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夕暮れの顔(ひとひらの物語)
僕はどうしちゃったんだろう?
駅のホームで電車を待ちながら、はぁとため息をついた。
あと1ヶ月で大学を卒業して、就職のために地元に帰る。
2年前から付き合って来た彼女はもちろん好きだ。彼女とは遠距離恋愛になる。正直…もしかしたら、この距離が心の距離になるかも…と頭をかすめたことはある。
そして、1週間前。クラスメイトの原さんに偶然学校内で会った時に言われたこと。「久保君は地元に帰っちゃうんだよね。私ね、久保君のことが好きだったんだよね。」と。
それ以来、原さんの顔が頭から離れない。僕もちょっと原さんのことを良いなと思っていたのだ。
「好きだったんだよね。」て、たった9文字。そして「だったんだよね。」と過去形。それなのにずっと僕の頭から離れない。
ふと空を見上げた。冬らしく茜色の夕焼けが綺麗だった。
「これ!好きなんだよね。」と女子高生の声が耳に入って来た。「YOASOBIのこの曲!」と甲高い声の方を見ると一人の子が友達二人に曲を聴かせている。
「明日世界は終わるんだって
君にはもう会えないんだって」
とYOASOBIの「アンコール」が聴こえて来た。
僕はこの世が終わる時、誰に会いたいんだろう?
誰の顔が浮かぶんだろうか?
そう思った瞬間、ホームに電車が滑り込んで来た。
キキーという車輪の音で歌はかき消され、車窓からは乗客の顔が次から次へと流れて来た。
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