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介護施設の感染対策マニュアル【感染症の予防研修の資料にも使える!】
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。
2024年から、全介護サービスで「感染症予防研修の実施」が年1回以上が必須になりました。
☑ 筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
この記事は、このままコピーをして御施設のマニュアルにすることもできるし、研修の資料にすることもできます。
「マニュアル作成にかける時間が無い」、「研修資料を作成する時間が無い」という方に向けての内容です。
内容は簡単で、難しい表現は省いています。
是非、御施設の運営にお役立てください!
具体的な内容は、次の通りです。
文字数は12200文字という大ボリュームで、研修とすると1時間程度の内容となります。
では早速、みていきましょう。
「感染」と「感染症」について
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「感染」とは、何らかの微生物(病原体)が体内(臓器や組織)に侵入した状態をいいます。
侵入した微生物全てが、病気として発病するわけではありません。
体の抵抗力によってその大部分は、一時的に体内から追い出されるか、あるいは病気を起こさず定着(保菌状態)します。
この保菌状態では、その微生物は何の害も及ぼしません。
「感染症」とは、感染が原因で何らかの症状(せき、発熱、下痢など)を起こしている状態を指します。
感染症の症状が出るのは、病原菌が人の抵抗力よりも強くなった場合です。
よって利用者さんが感染疾患を持っていたとしても、介護職員が皆感染するわけではありませんし、予防することも可能です。
もちろん逆もあります。
保菌状態の職員が利用者さんに感染させてしまい、利用者さんが感染症を発症してしまうケースもあります。
よって介護施設で働く職員は、感染症の知識と、感染対策の知識を身につけることが重要です。
感染症対策の基本
介護施設は、さまざまな人が出入りします。
よって、どこからでも感染症が入ってくる恐れがあります。
そして、高齢者は免疫力が低下している方が多いので、感染すると重症化しやすいことを覚えておきましょう。
事業所内で感染症を発生させないよう「感染症対策の基本」は常に心がけておく必要があります。
「感染症対策の基本」は次のようになります。
【感染症対策の基本】
① こまめな手洗い
② 消毒
③ うがい
④ 手袋
⑤ マスク
⑥ エプロン(ガウン)
では、それぞれ具体的にお伝えしていきます。
① こまめな手洗い
介護施設で働く職員にとって、手洗いは基本中の基本です。
「手洗い」に関しての詳細は後述します。
② 消毒
まずおさえておくべきなのは、介護施設等で使用する消毒液は二種類あります。
アルコール消毒液(60%台のエタノール)
次亜塩素酸ナトリウム消毒液
前者は、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに対して、後者はノロウイルス等に対して使用します。
用途が変わりますので、その点を理解して使用するようにしましょう。
【次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方】
準備する薬剤:5%の次亜塩素酸ナトリウム(例:家庭用塩素系漂白剤キッチンハイター、キッチンブリーチなど)
水500mlあたり漂白剤のキャップ2杯(10ml)を混ぜる(濃度1000ppmに相当)
消毒は1日1回以上を目安として、主に共同で使用するトイレ(手すり・レバー・ドアノブ)や浴室、洗面など実施します。
他にも、イスの背もたれ、ひじ置き、スイッチ、リモコン、調理器具なども消毒しましょう。
消毒をする際に注意するべき点としては、
① 消毒するときは十分な換気を行う。
② 消毒作業は上から下に行う。
③ 拭取りは同一方向に拭取り、後戻りしない。
などがあります。
③ うがい
口は病原体が入る入口です。
うがいは食事による食べかすなどの除去や口の中を洗浄する効果を持ち、病原体が口の中に定着することを防ぎ、確実にばい菌を減らす効果があります。
【うがいが必要な時】
・勤務終了時に手洗いとともにうがいの実施
・咳のひどい人、気管切開をしていて痰の多い人のケアをした時に、手洗いとともにうがいの実施
・MRSAの方のケア後に手洗いとともにうがいの実施
・自分に感冒(かぜ)症状のある時にはうがいを励行し、マスクをする
かぜやインフルエンザウイルスの流行期にはうがいを励行し、職員がウイルスを施設や利用者宅に持ち込まないようにしましょう。
【うがいの方法】
・約60mlの水を用意し、うがいを3回に分けて使用
・1回目:口に含んで少し強めにうがいをする
・2、3回目:のどの奥まで届くように上を向いて15秒間うがいをする
うがい薬にはイソジンガーグル液などがありますが、使い過ぎはかえって口の中の正常な菌まで殺してしまいますので、1日数回にとどめた方が良いです。
液は15~30倍に薄めて使います。
④ 手袋
感染予防のポイントは「感染の可能性のあるものには直接素手で触れない」ことです。
感染の可能性のあるものとは、血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷からの分泌物などです。
そして、感染の可能性があるものに触れる場合は、ディスポーサブルの手袋を使用します。
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引用画像:ミドリ安全
自分の手に手荒れや傷がある場合も、感染から身を守るために手袋を着用しましょう。
また、手袋使用後も必ず手洗いをしましょう。
【着用時の注意事項】
・一度使った手袋は必ず捨てる。次の人には使わない!
