2018 J3第14節 ガイナーレ鳥取vsガンバ大阪U-23【さらなる進化を求めて】
はじめに
前節、リーグ戦初采配で衝撃のデビューを飾った須藤大輔監督。就任7日程度と短期間ながら、前線への連動した守備や攻撃の形を早くも植え付けゲームを支配。そのAC長野パルセイロとの一戦はスコアだけ見れば1-0も、内容では圧倒していた。今節でもその片鱗を見せ、須藤監督自身の手腕が本物であることを証明できるのか。才能の宝庫ガンバ大阪U-23戦は最注目の一戦となった。
両チームのフォーメーション
ガイナーレ鳥取は3-4-2-1。前節スタメンでJ3得点王のレオナルドに代え山本を先発起用。まずは前線からの守備意識と連動性をより持たせたいという須藤監督の意図が伺える。
ガンバ大阪U-23は4-4-2。G大阪の未来を担う、若き才能が集うJ3屈指の若手タレント軍団。率いるのは宮本恒靖監督。
両チームのフォーメーション図
鳥取の狙い
それはズバリ、G大23の右サイド後方(鳥取左サイド)のスペース攻略である。試合の序盤から鳥取は明らかに準備された形で左サイドの崩しを狙っており、奥田→山本(フェルナンジーニョ)→奥田のワンツーの形を軸とする攻撃が何度も再現されていた。
これには主に2パターンがあり、G大23にブロックを敷かれた場合は3-4-2-1(3-4-3)の基本的な攻撃形とワンツーから左サイドの崩しを、G大23の前プレが連動せず間延びしスペースがある場合は後方からのフィードから左サイドの崩しを見せた。
8分:ブロックを敷かれたら、基本的な左サイドの崩し
21分:相手の間延びには、最終ラインからのフィード→左サイドの崩し
無ければ作る
では、もし左サイドが空いていなければ? 答えは、相手を誘導してスペースを作ればOK。
左サイドにブロックを築かれ十分なスペースがない場合、一旦右サイドに展開し相手をスライドさせてから再び左サイドへ。すると先程埋められていたスペースが出現し、同様の崩しから最後は加藤に合わせて決定機。鳥取は仮にスペースが無くても、左サイドのスペースが生まれるよう意図的に相手を誘導する組み立てを見せていた。
また、G大23はDF・MFラインのスライドやボール保持者へのアプローチが一瞬遅れる場面が見られ、そのケースでは逆サイド(右サイド)への展開後、そのまま同サイドでチャンスを演出。ボールウォッチャーになった相手に、小林がアーリークロスを入れ決定機になりかける場面も見られた。
30分:① 左サイドのスペースを埋められたら、一旦逆サイドへ
30分:② 相手を右サイドに誘導し、再び左サイドへ
30分:③ 作り出したスペースで同様の崩し→決定機
30分:④ サイドチェンジ前
30分:⑤ サイドチェンジ後
ここで一応補足をすると、ゴール前に向かう選手の走り込むコースがポイント。基本中の基本ではあるが、加藤、フェルナンジーニョ、小林の3選手が奥田のクロスの延長線上に向かっている。これによって、仮にボールがファーサイドへ流れても合わせられるようになっている。
以上のように相手陣地を攻略。特に前半はこの形がハマり、予想に反して鳥取が押す展開となった。
前プレと奪いどころ
G大23の攻撃は、主に市丸を起点として組み立てられている。よって、鳥取は前線からのプレッシング(前プレ)において市丸へのパスコースを遮断し、かつ奪いどころに設定したサイドのエリアへボールを誘導することを狙った。これにも主に2パターンが見られた。
一つ目は、G大23が基本陣形でビルドアップを行う場合。これにはまずCB西野・野田のどちらかがボールを持ったとき、1トップの加藤とボールに近い側の2シャドー(山本)が逆サイドと中央へのパスコースを遮断しながら、また市丸には星野がマークにつきながらボール保持者にプレスをかけ、狙いのサイドへ誘導する。そして、相手のSBにボールが渡った瞬間、WB(奥田)が前を向かせないようにプレスを実行。このとき、周辺の味方選手は相手のパスコースを遮断するポジショニングを行う。これによって後ろ向きの苦し紛れなパスを誘発し、前線でのボール奪取を狙う。
11分:① 狙いのサイドにボールを誘導
11分:② SBへボールが渡った瞬間、パスコースを遮断→インターセプト
11分:③ 可児がインターセプトを狙った場面
二つ目は、G大23の前線の選手がボールを受けに降りてくる場合。市丸と高へのパスコースが遮断されボールの出しどころを確保したいG大23は、高い位置に張らせていたSHを降ろし、左サイド(鳥取右サイド)に攻撃の拠点を作ろうと試みる。これを逆手に取り、鳥取はボール奪取を試みる。
まずは一つ目の場合と同様にサイドへ誘導。このときSH(泉澤)がボールを受けに降りてくるが、プレスをかけるのは3バックの両サイドの選手(内山)。同時に、内山が空けたスペースは残りの2CBと逆サイドのWBがスライドしカバーリングすることで埋め、密集を作る。この素早く強度の高いプレスにより相手SH(泉澤)に前を向かせず、かつ周辺の味方選手はG大23のパスコースを限定。これによりサイドの狭いスペースへボールを誘導しボール奪取を試みる。
7分:① 中央への選択肢を阻害し、サイドへ誘導
7分:② 降りてくるSHには左右のCBが対応→密集地帯へ
7分:③ 狭いスペースに誘導し、ボール奪取
後半の鳥取は、プレッシングのきっかけとなる前線の選手を中心に疲れが見え始め、割愛するがプレス回避の修正もなされた。そのため、プレッシングの開始ラインを低く設定したことでG大23に攻め込まれる時間帯が続いたが、前節と同様に組織的な撤退守備を披露。後半の押し込まれる展開は監督コメントでも今後の課題として挙げられていたが、G大23の強力な攻撃陣に対しても無失点で切り抜けた。
まとめ
試合は後半の序盤、CKのこぼれ球を押し込んだ途中出場のレオナルドによる1得点のみに終わったものの、最前線から最終ラインまで連動した守備と意図的な攻撃パターンを繰り出し、特に前半は決定機を量産。森岡前監督の置き土産と須藤監督の手ほどきによる3連勝で波に乗りつつ、さらなる進化の可能性を感じさせる試合となった。須藤監督の手腕を証明した今季ベストゲームと言っても過言ではなさそうだ。
次節は鳥取サポーターには因縁深い、柱谷哲二新監督が率いるギラヴァンツ北九州戦。2年前とは違う、進化を遂げた強小の魂を見せつけろ!