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白日#2
ミサイルが連合国軍からK国に向かって、発射された。僕は、それをテレビで見た。ノイズの入ったニュースは録画されたもので、それからテレビの番組は狂ったように、その映像ばかり流し続けた。舞が慌てて、僕の寝室に飛び込んできた。
「ミサイル、発射されたわよ」その時間は朝の四時で、僕は眠気眼で、
「へー」
と言った。舞は、予想しなかった僕の反応を見て、
「あなたらしいわね」と言った。
僕はぼんやりとした頭で、
「世界なんていつか終わるんだよ。だから、眠らせてくれ」
舞は首を振って、寝室から離れていった。
起きると、大根を煮ている音が聞こえ、匂いはうすくリビングに漂っていた。僕はテレビの電源をつけるが、もうどこのチャンネルも放送されていない。朝の二時にやっている、試験放送中のノイズが入っていた。最期の日なんてそんなもんだ。僕が慌てふためいたとしても、なにも変わらない。だから、僕は、リビングにおいてあったバランタインファイネストを出してきて、グラスに注ぎ込む。焦げ茶色のウイスキーの匂いを嗅いで、少しは気分がましになった。僕が酒を飲んでいると、
「朝からお酒?」
と言って、舞は笑っている。
「んー。二十歳の時、人生おわるときにはお酒飲んでいたいと思っていたんだ」
舞はくすくす笑った。僕の頭はアルコールのせいで霧が漂っている気がしている。突然、舞は言葉を発する。
「ねえ。あれ、しない?」