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しつもんは教育を変える【5】
マツダミヒロさんの著書『質問は人生を変える』の文章の一節をもとに、教師目線で感じたことや学んだことを書いていきます。
他の正解は何だろう?
私たちはすべてに、たった一つの正解があると思いがちです。
これまでの人生の中やテストや試験で決まった答えを出すという経験を通して、そう思い込んでいる傾向があるのです。
ところが、人生はテストではありません。決まった答えもありません。
世の中においては、正解は一つではなくすべての答えが正解なのです。
どの選択をするにしてもどの答えを出すにしても、世の中において「これしかない」という絶対的な一つの正解はありません。
自分の選択や自分の考え、それこそが自分の正解になるのです。
そして、自分が決めたことだからこそ行動に移すことができます。
私は教師だった時は、周りに正解を求めてばかりいました。
子どもたちに出すテストやプリント、授業中の発言だけでなく、授業態度や生活の仕方まで、子どもたちに正解を出してもらえるよう、時間と手間をかけていました。
また、私自身がどう生きたいのか、何を選択したいのかについても、自分自身に問うことはなく、他の人にどうしたらいいか聞いたり、本から探し出そうとしたりしていました。
「みんなと同じじゃないと不安」という気持ちがあったからだと思います。
でも、人はみな外見や性格が違うように、考え方も行動も発する答えもそれぞれ違っていいんです。
魔法の質問の3つのルールを思い出してみましょう。
「答えはすべて正解」正解は一つではありません。
「答えは出なくても正解」考えることに意味があるからです。
「答えはすべて受け止める」そう考えているんだね、と相手を認めます。
特に、答えを受け止めることに関して、第一声を「いいね」にすると、驚くほど関係性がよくなります。答える側に「こんなことを考えてもいいのかな?」という不安がなくなって、どんどん自己開示してくれます。自由な発想でアイデアが湧いてくるのです。
たとえば仕事の場面で、上司が部下との会話において。
「君がこの商品のプロモーションを考えてくれる?」
「では、SNSの広告はどうでしょう?」
「それは違うだろ」と瞬時に答えを否定したら、部下はどんな気持ちになると思いますか?
逆に、「なるほどね、それもいいね」と答え、受け止められたらどうでしょう?
相手は、自分を認めてもらえた!と嬉しくなります。その意見が採用されるかどうかは別の問題です。
「どうしてそれがいいと思ったの?」
「どんな効果が期待できる?」
と、その人なりの肯定的な意見を聞いてみてから判断しても遅くありません。
たった一つの正解はなく、すべては正解という意識を持ってみましょう。
教師みんなが「たった一つの正解はなく、すべては正解」という意識をもって子どもたちに接したら、本当の意味で、学校が「安心安全な場」になるのではないでしょうか。
また、教師自身もゆったりとした気持ちで日々の教育に取り組んだり、自分を満たしてあげたりすることができるのではないでしょうか。
正解はないということを知ろう