ビジネスエリートになるための 教養としての投資 Kindle版
著者が以前出版した、京都大学への寄附講座をまとめた本「京都大学の経営学講義Ⅱ 一流の経営者は、何を考え、どう行動し、いかにして人を惹き付けるのか? Kindle版」等が非常に面白かったので、購入読了。コロナ渦でかなりの部数が売れたようで、アマゾンでも長い間ベストセラーになっていた。
著者は、元長銀マンである。
日本長期信用銀行、興銀を追いかけながら、バブルの過剰融資で倒産したあの銀行である。元長銀マンには面白い人が多い。
林修氏なども、元長銀マンである。日本のエスタブリッシュメントの中に一度は入りながらも、キャリアの早い時点で、会社が倒産したため、他の日本人と社会を見る視点が少し異なっている。
著者はその後、Nochuに入り、社内ベンチャーで農林中金バリューインベストメンツを立ち上げている。ファンドの経営理念は、「売らなくていい企業、つまり構造的に強靭な企業にしか投資しない」である。
バフェットの投資哲学に感銘を受け、保有期間は「永久」としている。インデックスに少し色を付けたポートフォリオで売買をして、アルファ(超過リターン)を稼ごうとする他のファンドとは大きく異なっている。
構造的に強靭は企業とは、1.付加価値の高い産業、2. 圧倒的な競争優位性、3.長期的な潮流を満たす会社、のことを指す。
こういった分析を行って、ディア・アンド・カンパニー(トラクター等を製造する会社。ディーラー網に大きな強み)、バリアンメディカルシステムズ(がん患者のデータの50%を持つ。AIに強み)、ユナイテッドテクノロジーズ(エレベーター事業で大きなシェア。メンテナンスが強み)、信越化学(シリコンウェアでシェア3割。IoT等で長期的に需要も強い)等の会社の株を購入し、市場リターンを大きく上回ってきた、とのこと。
ビジネスパースン論も語っており、これから定年がどんどん上がっていった時に、シルバー化した日本の会社は、新興国の若い会社と競争した時に、判断のスピードや柔軟性で勝てなくなる。そのため、働き続けることをベースとするのではなく、長期投資を行い、老後資金を確保することを薦めている。
投資の細かい理論・分析方法については、語っていないけれど、入門書としてはお勧めだと思う。
著者と投資銘柄ではナイキが被っていた。ブランド価値、スポーツ市場での圧倒的な広告宣伝費はナイキをさらに強くしていくだろう。自分が勝った時は、Barron`s(個人的に逆指標としている米国雑誌)が売り推奨していた時だっただが、結果論としては、とても良いタイミングだった、と思う。