乳腺炎の症状から予防法や治療法について
こんにちは。
今回は産褥の方に向けた記事になります。
産褥の方の中には、授乳中に熱が出る事があり乳腺炎を患う方も多いと思います。
そこで、今回の記事の内容です。
1. 乳腺炎とは
乳腺炎の種類について。
2. 乳腺炎の症状とは
3. 乳腺炎の原因について
4. 乳腺炎の予防方法とは
乳腺炎にかかっていても、授乳はできるのかどうか。
乳腺炎が悪化しないために、病院に相談するタイミングは。
5. 乳腺炎の治療方法とは
子育てしながら授乳中に痛みを感じるのは辛いと思います。
上記の内容について解説させて頂きます。
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乳腺炎とは
乳腺炎が起き得る時期はいつなのでしょうか。
人によって差はありますが、一般的に乳腺炎は授乳を始めてから6-10週程度経過した時期に起こると言われています。
乳腺炎は、乳房がうっ滞した「乳房緊満(うっ滞性乳腺炎)」、乳腺組織が感染した「感染性乳腺炎」、さらに状況が悪化して乳腺組織が化膿した「乳腺膿瘍(化膿性乳腺炎)」の3つに分類できます。
乳房緊満の状態であっても39度台の熱が出ることがあるので、一般的にはこれらをまとめて「乳腺炎」と言います。
母乳がうっ滞している乳房緊満でも、早期に治療することで「化膿性乳腺炎』の予防に繋がる事があります。
ABM(Academy of Breastfeeding Mediscine)という学術団体があり、ABMは感染性乳腺炎を以下の様に定義しています。
乳腺炎とは乳腺に圧痛、熱感、腫脹のあるくさび型をした乳房の病変があり、38.5度以上の発熱や悪寒、インフルエンザ様の痛みが全身性の症状として伴うものである。
» ABM臨床プロトコルより一部引用
感染を伴っている場合には抗菌薬が必要になりますから、乳腺炎を疑った時にはうっ滞によるものか感染によるものか、病院に連絡し医師に相談しましょう。
ではそれぞれについての乳腺炎の症状や予防方法、治療について解説していきます。
乳腺炎の症状にはどの様なものがあるのでしょうか。
出産後に授乳を始めたての頃は、おっぱいがヒリヒリしたり胸が張って痛くなるのはよくあることです。
この様な、少し痛む程度の症状であれば乳腺炎の方ではなくても良く見られる事です。
乳腺炎は『乳房緊満(うっ滞性乳腺炎)』、『感染性乳腺炎』、『乳腺膿瘍(化膿性乳腺炎)』の3つに分類されます。
その中でもまずは乳房緊満や感染性乳腺炎の症状について解説します。
乳腺炎(乳房緊満、感染性乳腺炎)の一般的な症状としては以下のものがあります。
・ 38度以上の熱発があり悪寒がする。
・ 体の節々が痛くなり、頭痛がある。
・ 授乳中に片方のおっぱいが焼けるような痛みがある。
・ おっぱい全体が赤くなる。
・ おっぱいに赤くなった卵(よりも小さい位)サイズの硬いしこりができる。
・ 腋の下のリンパ節が触れる。
・ おっぱいを押すと痛みがある。
乳房緊満や感染性乳腺炎にはこのように、様々な症状がみられます。
★ 注意事項 ★
乳中に熱発し乳房に熱感がある時には腋下で体温を計ると高い値が出ててしまう事があります。
そのため、乳腺炎かと思ったたら、口腔内で体温測定をすることをオススメします。
乳房緊満でも39度まで熱発する事がありますが、大体の場合は1日〜2日で良くなります。
1日、2日経過しても熱が下がらなかったり症状が良くならない場合には感染線乳腺炎や化膿性乳腺炎の可能性を考える必要がありますので注意が必要です。
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乳腺炎の原因は
乳腺炎は3つに分類されます。
・乳房緊満(うっ滞性乳腺炎) ⇨ 乳汁の出が悪くなることが原因
・感染性乳腺炎 ⇨ 細菌感染(主にブドウ球菌)が原因
・乳腺膿瘍(化膿性乳腺炎) ⇨ 乳腺炎から発展して膿瘍が出来ることが原因
では、それぞれの原因について見ていきましょう。
① 乳房緊満:
高脂肪食・高塩分食はこれまで乳腺炎の可能性を高めるとは言われれていましたが、WHOのMastitisによるといまいちその根拠ははっきりしていない様です。
特定の食品により乳腺炎が悪化するとは言い切れませんが、水分を良く摂取しバランスの良い食事は心掛けましょう。【※ 2020/02/23 「高脂肪食は乳腺炎を引き起こす可能性がある」と記載していましたが、修正致しました。】
② 感染線乳腺炎:
ママの皮膚の常在菌(ブドウ球菌)や赤ちゃんの口の細菌が 、乳首の傷や乳管の穴を通って入ってきてしまうことが原因となります。
③ 化膿性乳腺炎:
感染性乳腺炎がより酷くなって、膿瘍が出きた状態です。
場合によっては、膿瘍を穿刺ドレナージする必要も出てきます。
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乳腺炎の予防方法は
■ 乳腺炎の具体的な予防方法
