説明をしていたんですよね。
知的財産って何?
って思いましたよね。ということで今回はクリエイティブ産業において非常に重要な役割を果たしている知的財産とは何かについてまとめようと思います。
知的財産とは
日本弁理士会の説明ではこのように説明されています。
なんかもうこれが知的財産の説明として過不足無いと思うんですけど、具体的に言うと、創造的なアイデアや技術、芸術作品、ブランドなど、形のないものでありながらも、経済的な価値を持っているものを知的財産というわけですね。
クリエイティブ産業は小説や音楽、映画、ファッションブランドなどが該当するわけなので、知的財産を生産する産業と言えそうです。
知的財産権について
知的財産を保護するための権利、それが知的財産権になります。
それってなんかほかの権利とは違うの?と思いませんか?
財産を保護する権利なんていくらでもあるだろと思いませんか?
例えば車や家といった財産はその所有者がすぐわかりますし、例えば殴って傷つけたら器物損壊でなんか訴えられそうですよね。バイクを盗んで走り出したら怒られるわけです。
では知的財産も同じ理屈で話ができそうでしょうか?難しそうですよね。だって形が無いのですから。でも盗むのはどうでしょうか?バイクを盗むとなったらカギを壊すか盗むかする必要がありますが、知的財産、例えば小説の内容をそのままコピーするのって簡単にできますよね。
というわけで物理的な財産と知的財産では持っている特性が異なるので、保護する範囲とか個別の体系が必要だよねということでできたのが知的財産権というわけです。
主な知的財産権
特によく出てくる知的財産権は下記の4つがあるかなと思います。
著作権
意匠権
商標権
特許権
この中でも特にクリエイティブ産業において重要な役割を果たす著作権について詳しく見ていこうと思います。
著作権について
著作権が保護する対象
まずはそもそも著作権って何を守ってくれるのという点についてお話しします。
著作権が保護する対象は主に4つあります。
文学作品(小説やエッセイなど)
音楽作品
演劇や演技を通じて表現される作品(映画や劇など)
美術作品(絵画や彫刻など)
その他の創作物(写真やソフトウェアなど)
著作権はいつ発生するのか
著作権は作品が創作された時点で自動的に発生します。
特許権などはお役所に行って事務手続きをしなければなりませんが、著作権に関してはそういった手続きは不要で、作品ができた時点で何もせずとも著作権を得ることができます。
著作権の所有者は誰になるのか
著作権の所有者は基本的にその創作物の作者になります。
ただ、その作者の人が会社に雇われている社員で業務の一環として創作された場合、その作品の著作権は会社に帰属することがほとんどです。(契約でそう明記されていることがほとんどです)
例えばゲーム会社で働いている社員が業務の一環として何か絵を描いた場合、その絵の著作権は個人ではなく会社に帰属するということです。
小説家や漫画家はどうなんだという話になりますが、彼らは基本的に個人事業主扱いで、出版社に雇用されている形態ではないため、著作権は作者に残っている状態になります。
あくまで一般論なので、個別の契約内容によって所有者は変わってきます。
著作権が付与される条件は?
自動的に発生すると言っても、いかなる創作物に対しても著作権が付与されるかというとそういうわけではないのです。2つの条件を満たさないと著作権は付与されないんですね。
その2つの条件というのが、
・オリジナリティを有していること
・何かしらの形で記録されていること
という条件になります。
オリジナリティってなんだよって感じですよね。
加えて、「完全に新しいこと」と「オリジナリティがあること」とは別物なんですね。ややこしいですよね。
ここで言うオリジナリティがあるというのは、「作者が自分自身で作り出したかどうか」という点がポイントになるようです。
例えば私がミスチルの曲に影響されて何か別の曲を作ったとします。
それが私が自分の独創性を発揮して自由な選択肢の中から作曲したということであれば、それはオリジナリティがあると言えます。その曲がどれだけ聞くに堪えない曲であろうとオリジナリティはあるのです。
しかし、ミスチルの曲を聴いてそれを耳コピで楽譜に起こした場合、これはオリジナリティは発揮されていないので著作権が付与されることはありません。
もう一つ、何かしらの記録に残っているという条件があります。
これは単にアイデア段階のものには著作権は存在しないということです。
例えば、私が曲を作ろうとして、頭の中でこういうメロディーがいいなと考えていたとします。その段階ではまだ著作権は付与されないということになります。
その脳内のメロディーを鼻歌で歌っていて、誰かがそれを聞いて私より先に楽譜に書いたり音源を作ったりした場合、著作権はその別の人に付与されることになります。
なぜなら私が先に考えていたんだということを証明することはほとんど不可能だからです。
ミスチルの桜井さんに、その新曲俺が8年前に考えていたメロディーと同じだぜ、その曲の著作権は俺にあるぜ、とか言い出したら難癖以外の何物でもないですよね。
ただ、8年前にちゃんと楽譜とか音源に残していて、その日付もきちんと証明することができれば、それは難癖ではなくきちんとした主張になるわけです。
ここでのポイントはアイデア自体に著作権はなく、アイデアをどのように表現したのかという点に著作権は付与されるということです。
具体例:ミスチルのCD
次にミスチルのCDを例に著作権について考えてみます。
ミスチルのCDにはどういう著作権が含まれてくるでしょうか。
当然、曲がCDには入っているわけですから、その曲は音楽作品として著作権で保護されていますよね。
さらにミスチルの曲は歌詞もついているわけですから、歌詞の部分は文学作品として著作権に保護されます。
また、CDのジャケット写真は美術作品や写真として著作権保護の対象になります。
さらに曲それ自体ではなく音源もまた別の著作権で保護されていたり、ジャケットに書いてある文字とかレイアウトとかがまた別の著作権で保護されることもあるようです。
というわけでCD一つとってもかなり多くの著作権が関わっているということがわかってもらえると思います。
著作権の目的
著作権が何を保護して、その権利がいつ発生するのか、誰が持つ権利なのかということはわかってもらえたと思いますが、じゃあ著作権は何をするためのものなんだという話に移ろうと思います。
著作権の目的は、作者がその作品の使用をコントロールすることです。
つまり、作者の意思とは関係なく複製されたり配布されたりすることを防ぐこと、これが著作権が存在する目的になります。
そもそも著作権が生まれたのは活版印刷が普及した時だったんですよね。
それまでは複製するということが容易ではなかったので、著作権という意識が薄かったんですけど、活版印刷の登場によって複製することが簡単にできてしまう環境になったので、著作権という考え方が生まれたようです。
まとめ
今回は知的財産・知的財産権とは何かについての記事でした。
知的活動によって生まれた経済的価値のある無形の財産、それが知的財産で、それを保護する権利が知的財産権ということでしたね。
また知的財産権の中でもクリエイティブ産業で重要な役割を果たす著作権について説明しました。
今回の記事はすごく概要の話だったので、次回の記事ではもっと具体的なケースについて考えていこうと思います。
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