2時間半の帰り道は 数日を 思い出すには 丁度よかったりする
10月の下旬に 飾り付けを 手伝わせてもらった ナイトツリーが 新宿の夜空を 地上から 照らしていた。
昨日のこと。
銀座にあるバーに 向かった。
「会わせたい人がいる。」
そう 言ってくれたのだ。
他のお客さんと 話していると そのお兄さんは 和やかな雰囲気で 隣に 立った。
1時間半くらい 話したかな。
「智樹さん。 21日は お時間ありますか?」
お兄さんは 提案をくれた。
「夜であれば。」
「18時からなので 夜ですね。」
連絡先を 交換して 約束は 交わされた。
「飛び入り参加も あるような話も 聞いてます。」
「そうなったら 歌いますよ。」
「お兄さん 終電 大丈夫です?」
「これ 飲んだら 行きますね。」
颯爽と 笑顔で 手を振りながら 去っていった。
あたすは 終電を 逃した。
いや それは 些細な問題だった。
朝のバイトがあれば 終電で 帰った。
バイトが無かったから『こんな機会も 無いかもしれないし 歩いて 帰ってみるか』と タイトルに 繋がる。
その途中で 思い出して 新宿の画像を 納めた。
話は あたすが 青森を 離れるところまで 遡る。
今 お世話になっている モデルの心友のお母さんに 挨拶に 行った。
「1ヶ月で 家 見つけられなかったら 青森に 帰ってきなさい。」
厳しくも 有り難い 叱咤激励だった。
東京に来て 転居をすることの大変さを 痛感して 結局 1ヶ月では 部屋は 決まらなかった。
東京に 来てから 転居に向けて 動いていることは 伝えておきたい。
それでも やっぱり 厳しかった。
約束は 破ってしまったが 諦めるには 早すぎる。
そんな心友のお母さんが ここ数日 こちらを 訪れていた。
あたすは 逃げるように 情けなく 先程 登場したバーに勤めている心友の家に お世話になった。
木場公園からは 東京スカイツリーが よく 見える。
大きな橋から 見渡した世界は 煌めいて 揺らめいた。
木場公園の入り口にある カフェで 音楽を 聴きながら 文章を書くチャンスを 創りたいと 考えた。
(今度は お昼に 来てみよう。)
そう 誓いながら。
実は 3日間も お世話になったのだが 滞在 2日目 3日目は 彼も 休みだった。
市ヶ谷の釣り堀で 鯉に 恋をした。
テリー伊藤さんという天才が 奏でる 鶏の唐揚げを レモンサワーが 輝かせた。
「『ショコラ・デ・サラミ』の『サラミ』って どういう意味なんですか?」
店主さんに 尋ねる。
『サラミ』とは 市販されている 筒状のお肉のおつまみだと 勝手に 思っていた。
でも 違った。
『サラミ』とは 筒状のモノを 切った時の断面の 模様や様子を 示唆しているとのことだった。
また 1つ 勉強させてもらった。
「さっきの『熊猫』行くか。」
『熊猫』と 書いて『パンダ』と 読むことも 調べて 初めて 知れた。
「なんでだろうなぁ…初見のお店に 入るの 抵抗ないんだよなぁ…笑」
呟きながら 扉を 開いた。
「こんな時に 新規さんなんて 珍しい!」
そこは『カラオケ・バー』という 歌いながら 飲める形態のお店だった。
あたすの『十八番』だ。
それよりも 1つ 気になる。
「あの…こんな時というのは?」
「実は このお店 来月に 閉めるんですよ笑」
「そうなんですね。」
そこには 悲しみも 混じっていたのかもしれない。
それでも 明るく 飲み物を 聞いてきてくれるママさんを 尊敬しない理由も あたすには 無かった。
その笑顔に『推進力』を 感じたから。
『諦め』ではなくて『前進』だと 確信させるだけのパワーが そこにあったことを 忘れないでいこう。
「もう少ししたら 可愛い女の子も 来るから 待っててね。」
その美女の噂は 隣にいる 彼からも 聞いていた。
「仕事の帰りにさ お客さんを お見送りしてたのかな…綺麗な女性がいてさ。」
『熊猫』へ 向かう道中で 彼は こんな事を 教えてくれた。
常連さんが 二人ほど 来て あたすが『秦基博』さんの『ひまわりの約束』を 歌い終えた頃 その美女は 姿を 現した。
「遅くなりました~!」
弾ける笑顔は お店に 花を 咲かせる。
「どうも『蕾(ライ)』です!」
彼女は 中国の出身だそうだ。
「二人で『コブクロ』さんの『蕾』いくか。」
歌い始めると ライさんは 歌詞を 指差して また 笑顔の花を 咲かせてくれた。
好みの濃さの時間を 過ごす。
その為なら 苦しい瞬間 悲しい瞬間も 乗り越えられる。
ここに来た原因は マイナスかもしれない。
でも 過ごす時間は プラスで 在りたい。
お金のプラスの方が 目に見えるし 確実かもしれない。
それでも あたすは心のプラスを 選ぶ。
いくら お金があっても 雑念が 多くて 気持ちよく 朝 目覚められないのは イヤだ。
心を満たして 気持ちよく 朝を 迎えたい。
逃げない。
逃げたことが あるからこそ。