・手袋をしたままでまわりの物を触らない
・長時間使用して汗をかいたり、清拭時のお湯で手袋の中が湿ってきたら交換する
・はずすときは、外側の汚れた方を内側にひっくり返す
⑤ マスク
マスクは、ディスポーザブル紙マスクを使用しましょう。
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引用画像:SAN-WEB
医療・介護現場でマスク着用は必須です。
マスクはウイルス等の飛沫や結核などの飛沫核が、鼻腔・口腔から侵入するのを防ぎます。
またケアする側に咳が出る場合は、相手に移さないためにマスク着用が必要です。
マスク着用は新型コロナウイルス感染予防以外にも、
肺結核
風邪
インフルエンザ
などの感染予防にもなります。
咳や痰の激しい利用者さんに接する場合は、特に気を付けましょう。
【着用時の注意事項】
・結核の場合は、結核マスク(N95)が適している
・マスク着用時は口のみではなく、口と鼻を覆って使用しないと効果がない
・着用したマスクを触らないようにする
⑥ エプロン(ガウン)
エプロン(ガウン)の着用は、感染の可能性のあるもの(血液や体液、傷口からの分泌液)に、直接介護者の体が触れるのを防ぐことを目的とします。
また、介護者の衣服に付着した感染源を持ち歩かないためにもエプロン(ガウン)の着用は有効です。
【着用が必要な時】
・感染症の人に身体的ケアを行う場合で、本人の血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷口から分泌液、および排せつ物が自分の身体が触れたり、飛び散る可能性がある場合
・感染症がない方についても、本人の血液や体液、および排泄物が自分の身体が触れたり、飛び散る可能性がある場合
エプロン(ガウン)は、長袖で膝下まで覆うものが適しています。
また、素材について、布製は病原体が染み通る場合があるのでナイロン製のディスポーザブルエプロンが適しています。
使用後はビニール袋に入れて袋の口を結び捨ててください。
エプロン(ガウン)の着脱方法は、こちらの画像を参考にしてください。
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引用画像:長谷川綿行
手洗い
手のひら・甲には常在菌(大腸菌など)や、他の付着菌も生存しています。
手洗いは感染を予防するための最も基本的で重要な手技です。
清潔管理の基本は手洗いにつきます。
私たちの手は、1日の間に非常に多くのものを触れたり、様々な作業を行っており、手を媒介として、目では見ることのできない有害な微生物や菌を運搬してしまうことになります。
介護施設で働く職員として大切なことは、感染予防を意識した適切な手洗いを行うことであり、その結果として、感染予防につながる非常に大切な手段となります。
手洗いは、適切なタイミング、適切な方法で手洗いをする必要があります。
手を洗うタイミング
手を洗うタイミングは、次の通りです。
調理前・食材を触った後
食事介助の前後
自身の食事の前後
掃除の後・ゴミを処理した後
トイレ介助・おむつ交換の前後
自身が鼻をかんだり、トイレに行った後
事務作業をした後
パソコンやスマホを触った後
訪問先に到着したとき、帰るとき
身体的ケアの後
傷口に触れる場合の前後
吸引機器等に触れる場合の前後
血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷からの分泌液に触れた場合
尿・便に触れた場合
手の洗い方
手の荒い方は、こちらの画像を参考にしてください。
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引用画像:厚労省HP
手洗いミスをしやすい部位を知り、ミスをしやすい部位を意識して洗うことが大事です。
洗い残しをしやすいところは図の赤い部分です。
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引用画像:看護roo
これらの個所をしっかり洗うように心がけましょう。
手が汚れたらすぐに消毒ではなく、まずは手洗いからです。
