英語が嫌いな私が海外で働ける訳
私は英語が嫌いです。
私は現在シドニーの英語学校のマネージャーとして働いています。日本人学生の対応をしているので仕事で日本語を話している時間は結構あると思います。ただ、一応マネージャーとしてのポジションに就いているため、スタッフやオーストラリア人の英語教師とのコミュニケーションや外部の業者さんとのやりとりは全て英語になります。
ではなぜ私が英語を使って海外で働けているのか、ここではその理由を書いていきたいと思います。ちなみに私はラ・リングアで働いて11年目になります。そして15年前オーストラリアに来たときの私の英語力はマクドナルドでオーダーができないレベルでした。(値段が聞き取れず商品を受け取った後 “No,thank you.” と言い続けて最後には店員さんにお金持ってるのか?とキレられたレベル笑)
最初に英語を習得するためには決して無理に英語を好きになる必要は全くないと思っています。それよりも苦手だ、嫌いだということを認める勇気が英語を効率よく勉強するためには大切だと思っています。( もちろん英語が大好きな方には必要ないことです!)英語が話せるとはどういうことか、ということを正しく捉えることができれば誰でも英語は話せるようになります。
この記事を読んで、「英語が嫌いな私でも海外で働けるんだ!」と思ってもらえて、諦めかけてた夢のために一歩踏み出せることができた方が1人でもいらっしゃったらとても嬉しいです。
「好き」はモチベーションになるけど嫌いでもいい
オーストラリアではできないことをできるようにしないといけないという雰囲気はあまりありません。「できないこと」よりも「できること」に目を向けることが基本的によしとされています。平均以下でしかできないことを平均にすることにかける努力よりも、現在平均以上の力があることのレベルをさらに上げることに力を注ぐ人が多いですし、子供の頃からそういう教育方針で育てられる傾向にあります。
もちろん「好き」という感情はモチベーションになりますし、ないよりはあった方がいいとは思います。ただし、とかく英語に限っては嫌いであっても仕事で使えるくらいのレベルの習得は可能です。なぜなら英語は目的を達成するためのツールにすぎないものだからです。
「嫌い=できない」ではない
私の英語嫌いは自他共に認めているもので、スタッフも生徒さんもみんな知っています。英語学校で働くスタッフが英語が嫌いなことを公言するなんて大丈夫なのかって思われるかもしれませんが、ここで一つ付け加えるのなら私は英語が嫌いですが、一応仕事で支障が出ないレベルにはなんとか喋れることができますし、読み書きもできます。
つまり、「嫌い=できない」訳ではもちろんなく、オーストラリアで仕事をするには英語が必要なので仕方なく勉強をしてできるようにしました。(本当に仕方なくです。笑 )そして、どうやって私がオーストラリアで英語を習得したのか、その方法を少しだけお教えしますね。
日本人が得意とする「情報処理能力」と圧倒的に足りない「目的達成能力」
それでは英語に対して「好き」という感情を持たない私がどうやって仕事で使えるくらいの「英語力」をつけたのか。繰り返しますが、理解しておかないといけない大切なことは、実践的な英語という能力はあくまでもツール(手段)であるということです。これはよく言われることで珍しい考え方でもなんでもありません。ただ、このツールという意味を本当に理解している方は私の経験上あまり多くないように感じます。
「何」のために英語を勉強したいのか、「何」を達成したいために英語が喋れるようになりたいのか、英語を勉強する目的は「何」なのか。もっと細かく言うと、スピーキング力で言うならば、英語を話す相手は誰なのか、何のために話すのか、何がゴールなのか、どうなったら成功と言えるのか、どんな結果をうみたいのか。
これらはつまり、英語を学ぶ「目的」と英語を使う「目的」になります。そして、その目的を達成するために英語をツールとして使用し、さらには状況と目的に合わせて英語の使用方法が変わります。英語力があるのと、目的が達成できるかは全く別の話です。
学校で学ぶ英語の目的は基本テストですが、実践の場で英語を使用する目的は旅行や仕事やコミュニケーション、などであって、テストではないことがほとんどです。
つまり、学校での目的と、実際の目的に完全なズレが生じてしまっています。これが、日本人の英語が海外で通用しないと言われる大きな理由になっているかと思います。
テストで点数を取ることが「目的」となった場合、どんな英語能力が必要になるかというと、それは正解を導く能力ということになります。そしてテストでいう正解は通常一つでなくてはいけなくて、複数の回答は原則求められていません。
つまりテストを目的とした英語能力とは、一つの正解を導き出す能力と言えます。そして通常テストには回答するために時間制限が設けられており、これによってさらに目的が絞られてきます。
限られた時間内で設問の意味を理解し、正解とされる一つの解答を導き出す情報処理能力がとても大切になります。この能力は特に日本の就職等で今だに英語力を証明するために求められるTOIECのテストでスコアを取るには必要な能力です。繰り返す言い方になりますが、あのテストは英語力よりも、制限時間内で大量の問題の正解を導き出す情報処理能力を測る試験だと私は思っています。
つまりTOEIC用の試験勉強をたくさんしてもそこには英語を実践的に使うコミュニケーション能力はほとんどつきません。文法力や単語力があるのと、実際の場で使用できるか、コミュニケーションの目的が達成されるかは別の話になるということです。
実践的な英語力とは
例えば、オーストラリアのお店で2ドルで売られているペンを1ドルにディスカウントして欲しいとします。
その場合、多くの人がまず考えることは店員さんに「英語でなんて言えばいいのか」だと思います。いかに正しい英語でいかに正しい発音で伝えることを優先します。「正しさ」の精度を上げることが一番大事だと思っているからです。
ただし、ここでまずはっきりさせておかなければいけないことは「目的」は何なのか、ということです。何のためにこのお店の店員さんとコミュニケーションを取るのか、何を最終的に得たいのかを考えないといけません。
この場合の目的は「1ドルでペンを購入する」ことです。つまり言い換えると、英語を話すことが目的ではなく、店員さんに1ドルで売ってもいい、と思わせることです。これは日本語で考えるとわかりやすいと思います。全ての日本人が日本語が話せるからと言ってディスカウントを成功させることができることとは違います。この場合必要なのはコトバ(日本語)のスキルではなく、交渉スキルなのです。
多くの日本人は正しい英語で伝えることを優先しがちですが、極論を言うと、めちゃくちゃな文法でも、英語を全く話さなくても、例えジェスチャーだけでも最終的に1ドルでペンを購入できればいいのです。いくら自分の話す英語が相手に伝わったとしても目的を達成していなければ意味がないのです。
そしてそこで使用する英語の表現は一つだけとは限らず、状況や自分の性格等によって複数の表現方法が存在します。日本人がスピーキング力の中で、「表現力」を苦手としている理由は、一つの解答を導くことを目的とするテストのための勉強だけをしてきたことが理由の一つに挙げられます。
まとめ
まとめますと、英語が嫌いでも(もちろん好きな人も!)「英語が喋れるようになる」ためには①「英語を話す目的を明確にすること」そしてその目的を「達成」するために必要となる②「知識やマナー、コミュニケーションスキル・テクニックを学ぶ」こと。この2点が大切になってきます。
英語が嫌いであってもこの2つを意識して、英語の習得に励めば、目的達成能力が身に付いてきます。そして目的を達成するごとに「英語を使ってできることが増えることが実感でき」→「英語が話せるという自信に繋がり」→「仕事をするために一番必要となる、”実践的な英語力”」が必ず身につきます。
大丈夫です。英語は正しく身につければ誰でも話せるようになります。私でも海外で働くことができました。頑張ってください!