英語圏のVtuberの主な事務所 [2024年12月]
2024年末時点での英語圏のVtuber事務所の勢力図がどういう状況になっているのかを、それぞれの事務所の特徴とともに簡単に振り返ってみたいと思います。
各事務所は、上から勢力が強い順に並ぶようにしています。勢力比較はStream Chartsのデータを基準にして、横並びのところは私の主観的な判断で決めました。
Hololive English (ホロライブ)
英語圏のVtuber事務所で、圧倒的な1位はホロライブです。ホロライブには、日本語、英語、インドネシア語を中心とする複数のグループがありますが、すべて英語圏で人気があります。その中心は、英語を主体で配信をするHololive Englishで、2024年12月時点で、18人のVtuberが活動しています。
所属する有名なVtuberには、Gawr Gura、Mori Calliope、Ninomae Ina’nisなどがいます。
ホロライブの特徴は、女性のみで構成されたグループで、ストリーミング配信と3Dコンサートなどのアイドルグループとしての活動の2つを主軸として活動しています。また、グループ内のコラボやイベントなどのグループ活動も盛んで、典型的なVtuberグループと言えます。
Vtuberのキャラクターに関する知的所有権はホロライブが所有しているため、グループを脱退するとキャラクターを継続して使用することはできません。また、活動内容についても、事務所の許可を得る必要があり、多くの制限が付きます。収益面でも、活動から得られる収入の50%という高額な手数料を事務所に収めていると言われています。
その代わりに、グループに所属すれば、成功は約束されているといっても過言ではありません。2024年6月にHololive Englishに加入したメンバーは、わずか半年で全員が登録者数30万人を超えていて、普通のグループならばトップ配信者の水準を全員が達成しているスターの集まりです。
2024年12月に発表されたVtuber賞では、全22部門のうち、Best Vtuber Org(ベストVtuber事務所)を含む9部門を受賞しています。7部門が実質的に対象外だったことを考えると、対象部門の過半数で受賞するという圧倒的な強さを見せました。
Mythic Talent
英語圏のVtuber事務所の第2位は、Mythic Talentです。2024年12月時点で、53人のVtuberが所属している海外では最大級のVtuber事務所です。2023年3月から活動を開始した新しい事務所で、所属しているタレントはVtuberだけではなく、すべてを含めると100人を超えると思われます。
所属する有名なVtuberには、Filian、Nyatasha Nyanners、Shylilyなどがいます。
Mythic Talentはホロライブとは全く異なるタイプの事務所で、見る立場によっては、いわゆる企業勢Vtuberとはカウントしない場合もあると思います。ホロライブのような所属タレントによるグループ活動のようなものは、タレント個人のつながりを除いてはありません。個人勢Vtuberの集合と見る方が実態に近いと思います。
所属しているVtuberは、知る限りではすべて加入前から別で活動していて、あとからMythic Talentとマネジメント契約を結んで所属しています。キャラクターの知的所有権はすべてVtuber自身にあり、活動内容についても制限はないか、極めて少ないと思われます。
事務所に収める手数料についても、Vtuberの活動から得られる収入は基本的にすべてタレントの収入となり、事務所に収めることはありません。例外は、事務所が紹介する案件については、紹介料を事務所が徴収することになっているようです。所属タレントにとっては、事務所はお金を運んできてくれる存在であって、お金を奪っていく存在ではない、ということのようです。
その代わりに、Mythic Talentに加入するには、すでに一定の成功を収めている必要があるということのようです。あるVtuberの体験によれば、YouTubeの登録者数が5万人を超える頃になって、ようやく相手にしてもらえたということでした。また、事務所に所属しても、自分のタレント活動は自分で管理するようです。
もう一つ特筆することとして、2023年から開催されているVtuber賞は、Mythic Talent所属のFilianがMythic Talentと共同で主催しています。
VShojo
英語圏のVtuber事務所の第3位は、VShojoです。発音はほぼ日本語の「美少女」のように聞こえます。Hololive Englishと同じ年の2020年から活動をしていて、英語圏ではNIJISANJI ENよりも古い事務所です。主に英語で活動するVtuberは11人が所属しています。うち10人が女性です。
所属する有名なVtuberには、Ironmouse、Projekt Melody、Zentreyaなどがいます。
VShojoはホロライブとMythic Talentの中間の形態を取る事務所と言うことができます。初期はMythic Talentに近い形態であったようですが、徐々にホロライブのような日本風のVtuberのスタイルを取り込んでいるようです。
まず、キャラクターの知的所有権はすべてVtuber自身にあります。Mythic Talentのようにすでに実績のあるVtuberだけが加入するのではなく、事務所に加入と同時に新キャラクターでデビューという形態もありますが、ホームページには知的所有権はタレントにあると記述されています。
事務所に収める手数料については、Vtuberの活動から得られる収入は基本的にすべてタレントの収入となる点は、Mythic Talentと同じですが、スポンサーだけでなく、グッズの売り上げについても事務所が手数料を取るようです。