速乾性刷り込み式手打ち手指消毒薬を用いる場合も、しっかり手洗いをした後でないと、消毒薬の効果は低くなります。
手洗い後も重要です。
手洗いをした後は手を十分に乾かしましょう。
手を乾燥させるためには、同じタオルで頻回に拭くのではなく、衛生的にもペーパータオルを使用することが望ましいです。
また乾燥した冬季などでは、水作業で手荒れを生じやすく、その結果小さな傷ができて、それが感染の原因となることがあるので、ハンドクリームなどで手荒れを防ぐことも大事な感染予防対策です。
感染者が出た場合の対応について
施設で感染者が出た場合は、次の ① ⇨ ⑥ ような対応をします。
① 施設内の状況を確認して速やかに連絡・報告
施設内の状況を確認し、次の人数を把握します。(職員数、入所者数、うち感染者数)
施設内の職員間で情報共有し、家族や配置医等に報告します。
他の介護事業所やケアマナージャー等、関係機関と情報を共有します。
② 感染者含め入所者の体調を確認
体調不良者、症状悪化した人がいる場合は速やかに配置医や協力医療機関等に相談しましょう。
③ 自治体への発生報告
報告基準等については、各区や各市の保健所へ相談します。
※事前に、自施設がどの自治体へ報告すべきか調べて準備しておきましょう。
④ 治療に向けた調整
配置医や協力医療機関等へ受診や治療について相談します。
往診の協力が得られない場合は近隣で往診可能な医療機関を探します。(もし確保できない場合は、施設の所在地を管轄する保健所へ相談します)
⑤ ゾーニングの実施
レッドゾーンとグリーンゾーンを明確にします。(誰が見てもわかるように表示する)
例えば、感染者が少数で陽性者が居室内にとどまることが出来る場合は、陽性者の居室のみをレッドゾーンにします。
感染者が複数いて、居室内だけで療養できない場合は、廊下等の共有スペースもレッドゾーンにします。
そして、居室内だけで過ごす期間はできるだけ短くし、可能なら隔離中にリハビリテーションを実施します。
ゾーニングは、感染者の病状や特性(マスクの着用が難しい、徘徊の有無等)、施設の構造(ユニットタイプ、多床室等)を考慮して実施します。
ゾーニングについて詳しく知りたい場合は、こちらを参考にしてください。参考:厚労省HP
⑥ PPE(感染防護具)の適切な使用・着用
感染者へのケア時はN95マスクを着用しましょう。
感染の範囲が特定できていない場合や、職員から入所者への感染が推定される場合は、施設職員全体でN95マスクの着用を推奨されています。
事前に、正しいN95マスクの着脱方法を確認しておきましょう。
施設内で嘔吐があった場合
介護施設はしばしば利用者さんが嘔吐することがあります。
食中毒や感染症で嘔吐する場合もありますが、それだけではなく、高齢になると胃や食道のはたらきそのものが低下してしまいます。
また、前傾姿勢状態が続くことによる嘔吐も見られますし、便秘がひどくなることで嘔吐してしまうこともあります。
介護施設では、嘔吐処理の準備を常に整えていて、嘔吐処理の手順を熟知している必要があります。
嘔吐物処理の準備物
まずは準備物からお伝えします。
準備物:
使い捨て長そでエプロン
使い捨て手袋:予備も含めて3枚準備しておく
不織布マスク
塩素系消毒液:家庭用塩素系漂白剤10mlと水500mlを合わせたもの
ペーパータオル:大量に準備しておく
新聞紙:処理する者が膝をつく際に使用する
ポリ袋:予備も含めて2枚準備しておく
バケツ:ポリ袋をかぶせておくと使用しやすい
塩素系消毒液をペットボトルに入れて保管する場合、希釈後7日が有効期限であることを忘れず、また直射日光の当たらないところに置いておくことにも注意しておきましょう。
嘔吐処理の手順
次に嘔吐処理の手順についてお伝えしていきます。
まずは近くにいる人を別の場所に移動させ、処理を行う職員以外は近づかないようにしましょう。
汚染区域(嘔吐物から半径2M以内)と清潔区域に分け、作業者とは別の補助者が汚染区域に人が入らないよう注意しておきましょう。
そして嘔吐処理は、1⇒8 の順に実施します。
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