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水と空気と希望

映画「ミッドナイトスワン」見てきた。あのピアノの音色を聞くとまたあの映画の世界に戻ってしまう。夢と現実と行き来する。それほど、リアルで鮮明な映画だった。

主人公は凪沙。トランスジェンダー。自分自身を実家には隠し、ニューハーフショークラブで働いている。

自分を偽って生きる。

そんなの簡単にやっているんじゃないだろうか。性同一性障害でなくても。本当の感情を隠したり、本当の自分を見て見ぬふりすることなんて、無意識レベル。だって常識でしょ。だっていい歳でしょ。だって恥かしいじゃない。理由なんていくらでもある。

もう一人の主人公、一果。中学生。虐待を受けて育ち、大人なんか信じてないし、人生に絶望している。

そんな一果は東京で凪沙と暮らす生活の中で、バレエに出会う。その胸に芽生えた希望が、一果だけでなく、凪沙、友達、母親を巻き込んで変容していく。

一果の希望はバレエ。バレエを通して輝き始める一果。

そんな一果に希望を持つ凪沙。一果のために自分を生きる覚悟を決め、実家に戻り一果を迎えに来る。その背には希望を掲げ、風を切ってコツコツと音を立てて歩く。その結果、みじめに生き野垂れ死ぬ運命だったとしても。

それでも世界にはばたく一果。背にはその希望を掲げ、凪沙のように歩くラストシーン。

自分を生きることで死ぬ凪沙と。自分を生きることで活きる一果。

その二人は対照的で、凪沙と同じ年代の私にはズドーンと重くのしかかる。でも、その根底に流れるのは、命を本気で生きた瞬間の眩しさ。

人が生きていくためには、水と空気、そして希望が必要。

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