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【企業分析】回転寿司チェーン比較

8月から無職を謳歌している「とも」です。
最近は先週末に発行された会社四季報を読み漁っています。
会社四季報なんてじっくり読むことはなかったのですが、読んでみると業界ごとの営業利益率の差が如実に分かったり(例えば小売業は営業利益が5%あればかなり優秀だが、IT関連は10%がごろごろしている等)、同じ業界においても優秀な企業とそうでない企業が数字で分かったりということで楽しく読んでいます。

今回は、会社四季報を読みながら回転寿司チェーンの利益率や競争戦略の違いが気になったので上位4社、「スシロー」、「くら寿司」、「はま寿司」、「かっぱ寿司」の企業分析をしてみようかなと思います。
各社への投資を検討されている方はもちろん、各社の儲けの仕組みや裏側に興味がある方はぜひ読んでみてください。


外食/回転寿司業界について

まずはそもそも外食産業、回転寿司産業がどれくらいの市場規模なのか、成長しているのか?儲けられそうな業界なのかについて情報を整理していきたいと思います。

一般社団法人日本フードサービス協会の調査によれば、2023年の外食産業とすし店の市場規模は、以下の通りと推計されています。
外食産業全体:24兆1,512億円 (前年比:+20.2%)
すし店   :1兆4,974億円   (前年比:+15.6%)
http://www.jfnet.or.jp/files/2024-1-1.pdf

また、東洋経済新報社の業界地図によれば外食産業の営業利益率は様々な業種がある中では低いほう(115位/123業種)のようです。
つまり、売上規模は大きいが営業利益を稼ぐのに苦労している業界といえます。
(このnoteに載せるのは控えますが、私自身は四季報オンラインを契約しています。月額550円ですが、業界地図と四季報、その他投資に役立つコンテンツが揃っていますので投資や企業分析に興味があれば契約して損はしないと思います。)

営業利益が低い理由は大きく2つ考えられると思います。
1つ目は物価高です。2022年以降、円安などを背景に物価高の状況が続いています。これにより米や魚などの原価や電気、水道、ガスなどの光熱費が上がっていることが考えられ、利益を圧迫しているのではないかと思います。

2つ目は人件費の高騰です。1つ目の物価高を背景として給与を上げる圧力がかかっています。これが利益を圧迫しているものと思われます。
ざっくり業界について見ていきましたが、次に今回分析対象とする回転寿司チェーン4社の概要を比較していきます。

概要比較(スシロー、くら寿司、はま寿司、かっぱ寿司)

回転寿司チェーンの売上上位4社について、まずは概要を比較してみます。

各社決算資料より作成
スシロー、くら寿司の2024年通期の数字は第3Qまでの数字を元に4/3し推計

店舗数はスシローが突出しています。くら寿司とはま寿司はほぼ同じですが、その2番手の1.15倍となっています。
一方で、23年からの店舗数の伸びははま寿司が突出しており、出店を強化していることがわかります。(確かに、うちの近くにもはま寿司が進出していました)

次に売上高ですが、売上高、純増幅、伸び率、1店舗あたりの売上高の全てでスシローが1番手です。
スシローの売上高はすごいですね。単純に店舗が多いからだけでなく、1店舗あたりの売上も多いので他社と比較しどういう強みがあるのかが気になります。

最後に営業利益です。
ここも、伸び率以外はスシローが圧倒しています。
特に営業利益の絶対額が2番手のはま寿司の2.2倍、1店舗あたりでも約1.9倍と圧倒的です。

ここまでをざっくりまとめます。
スシローは全てのカテゴリで1番手となっていてカテゴリリーダーと言えるポジションです。
くら寿司は、売上高と店舗数は2番手ですが営業利益が苦戦していて直近は回復している状態かと思います。
はま寿司は、売上高と店舗数は2番手ですが直近猛烈な勢いで出店し売上を拡大している。さらに売上を拡大しながらも営業利益をしっかり確保しているという状況にあると思います。現状くら寿司との2番手争いをしていますが、この1〜2年で差をつけていくのではないかと思います。
かっぱ寿司は残念ながら店舗数、売上、営業利益いずれも上位3社には敵わないという状況です。

