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コラボ作品『果経(かけい)』

果てしなさを 感じながら 果てた。

幾つ 通り過ぎたかも その全てを 思い出すことは 困難で。

螺旋状の坂道を 息が切れても 走り続けてた呼気からは 乾いた心が 洩れ出ていたことだろう。

ただ 必死だった。

過ぎていく時間さえも 無視してしまうほどに。

無数に 張り巡らされた糸。

その中から どれを 選択をするのか。

日々とは その連続。

グラマラスな紫の糸。

キュートなピンクの糸。

パッショナブルな赤の糸。

クールな青の糸。

ピュアな白の糸。

モノクロな黒の糸。

目の前に 垂れた糸は 太さも 目的も 見えやすさも 何もかもが 違う。

それでも 選択を 繰り返して 今に 至っているから この物語は 続いている。

心が 痛くても 身体が 痛くても。

ここに居ることに 変わりは無くて。

「この桃って ミズキの実家で 作ってるんだよな? 毎度 思うけど 旨いよな笑」

大して片付いていない部屋で 知ってはいるけど この季節になると 聞いてしまう質問を 投げ掛けた。

「また その話?笑 毎年 送られてくる度に 言ってるもんね笑 でも こんな話があったよって 実家に 連絡すると 喜んでるから いっか。」

馴れたように 受け流しているようで 受け止めてくれるミズキが 居てくれて 良かった。

果てを経て そこにあったのは 喪失感だった。

得ている感覚を いつの間にか 忘れて その時点で 気付ければいいのかもしれないけど 必死だった その時には 見向きも しなかった。

そのツケは 自分にとって そのほとんどから 何も 残らなかったことが 証明していた。

(俺 何してたんだろう…)

行き先など 分かるはずもなく ただ ただ 歩いていた。

川を渡る為に 毎日のように 通っていた 大きな橋で ミズキは 泣いていた。

マサトには 泣いているけど 何かを 手放して その何かを 振り切ろうとしているようにしか 見えなかった。

「泣いても 絶ち切れたなら いいですよね。」

初対面で しかも 泣いている女性に対して 掛けるべき言葉ではなくても マサトにとっては それが ベストで ミズキにとっても この言葉は 結果的に 解ってくれる人に 出会えたことに 繋がる。

「あたしの何を知ってるの!って 言いたいけど 正解だから なんも 言えないや…」

橋の手摺で 頬杖を付いた ミズキを 優しく 引き寄せた。

言葉が無くても 伝わってほしいと マサトは 願っていた。

言葉が無くても 伝わっているよと ミズキは 肩を寄せた。

今までは 失うことを 恐れずに ただ 突き進むことを 選択してきた。

これからは 失ってはいけないモノを 失わない為に 進んでいくことを 選択していたいと 思った夜のこと。

「マサトさぁ…さすがに 洗濯は した方がいいよ。 ちょっと 臭うよ笑」

「ウソ!? …すいやせん! 今から 洗濯します?」

「自分でやりなさい!笑 干すのは 手伝ってあげるから。」

大切なのは 選択を 間違うことじゃない。

どれを 選んでも どっちもどっちだ。

ただ ここに居てくれる 大切な存在が『洗濯をしなさい』と言うなら それを 選択するのが 何故か 正解な気がしているのは 確かだ。

誰が 掴んでも 切れない 見逃さない糸に 二人なら なれる気がしてる。

何度でも 這い上がって。

幾度と無く 這い回って。

守るべきモノだけは 間違えたくはないから。

※この作品は 友人であり 相互フォローをさせていただいている『川口絵里衣』様のアクリル画『Scramble』から 着想を得て 書かせていただいたモノになります。

絵里衣 ありがとう。

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