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楽屋で、幕の内。|iPadは母の友達Oct.30

「iPadが欲しい」 

古希を過ぎた母が言った。「誕生日、何が欲しい?」という問いかけに対する返事だった。予想外のプレゼントに驚いたが、母が欲しいものを素直に言うのは珍しいので、iPadを買うことにした。 

母の要望通り、iPad 第8世代・ゴールドカラー Apple Care付き 

でも、正直不安だ。 

果たして、高齢の母にiPadをプレゼントすることは良いのだろうか。 悪影響はないだろうか。携帯はいまだに“らくらくホン”だ。 影響うんぬんの前に、使いこなせるだろうか。 Wi-Fi版を買う予定なので、高額な通信料が発生することはないだろう。iPadを使ってネット通販もしないはずだ。

 でも、やっぱり不安だ。 

いっその事、キッズモードにしたらどうだろう。操作も簡単になるし、変なページに飛んでしまう心配もない・・・いや、高齢の母にキッズモードは、ちょっとやり過ぎな気もする。そもそもiPadにキッズモードはあるのか? 

iPadを持つことで、母の暮らしにネガティブな時間が増えたらどうしよう。私のように。うっかりネットサーフィンして、うっかり1、2時間過ぎて、うっかり寝落ちして風邪をひいて後悔しないだろうか。私のように。 

結局、iPadをプレゼントした。

そして1か月後。 結論から言うと、まーったく問題なかった。 

iPadの使用時間は1日1時間。母が自分でルールを作っていた(偉すぎる)。閲覧履歴を見ると、『天気予報』『失敗しない野菜の育て方』『水彩画を上手に描く方法』などなど・・真面目か。YouTubeに見入っているなと思ったら、草刈機の使い方を再生していた(畑が大好き)。 

iPad様、大変申し訳ございませんでした。

iPadを悪者にするところだった。いつだって機械は何も悪くない。機械が悪者になる時は、使う人間が悪い時だけだ。結局は使う人間次第なのだと、毎日ネットサーフィンで時間を潰してしまう私は大いに反省した。

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