正直なところ勝手な感覚でスシローが、店舗数、売上、営業利益ともに圧倒的なのかなと思っていたので一定予想通りでした。
ここからは、数字を見て生じた以下の疑問を解決していく形で情報を整理していきたいと思います。

分析の方向性

・売上高の違い
 売上高にそれなりに違いがあると感じました。
 売上 = 顧客数 ✖️ 顧客単価 だと思うのですがどこに違いがあるのか深堀して見たいと思います。

・営業利益の違い
 「営業利益 = 売上 - 原価 - 一般管理費」 なのでどこに違いがあって営業利益の差が生じているのか、稼ぐ力はどこが強いのかを深堀していきます。

・定性的な分析
 
各社の強みについて定性的な面からの分析をしてみます。
 VRIO分析などができれば良いかなと思っています。

売上高の違い

残念ながら顧客数と顧客単価そのものが乗っている資料というのは各社ありませんでした。
スシローとくら寿司については昨年対比の情報を公開してくれていたので、それを見ながら考えていきたいと思います。

まずスシローの情報です。

スシローは2022年10月〜2023年6月ごろまで、2022年10月の値上げの影響で既存店における顧客数の減少が進んでいたようです。ただ、2023年7月以降は順調に回復してきています。
顧客単価も、2023年9月期に105%となり、今年の上期も前年比102.6%なので値上げはしっかりこなされているようです。

2024年に入ってからの売上の伸びは顧客数が寄与する部分が大きそうです。

一方で、くら寿司はどうでしょうか。

くら寿司も2022年10月に値上げを発表しています。
その後の状況ですが、客数が減少し今も回復していないように見えます。ただし、客数の減少はスシローほどでは無いようです。一方で客単価はスシロー以上に上昇しているので客数の落ち込みを客単価の上昇でカバーしているといえそうです。

まとめると、値上げによる顧客単価の上昇と、値上げによる顧客減から回復したスシローと、値上げにより顧客単価は上昇したが顧客減が回復しきっていないくら寿司というイメージになりそうです。

では、次に営業利益の違いについて見ていきます。

営業利益の違い

ここからは、スシロー、はま寿司とも残念ながら各ブランドに絞った財務諸表がないため会社としてまとめた形でのデータを分析していきます。
特にはま寿司を運営するゼンショーホールディングスはさまざまな業態を運営しているので若干違いがあるのかもしれません。

まずは、売上高に占める原価率、販管費率、営業利益率を見てみます。

各社財務諸表より作成

まずは原価率ですが各社とも40%代となっています。
本当は原材料費と店舗の運営費用など分けて見たいところですがそこまでの情報が見つけられていないので、原価率でまとめて見ています。
くら寿司は減価率は低い一方で販管比率が少し高めですね。これはもしかすると「びっくらぽん」などとの関係があるのかもしれません。

スシローとはま寿司は同じような原価、一般管理費の構成ですが原価率でスシローが優位といった感じでしょうか。

私の推測ですが、原材料費を大幅に下げるのは各種の価格高騰もあり難しいので、店舗の運営コストや販管費をいかに下げていくかが勝負になるのではないかと思います。

ROEとキャッシュフローについて

最後にROEとキャッシュフローを見ておきます。
まずはROEについて。

各社財務諸表より作成

スシローとはま寿司の2社が14%代で拮抗しています。
この2社は内訳が少し違っていて、財務レバレッジをかけて自己資本をうまく活用しているのがスシロー、自社の資産を効率的に活用し利益を出しているのがはま寿司という感じでしょうか。

キャッシュフローについてです。

各社財務諸表より作成

はま寿司(ゼンショーホールディングス)の投資意欲はすごいですね。
事業で稼いだお金と借り入れしたお金をガンガン投資に回している感じです。
各社とも、営業CFはプラスなので健全に推移していくのではないかと思います。

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