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クリエイティブ産業の特徴 ~エディンバラ授業ノート#1~

こちらでの生活も数週間がたち何度か授業も受けたので、復習ノートを作成していこうと思います。
エディンバラ大学に留学したいと思っている人や、海外大学院に留学したいと思っている人にとっては、実際に行って何が学べるのかというのは大きな関心事かと思いますので、私の復習ノートで少しでも授業のイメージをつかんでもらえたらいいなと思います。

今回の授業ノートは「Creative Markets」という授業の復習ノートになります。


そもそもクリエイティブ産業とは何か

クリエイティブ産業の定義はハッキリしていないので、この点についてはさらっと流そうと思います。
私の理解としては
「個人の創造性を元に、知的財産の活用を通じて商品やサービスを生み出す産業」です。
具体例としては絵画、手芸・工芸、デザイン、映画、テレビ、写真、出版、博物館、美術館、図書館、音楽、演劇、広告、ゲームといったものがあげられていました。
車のデザインとかも創造性が必要なので、自動車とかもクリエイティブ産業に入るのではないかとか考えられますが、正直ここの線引きをはっきりさせたところで大した旨味はないかなと思うので飛ばします。
大切なのは、クリエイティブ産業においては
個人の創造性の発揮が重要であること
・創造性の発揮によって取得した知的財産の活用によって商品やサービスが生まれていること
ということかなと思います。
例えばお米を栽培している農家さんを考えると、彼らは知的財産の活用ではなく栽培したお米を卸売業者や消費者に販売することで利益を得ているので、米栽培はクリエイティブ産業には該当しないかなと。
仮にお米農家さんが超画期的な米栽培機「コメフエール」を発明してその栽培方法に対して特許を取得し、その販売もしくはコメフエールを利用した米栽培によって利益を得ているとしたら、お米農家さんの創造性によって発明が行われ、特許という知的財産を活用しているわけですから、クリエイティブ産業従事者といえるかもしれません。

クリエイティブ産業の特徴

次にクリエイティブ産業の特徴についてお話ししようと思います。
クリエイティブ産業における重要な特徴は4つあると理解しています。

  • 不確実性が大きいこと

  • 評判に大きく左右されること

  • 商品のバリエーションが無限に存在しうるということ

  • 商品やサービスの評価が主観に大きく依存するということ

①不確実性が大きい

不確実性が大きいということは直感的にわかりやすいかもしれません。
テキトーに撮った動画が引くほどバズッたみたいなユーチューバーの話とか聞きますよね。どれだけ丹精込めて作ったとしても、それが売れるかどうかは作成者にはわからないということです。
また、不確実性が大きいのは生産者側だけではなく買い手側にも同じことが言えます。例え400円の漫画を買うケースを考えてみましょう。この400円の漫画が400円に値するかどうかは読んでみるまでわかりませんよね。いくらドラゴンボールが多くの人に支持されているといっても、あなたがドラゴンボールを面白いと思うかどうかはドラゴンボールを読むまでわからないわけです。
このように、売り手も買い手も商品の質が高いのかどうかわからないというのは、クリエイティブ産業の大きな特徴の一つです。

「情報の非対称性」という言葉をご存じでしょうか。
中古車販売を考えた際に、売り手側はその中古車にどういった欠陥があるのかという情報をすべて持っているわけですね。それに対して買い手側はすべての情報を購入前に事前に知りえることはない。ここで売り手と買い手の情報量に差が生じるわけです。この情報量の差を「情報の非対称性」と呼びます。
それに対してクリエイティブ作品は売り手側も買い手側もその商品・サービスに価値があるのかどうかわからない、つまり両者とも十分な情報を持っていないわけです。
このことを「対称的な無知」と言います。
この無知の対称性が不確実性を大きくしている要因というわけです。

②評判に大きく左右される

次に評判に大きく左右されるという点ですが、例えば芸術作品とかがわかりやすいと思います。マルセル・デュシャンの『泉』とか有名ですよね。ただの便器にサインしただけの作品です。中学生が美術の授業でそれを提出したら先生にシバかれそうですが、マルセル・デュシャンがやれば賛否両論はあるものの、現代アートとして認められることもあるわけです。情報があっているかわからないですが、2億円で落札されてるらしいですからね。便器で2億って。
マルセル・デュシャンの例は少し極端でしたが、有名な映画監督だから見に行くとか、有名なアーティストの曲だから聞くみたいなことは往々にしてあるわけです。
文房具を買うときに、有名なメーカーだから買う or 無名のメーカーだから買わないとかはないですよね。とりあえず必要だから立ち寄ったコンビニで買ったものですみたいなことが多いですよね。

③商品のバリエーションが無限

これはどういうことかというと、先ほどの文房具との対比がわかりやすいかもしれません。
例えば書くための文房具を考えてみるとどうでしょう。
鉛筆、ボールペン、シャーペン、万年筆、筆ペンくらいしか私は思いつきませんでした。鉛筆の中でも濃さとか硬さはいろいろありますが、普段使うのはせいぜい2B~2Hの幅ですよね。ボールペンも水性なのか油性なのか、太さは0.5ミリなのか0.3ミリなのかとか、そういった機能面での違いが前面に出るかなと思います。
では小説の場合はどうでしょうか。
推理小説、恋愛小説、コメディ小説、ライトノベル、SFといったジャンルの下に、ミステリーなのかサスペンスなのか、学園ものなのかOLが主人公なのか、児童文学なのか大人向けなのか、等々…
メーカーAのHB鉛筆とメーカーBのHB鉛筆を比べて違いを判別できる人はつく無いと思いますが、東野圭吾の『容疑者Xの献身』と江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』を読んで違いが判りますかと聞かれたら誰でもわかるはずです。なぜなら登場人物も違えば文体も異なりますし、舞台やストーリーもすべて違うわけですから。

④商品やサービスの評価が主観に大きく依存

私は手塚治虫の作品が大好きです。全世界の人に『火の鳥』を読んでほしいと思っています。周りの友人にももちろんお勧めしました。でも読んでくれた人はごく一部でした。絵柄が古いとか途中で挫折したとかそんな理由です。
こんな感じで、ある人には熱烈に支持されたとしても別の人には低評価をされてしまうというのがクリエイティブ産業の宿命です。もちろんすべての産業において個人の好みは大きく影響しますが、クリエイティブ産業は特にその傾向が顕著だというわけですね。
私は便器に2億円払いたいなどとは微塵も思いません。ただ世の中には2億円払う人もいるわけです。では歯ブラシはどうでしょうか。私は歯磨きには結構こだわるタイプなので、300円の歯ブラシを買ったりします。歯ブラシに300円なんてもったいないと思う人もいるかもしれませんが、クリエイティブ産業では2億円だった価格差が歯ブラシでは数百円なのです。歯ブラシという財と芸術作品という財の性質の違いがあるということはこの例で伝わるかと思います。
また、③の無限のバリエーションを生む理由もここにあると思っています。ある人はシェイクスピアが好きだと言い、別の人は紫式部が好きだと言うので、商品のバリエーションが存在しうるわけですね。みんながみんなワンピースが大好き、それ以外は興味ないといった場合、銀魂も鬼滅の刃も生まれなかったわけです。

一応授業では「関わる人のスキルが多種多様」とか「文化変革の原動力になる」とか書いてあったんですけど、個人的にあまり納得していないので省きました。

今回の記事はここまでにして、#2の記事では価値評価の話や戦略の話について書こうと思います。

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