DA PUMP『U.S.A.』に見る平成のヒット曲
プロ野球はポストシーズンに突入し、終盤へとまっしぐらだ。
クライマックスシリーズに駒を進めたソフトバンクホークスの柳田悠岐選手のバッターボックスに入る際の登場曲はDA PUMP「U.S.A.」。
今年を締めくくるポストシーズンに合わせ、出囃子を変更して臨んでいる。
この1年を象徴する一曲として、これからの季節より一層耳にする機会が増えそうなのが「U.S.A.」である。
5月にPVが公開されてから、楽曲とともにダンスの様子をテレビでよく見かけた。
この曲は1992年に発表されたユーロビートの楽曲のカバーである。
その少し懐かしい曲調と振り付けが、この大ヒットに繋がった要因だ。
1992年というと、バブルの崩壊が認知されて間もない頃、まだ微かに好景気の残り香を感じた時期のこと。
平成が産声を挙げてすぐのことでもある。
平成初期の楽曲のカバーが、平成最後の年のヒット曲。
これをいかに捉えるかは個々の自由であるが、私は一抹の寂しさを感じる。
思えば平成には様々なブームがあった。
バンドブームに歌姫の存在、アイドル戦国時代の到来と、大きく見ても雑多な曲の数々が私たちを楽しませてくれた。
しかし現在、打ち込みの技術によって個人での作曲が可能となり、唯一無二の存在だった安室奈美恵さんは引退した。今年はアイドルグループの解散や脱退が相次いでいる。
平成の音楽は価値観の多様化とともに大きく幅を広げ、そして最後に否定された。
「U.S.A.」のヒットには、そんなもの悲しい世間の審判が垣間見える。
実際CDの売り上げは落ち込み、<日本人は音楽を聴かなくなった>とまで言われるようになった。
では私たちは30年に及んだ日本の音楽の歴史を否定していいのだろうか。
私はそうは思わない。
ここ数年で一時期話題となったシティポップブームは、文脈を掘り起こすと遠く昔の音楽をルーツに持つ。
音楽の歴史は年月を経て様々に解釈され、再び日の目を見ることになる。
「U.S.A.」のヒットには単純に歴史の否定ではない、そんな再解釈の性質があるのではないだろうか。
つまり、いつか再び『ポスト安室奈美恵』が登場し、バンドマンは高らかに青春を謳歌し、秋元康氏はまた何か企むことだろう。
歴史は繰り返す。
平成の30年が、醸造の時を待っているはずだ。