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私の赤・あなたの赤⑩
僕はいつも思うんだ。 自分と違う考え方だからと言って、敵だとか嫌いだとか…そうじゃないんだって。 ただの違いなんだって。それだけ。 植物なら、僕は松で、あなたは桜。ただそれだけなんだって。それぞれの良さがあるんだって。
もちろん悪いところもある。 でもさ、そこに焦点をあてて、揚げ足を取ったり、さらに悪く言って虚像を作ったり…ゴシップ記事みたいなさ…そうゆうのはもう嫌なんだ。疲れるんだ、痛むんだ、心が。
悪いところもそれだけだ。遅刻癖があるとか、怒りっぽいとか…それだけだ。だからと言って、その人全部を否定しようとは思わない。
「あの人がああ言ってた。」とか…クラスメイトが悪く言うことがあるけど、確かにそう言ってたかもしれない。 でも、本人の言わんとするところは違ったのかもしれない。聞いた人の受け取り方次第だ。 本当のことは、本人しかわからないじゃないかな。
それに今度は違うかもしれない。今まではそうだったかもしれないけれど。次は。
そして…僕たちには言葉がある。だから言葉を重ねる。自分の気持ちであったり、こうしたい、こうして欲しいことを伝える。 そして、あなたの言葉を受け取る。あなたを理解するために。
僕は話としてクラスメイトの話は聞く。 僕の今までの経験からの色眼鏡でなく、いつもまっさらな目でその人を見るようにしているんだ。過去に縛られた人でなく、今目の前にいる人と関わっていきたいんだ。
こんな話を「青」の子としたいな。 僕が「赤」を聞き続ける理由でもある。でもつまんないかな…。もちろん映画とか、音楽とか、お互いの趣味の話もしたいけど、まずは。 僕は、お客様の飲み終わったコーヒーカップを片付け、テーブルを拭いた。
・・・・・
この間は、バイトが休みだったのかな。 偶然、カフェの入口の掃除をしている「赤」の子を見かけて。その日は気恥ずかしかったから次の日に行ってみたけれど、お店にはいなかった。
覚えててくれてるかな?覚えてても嫌がるかな?会った瞬間、どんな顔をするかな? きっと、すごく驚いて真っ直ぐな目で私の目を見るだろうな。
私はカフェのドアを開けた。
ほら!そうだ!あの時と一緒。「青」と私が答えた時と同じ。あの時と一緒! 私はその瞳に微笑みかけた。
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