友情について 僕と豊島昭彦君の44年
コロナの夏休みということで、読書をしている。
本書は、佐藤優さんと高校時代のお友達の豊島昭彦さんの共著である。
豊島氏は、佐藤氏とは浦和高校時代の学友で、大学は一橋大法学部、銀行は長信銀の一つであった日債銀に進んだ。当時の日債銀の社会的ステータスは高く、今でいう就職ランキングも高かったようだ。そのような誰でも入りたい天下の銀行であったものの、時代の波に飲み込まれ、その後国有化され、ハゲタカファンドのサーベラスに買収された。
この本では、時代に翻弄された豊島氏の人生が書いてある。日債銀では、外資に買われ、ガイジンのボスに翻弄されたこと、その後、ガイジン社長の思い付きのコストカットでシステム子会社を清算したこと、その子会社社員の転籍先を見つけるのに翻弄したこと、自分の部下が指名解雇されたこと、等が記載されていた。
著者は、ゆうちょ銀行に転職し、アットホームな日債銀(あおぞら銀)から巨大官僚機構のゆうちょ銀行で戸惑うことになる。
ゆうちょでは、いわゆるクラッシャー型の上司にやり込められ、直属の部下だった社員を上司につけられる等の嫌がらせも受け、再度の転職を決意する。(ゆうちょは、おっとりした優しい社風かと思いきや、詰める文化であったらしい。)
二度目の転職先は日本公認会計士協会であったが、すぐに自分が末期のガンに侵されていることを知り、人生を見つめ直す。いろいろ考えて、高校時代の友達だった佐藤さんに連絡を取って、本を出版した。
本を読む効用の一つは、人の人生を追体験出来ることだと思うけれど、この本は、普通のサラリーマンのことが記載されており、胸に迫るものがあった。
ガンになってしまっても自暴自棄とならず、豊島氏は、淡々と生きていた。
著者は、モーレツ型社員で家族とうまくいってなかったように思えた。この本では、家族へのメッセージが佐藤氏の手により記載されているが、出版の最大の動機は家族へのメッセージにあるかもしれない、と思った。