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まちのライオン
なんだかムシャクシャする。
私が話しても「へぇ。」か無視。 遥と喋る時は、「うん、うん!それで。」と身を乗り出して話を聞く。なんなのこの男!
好きでも何でもないけど、「ああ、仕事ってつまんない。暇。夕飯何食べるかな。」なんて言って、スマホばかり見ている遥に惹かれてると思うと悔しい。
仕事なんて探せばいくらだってあるの!暇なんかないの!
そして、何とも思ってない男に悔しいなんて思わないの!私!あほ遥に悔しいなんて思うなんて…。
わかってる。男はみんなフワフワしてる遥みたいな女が好きなんだ。自分磨き=外見オンリー。
私なんて…。 とそこへ課長から電話が来て、外出先へ忘れ物を届けることになった。
公園を抜けて行くと住宅街へ。 とあるお宅の木に、茶トラの猫がスクッと立っていた。あまりにも凛々しくて、思わず立ち止まった。
猫に夕陽が当たり、後光が射しているようだった。まるで立髪をなびかしているライオンみたい…と思った。こんな小さいのに。
ニャッ。 と一声。私を睨むでもなく、真っ直ぐに見つめて立ち去った。
その時思った。
もしかしたら、私が「みたい」と思っているだけで、この猫は自分のことをライオンて思っているかもしれないじゃない。私が決めつけているだけじゃない。
立ち去った猫を目で追ったけれど、姿はもう見えない。
そうね、そもそもライオンを知らないよね、猫は。自分の顔だって知らないんだもの。きっと。
そう、みんなわからない。相手の考えていることは。他人がどんな人かはわからない。 自分のことだって。思い込んでいるだけ。痛い思いをしないように、傷付きたくないから。見ないふりしてるだけ。
私だって、本当はライオンかも。
本当はあの人が気になってることも。 だから、悔しいことも。
あの猫と同じように、私もそこにいたさっきまでの自分をスッと見つめて、そこから立ち去った。
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