貸し込み(上) (角川文庫) (日本語) 文庫 – 2009/10/24
黒木亮さんの本なので購入読了。
バブル期に大手都市銀行が、脳梗塞で意思能力のない人間に対して、契約書を偽造して21億円もの過剰融資を行ったというノンフィクションである。さらに、この銀行は、その過剰融資を退職した行員が全て行ったことにしていた。
この事件は、なんと黒木亮さんご本人に降りかかったノンフィクションとのこと。(イギリスに作家として住んでいた黒木さんご本人に、裁判で犯人として取り扱われていると連絡があった、とのこと。融資に関わるどころか、被害者と面識すらなかったというのだから、開いた口が塞がらない。また、銀行側は、裁判において、黒木氏本人とは連絡がつかず、行方不明との取り扱いにしていた。)
本書を読んで、バブル期の銀行は、融資競争でなんでもありだったのだな、と感じた。書類の偽造や両建ての預金等、顧客のことは考えず、徹底的に搾り取れるところからは、搾り取るということを行っていた。(著者は三和銀行出身だが、多かれ少なかれどの銀行も同じような状況だったようだ。)
また、日本の銀行組織(大組織はどこもそうだと思う)は、責任を末端に押し付けて、そこにいない人や弱い立場の人に責任を取らせる。組織というものはそういうものかもしれないけれど、そういった面がこれでもかと描かれている。
最後に、本書を読むと、記録をしっかり取っておくということは非常に大事ということが分かる。FAXの送付履歴等、裁判の証拠として、役に立つ場面が出てくる。事件から何十年も経過すると人の記憶はあいまいになる。そういった時に書類で証拠が残っていたために、黒木さんは戦うことが出来た。
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