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白日#9

舞のヴァギナに触れる。湿り気を指で感じると、
「もう、しようよ」
と、僕は言った。
「まだよ」
「手で射精してしまうよ」
「まだよ」
と舞は繰り返した。
「魔法が12時で解けるよ」
「私はシンデレラなら、あなたを試すわ」
「何を」
「ボロ服でも一生愛せるか?」
「勿論、愛すよ」
舞は手を僕のペニスから離し、僕の目を見つめる。舞の目は不思議だ。黒いガラスのような虹彩が僕の目の奥を見つめているような気がした。
「ホントね」
舞は満足したかのようだった。冬の風がひびのはいった窓ガラスを叩く。ひびからすきま風が入ってきた。

犬は帰ってこなかった。僕たち家族は、一人家族がいなくなったようで、喪失感を感じていた。誰かを失うというのはこんな感じなのだろう。僕は、泣きたいのに泣けなかった。僕の涙腺がひどい所為だと思った。

「どうする?」
「何が?」
「私がいなくなったら寂しい?」
僕は首を傾げた。なんて言ったいいのだろう? その言葉に舞はショックを受けたようだ。僕のペニスをぎゅっと掴んだ。
「痛いよ」
「私の心のほうがもっと痛い」
僕は、
「昔、犬を飼っていたんだ」
と、ぼそりと言った。
「そんな話、どうでもいいわよ」
「話すと長くなるんだ」
「長くなるなら、やめて」
「ふむ」と僕は喉を鳴らす。「でも、その事とこの事とは大事な関係があるんだと思うんだけど」
「泣けないことが?」
「舞には読心術がある」
舞はまたぎゅっとペニスを掴んだ。「痛いよ」「痛くしてるのよ」

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