感染性乳腺炎や化膿性乳腺炎に至るのを防ぐためにも、ここでは特に、うっ滞性乳腺炎の予防方法について触れたいと思います。
★ うっ滞性乳腺炎の予防方法について ★
●授乳中、ずっと同じ姿勢でいたり片方だけのおっぱいで授乳していると、一部の乳腺に母乳が残ったままになってしまいます。すると乳汁がうっ滞してしまうことがあります。
授乳の方法についてですが、横に抱っこして授乳される方が多いですが、授乳の仕方も色々と変えると有効な場合があります。
例えば、縦方向に赤ちゃんと面と向かうような格好で抱っこしながら授乳したり、1日に数回赤ちゃんの向きを変えて授乳するなど授乳の仕方を工夫してみましょう。
●胸を強く圧迫しすぎないことが大事です。
おっぱいが強く締め付けられてしまうと、乳腺組織の血流が悪くなってうっ滞を引き起こすことがあります。締め付けすぎる下着の着用は注意しましょう。また、張っている方の胸に力がかからない様に工夫しましょう。
●赤ちゃんに授乳させる時の目安は「欲しがっている限りおっぱいをあげる」ことです。
赤ちゃんがお腹を空かせていそうな様子であればなるべくあげるようにしましょう。
■ 乳腺炎でも授乳はできるか
乳房緊満(うっ滞性乳腺炎)はおっぱいがたまりすぎていることが原因なので、熱が出ていたとしても授乳は継続することをオススメします。
感染性乳腺炎になっていても授乳はすることができます。
また、解熱鎮痛剤を飲んでいるからと言って、赤ちゃんに授乳して問題はありません。
NSAIDs(ロキソニン®︎)は母乳に出にくいですし、アセトアミノフェン(カロナール®︎、コカール®︎)などの痛み止めを飲んでも大丈夫です。
★ 注意 ★
ママがHIV感染症であったり、赤ちゃんがガラクトース血症の場合には授乳中止しないといけないことがあるので、その場合には医師と相談してください。
■ 乳腺炎が悪化しないために病院に連絡するタイミングは?
病院に相談するタイミングが分からない方も多いと思います。
その様な時に相談すれば良いのか、ポイントをまとめておきます。
38度を超える発熱が見られたり、頭痛、悪寒、体の節々が痛くなるような関節痛が見られた時、さらには抱っこする時におっぱいに響く様な痛みがある時には病院に連絡しましょう。
他に腕を上げたり、赤ちゃんを抱っこすると胸に響く様な痛みがある時も、相談する様にしてください。
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乳腺炎の治療方法は
① 乳房緊満
うっ滞性乳腺炎の予防には、出産してからすぐに授乳を始めて乳汁の分泌を促すことが大事になります。
授乳がなかなかうまくいかない時でも、搾乳を行うことでおっぱいに貯まった乳汁を出してあげましょう。
痛みがひどい場合には、痛み止めの内服をしても大丈夫です。
② 感染性乳腺炎
細菌感染が原因になるので、抗菌薬内服と痛み止め(解熱鎮痛剤)が治療法になります。
なお、抗菌薬を飲んでいても授乳は大丈夫です。
③ 乳腺膿瘍(化膿性乳腺炎)
感染性乳腺炎に対して抗菌薬を内服して治療を行なって数日しても良くならず、徐々に症状が悪くなる場合には、乳腺に膿瘍を形成している可能性があります。
その場合には乳腺組織に溜まっている膿瘍を穿刺して排膿(エコーガイド下ドレナージ)する必要があることもあります。
これは膿瘍のサイズにもよりますので、サイズが非常に小さい場合には抗菌薬のみで良くなる場合もありますし、あまりにも膿瘍のサイズが大きい場合には外科的に切開が必要になる時もあります。
なかなか治らない場合や治療後も症状が再発した場合には、担当医にお相談してください。
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病院を受診後に注意して頂きたい事
感染性乳腺炎の場合に、抗菌薬を内服しても熱が続き、しこりがあって押したら痛くなる症状が続く様な時には、再度担当医に相談し受診する様にしてください。
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まとめ
育児で疲労が溜まってストレスフルな生活が続くと、乳腺炎の引き金になることがあります。
大変な育児の中でも合間を見つけて赤ちゃんが休んでいる時に一緒に十分に休息をとってください。そうすることでペースを掴んだ授乳ができる様になると思います。
■ 乳腺炎になって授乳できず、辛い思いをしている妊婦さんへ。
状況が良くなればまた今までと同じ様に授乳を行うことができますし、あまり抱え込まないようにして下さい。
また、乳腺炎になった際に重要な事は、脱水にならない様に水分をこまめに取りつつ、ゆっくりと体を休める事です。
乳腺炎になった場合には体を十分に休める様にして下さい。
■ ご家族やパートナーの方へ
乳腺炎になった方がいらっしゃった場合には、ご家族やパートナーの方のサポートも非常に重要です。
無理をなさらない様に、サポートをして労ってあげるようにして下さい。
今回は以上となります。乳腺炎で困っている方の一助になれば幸いです。