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姫路城 西小天守特別公開
2024年2月、普段は非公開エリアとなっている西小天守が初公開されました。特別公開終了前最後の週末に、予定をやりくりして訪問してきました。
西小天守の機能
連立式天守の櫓群は天守曲輪を構成していますが、ここへ接近・進入するには西側からアクセスするしかありません。西小天守は、このルートをすべて見下ろせる位置にあり、天守曲輪の防御拠点と考えられます。また、地下2階に水の六門が設置され、水の五門とともに枡形空間がつくられており、その防御性は非常に高くなっています。
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(西小天守1階から西側を撮影)
特別公開ゾーン
今回の特別公開は、イの渡櫓1階が受付になっています。ここで観覧料300円を支払い、2階に上がります。ここから東小天守、ロの渡櫓、乾小天守、ハの渡櫓とそれぞれの2階を経由して、西小天守の入口へ到着しました。ここまでは、昨年の秋にも特別公開されていたゾーンで、私自身も2回目でした。解説板などは前回よりも少なかったですが、武具掛けに火縄銃や槍などが置かれ、武器庫感をシッカリと出していました。
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西小天守
そして、いよいよお目当ての西小天守へと進入します。3階へ上がるのに人数制限があるので、ハの渡櫓まで行列ができていました。待ちながら、窓から見える景色や内部の構造を確認していました。2階は、南と東西に武者走りをもち、縦格子の窓が設置されていました。
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乾小天守に比べると梁の位置が高く、武器を持っての移動空間が確保されています。
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西小天守の3階に上がると、天井の高い広い空間があらわれました。南北には大きな格子窓があり、西側にある破風の部分にも大きな格子窓がありました。壁の内部には瓦が塗り込められており、強度を高めているとのことでした。この点からも、西小天守が姫路城天守曲輪の防御の要として造られていることが分かります。東側の壁は武具掛けが設置され、他の三方とは違い、大きな窓はありません。壁の向こう側は、大天守への渡櫓(ニの渡櫓)の屋根しかありませんから、攻撃用の窓は要らないという訳らしいです。一方で高い位置に小さな窓がありますが、これは大天守との連絡用でしょうか。この窓から合図をすれば、大天守の窓から見え、意思疎通はできそうです。
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西小天守の1階に降りると、石落としや狭間などおなじみの防御構造が見られます。この階の窓からは、水の門群を通じて天守曲輪に侵入するルートが丸見えです。攻めてくる敵兵にとっては、完全にキル・ゾーンとなるわけです。この階に来ると、この西小天守が連立天守群の中にあって最も防御性を高めている建物であることを実感しました。
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西小天守と連結されているニの渡櫓は、大天守との連絡通路になります。渡櫓への入口は他に比べると小さくなっており、大天守側の扉は城漆喰が塗られた頑丈なものになっています。ここにも大天守への進入を阻む工夫がありました。
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終わりに
姫路城が一般公開されて以来、一度も公開されたことがなかった西小天守に入ることができたことは、非常に感慨深いものがありました。また、西小天守が、天守曲輪を構成する他の建物よりも、防御性を高めた構造になっていることもよくわかりました。
これだけのものですから、常時公開できないものかとも思うのですが、なかなか現実的には難しそうです。常時公開されている大天守は、一筆書きの動線が確保できるので、多くの来場者を捌くことができますが、小天守の階段は狭くて1か所しかないので、どうしても片側交互通行にするしかないのです。すると、そこで渋滞が発生してしまうので、待機列を留め置くスペースも必要になります。特別公開にして、追加料金を徴収することで、来場者を絞った結果、混乱なく見学ができる状態になったと考えられます。また、今回の西小天守3階は、床板を保護する必要があったようで、全面を新材で覆っていました。常時公開の耐えうる強度がない可能性も考えられます。
そのような困難さはあると思われますが、また特別公開という形であっても、その機会を設け、多くの人に見てもらえたらと願っています。
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訪問日:2024年2月24日