活動の自由度についても、Mythic Talentと同様にほとんど制約がないようです。しかし、個人勢と比べるとそれでも制約があるのか、初期のメンバーのうち3人が2023年に契約を解除してMythic Talentへと移籍しています。
それと入れ替わるように、2023年から2024年の前半にかけて、日本の事務所から4人のタレントが移籍してきたことで、グループの雰囲気が変わったと言われています。さらに2024年11月には、日本でVShojo NOVAというユニットを始動させたことで、さらに変化が起きるのではないかと予想されます。
NIJISANJI EN (にじさんじ)
英語圏のVtuber事務所の第4位は、にじさんじの英語グループのNIJISANJI ENです。日本国内では、にじさんじはホロライブと並ぶ双璧ですが、海外では大きく差をつけられています。しかも、にじさんじの海外での人気は大きく下がっているので、今後さらに差が開く可能性もあります。2024年12月時点で、31人のVtuberが所属しています。
所属する有名なVtuberには、Vox Akuma、Luca Kaneshiro、Ike Evelandなどがいます。
NIJISANJI ENの最大の特徴は、男性Vtuberが多く在籍し、かつ、男性Vtuberの方が人気が高いということです。例えば、YouTubeのチャンネル登録者数の上位5人はすべて男性です。
事務所の形態としてはホロライブと似ていますが、ホロライブの倍近くタレントをデビューさせている分、タレントに対する支援は弱く、チャンネル登録者数もホロライブほどには伸びないという傾向にあります。
しかし、タレントへの支援は弱くても、事務所の取り分はホロライブと同等の50%と言われています。さらにグッズについては、売り上げの1%や2%しかタレントに還元されていなかったという話があるなど、タレントへの還元が収益の面でも活動支援の面でも少ないと噂されています。
2023年のクリスマスから始まったセレン 龍月の契約解除にまつわる騒動で大きく評判を落とした上に、その後もタレントの流出や運営の不手際が続いているため、近いうちに勢力を回復することはなさそうです。
Phase Connect
英語圏のVtuber事務所の第5位は、Phase Connectです。北米拠点のMythic TalentとVShojoはともにアメリカ企業ですが、Phase Connectはカナダに本社があります。27人のVtuberが所属していますが、そのうち英語を中心に活動しているのは19人で、残りは日本語を中心に活動しています。全員が女性です。
所属する有名なVtuberには、Pipkin Pippa、Tenma Maemi、Amanogawa Shiinaなどがいます。
登録者数100万以上のトップタレントを持つ上位4事務所とは異なり、最も人気のある所属タレントであるPipkin Pippaでも、YouTube登録者数が40万以下と大きな差があります。
事務所の活動は2021年からでNIJISANJI ENと同じくらいですが、2023年のVtuber賞ではRising Vtuber Org(新興Vtuber事務所)を受賞しています。2024年のVtuber賞ではBest Vtuber Org(ベストVtuber事務所)にノミネートして、大手の一角として認知されてきているようです。さらに、ハーフタイムショーで3Dライブパフォーマンスを披露して、存在感を示していました。
Vtuberとしての活動スタイルは、ホロライブやにじさんじなどの日本の事務所とよく似ています。事務所の手数料については参考になる情報がほとんどないですが、日本の事務所に近いのではと予想しています。知的所有権については、過去に契約解除になったタレントが、キャラクターもチャンネルも停止されたため、事務所が保持する形態だろうと思われます。
Phase Connectは、以前はトップタレントであるPipkin Pippaの1枚看板の事務所だったようですが、その1つの理由として、彼女がコラボが苦手だったということがあるようです。しかし、最近は他のタレントの露出も増えてきていて、伸びが期待できるのではないかと思います。
HOLOSTARS English
英語圏のVtuber事務所の第6位は、HOLOSTARS Englishです。ホロライブを運営するカバーが展開するもう1つのブランドであるHOLOSTARSは、男性のみから構成されるVtuberブランドです。その中のHOLOSTARS Englishは英語を中心に活動するグループで、2024年12月時点で10人が所属しています。
所属する有名なVtuberには、Regis Altare、Axel Syrios、Gavis Bettelなどがいます。
トップタレントであるRegis AltareでもYouTube登録者数が2024年12月時点で30万人と、Hololive Englishの成功と比較すると大きな差があるものの、上位の事務所のうち、NIJISANJI ENを除く事務所は女性Vtuberが主力であるため、男性Vtuberが主力のグループとしては、NIJISANJI ENに続く2位のグループと言えると思います。
Vtuberとしての活動スタイルや事務所との契約条件などは、ホロライブと同等であると考えられています。しかし、会社としてのリソースを人気のあるホロライブの方に割くためか、HOLOSTARS Englishのイベントやサポートは後回しにされてしまうということがあり、タレント自身が愚痴を言っていることもあります。
反面、例えば、NIJISANJI ENを契約解除になったセレン 龍月の転生であるDokibirdとのコラボは、ホロライブのタレントは知っている限りではいまだに実現していませんが、HOLOSTARS Englishのタレントとは何度も実現しています。この一件から推測されるように、活動内容の制約についてはホロライブよりも緩いのではないかと思います。
カバーの傘下にあるグループの中で、最も不遇なグループではありますが、何か突破口が見つかればいいなと思います。