私の赤・あなたの赤⑤
「赤?そうだな。コカコーラ。あの赤かな。真っ赤。缶は見たことある?ほんとに真っ赤なんだよ。」
とバス停で僕と居合わせた40代ぐらいのサラリーマン風の背広を着た人は答えた。
ふとその人は僕を見て、 「君の赤は?」と聞いてきた。
僕に聞き返す人って珍しくて。面食らってしまった。どうしようか迷ったけれど、答えた。
「夕焼けです。晩秋の。」
その人は小さく「ああ」と言い、「真っ赤な夕焼けとか言うもんね。でも、どちらかと言うとオレンジとか、ピンクというか、ちょっと違うよね。」と素直な感想として自分の考えを僕に伝えてくれた。
「そうなんです。でも、僕が見た夕焼けは真っ赤だったんです。それもその時一回。」
「そもそもで、何でそんなことを聞こうと思ったの?」
とその人は僕の答えを聞くやいなや尋ねた。
「それは…。」
と言い始めた時、その人が待っていたバスが来た。
「あっ、じゃあ。」とその人は手をあげて軽やかにバスに乗り込んだ。
バスを見送りながら、僕は心の中で呟いた。 先生が聞いたんだ。僕に。西田の赤はなんだって。赤って言われて、何を思い出す?って。
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猫町のように猫も子どもも大人も心地良く過ごせる居場所を創りたい!いつか叶えたい夢はいくつも☺️
今は、1からピザを作ろう!と小麦や野菜を自然栽培で育てています。(FBページ ちょこ工房)そちらの活動などに有難く活用させていただきます😌