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有吉佐和子『複合汚染』を読んでみた

有吉佐和子との出会い

これまで、様々な作家の本を読んできましたが、有吉佐和子との出会いはつい最近のことでした。
図書館で、老人介護の問題を取り上げた『恍惚の人』を借りて読んだのが40年超の人生で初めての経験でした。そこでは、認知症になった家族の戸惑いや奮闘がノンフィクションかと思うほど精緻に描かれており、「なぜ、これまで有吉佐和子に巡り合えなかったのだろう」と後悔を抱くほど感動しました。
そこで、同じように1960年代後半頃から顕在化した、環境汚染という大きな社会課題を取り上げた『複合汚染』を読んでみることにしたのです。

今に続く課題

読んでみて最初に感じたことは、「50年前から問題は何も解決していないな」ということ。
評価は定まっていませんが、現在も「有害な除草剤がある」とか「日本は外国に比べ食品添加物を多く使っている」という主張が多くみられます。(小説の中でも、花が枯れない、食品が腐らないとはどういうことか・・という記述があります)
また、自動車については当時に比べ環境性能が大幅に向上していると考えられますが、日本ではハイブリッド車が主流で、大半を輸入に頼り不安定なうえCO2排出の主要因となるガソリン使用を抑制する動きは、他国と比べても控えめと言わざるをえません。
SDGsやフェアトレードなど、エシカル消費が盛んに言われるようになっている今、有吉も言うように「すべてを原理的に禁止・抑制することは現実的でない」にしても、環境保護だけでなく、間接的にそれらの政策に影響を与える消費行動についても考えるときに来ているのではないか、そうでないと地球は持たないのではないかとシンプルに感じました。

今だからこそ、考えたい問題

作品中では、有機農法に取り組む若い農家が、「周囲で農薬の悪影響に苦しむ人を見てきたが、自分の子供たちが同じような苦しみを味わうのは避けたい」という趣旨の発言をしています。
現代日本には、成長一辺倒ではなく「定常化」が求められています。このシフトチェンジでは、「人間の幸せとは何か」を第一に考えることが重要です。今までのような拝金主義や激しい競争ではなく、良好な環境をより長く、次世代、その次の世代まで残していく戦略を考案しなければなりません。
このような中では、有吉が『複合汚染』で描いたような新たなチャレンジをする人(若い農家や奈良の医師、本田宗一郎氏などのような人物)を応援し、どうしたら生活が豊かになるかを我々一人一人が考え、行動していかなければならないと思います。


この美しい環境を未来につないでいけるか

できることから、始めてみたい

では、どうすればいいのでしょうか。
私の場合、この種の課題に大真面目に向き合っていこうとすると、いつも三日坊主で終わってしまう悲しい性格の持ち主です。
なので、「できることからコツコツと」を心がけてみたいと思いました。
具体的には、
・一度に使う洗剤の量を減らしてみる
・ものを買うとき、可能であれば有機農法やフェアトレードなど、環境や人にやさしい手法を貫いている製品を選ぶようにする
・プラスチックバッグは極力使わない
・エコボトルを持ち歩く
などであれば、自身のライフスタイルの中にすぐ取り入れられると考えています。
環境汚染は、すぐに影響が出るわけではなく、数年後・数十年後(あるいは数百年後・・)に結果となって現れると考えられます。ということは、その「負債」を負うのは今を生きる私たちではなく、将来生まれてくる子供たちであるということ。
豊かな自然は、ただぼーっと生きているだけでは享受できない時代になりつつあります。
私たちが守り、つないでいく。その意識だけでも持って生活すれば、少しずつ変わっていくかも、と感じています。

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