CRAFT SAKE WEEK に参加して思う日本酒業界のDX
大変ご無沙汰しています、社長の富山です。
実に約2年半振りの投稿です(笑)
本当は、色々と投稿しなければならない話題が沢山あるのですが、自分の気持ちが熱いウチに、この話題を…
4/21~4/30の10日間、六本木ヒルズアリーナにて、元サッカー日本代表の中田英寿さんが主催する「CRAFT SAKE WEEK at ROPPONGI HILLS 2023」が開催され、ご縁がありまして、私も唎酒師スタッフとして参加させていただきました。
これまで身内や関係者に対しての日本酒イベントは経験がありましたが、外向けのイベント、ましてや、これだけ大きなイベントに携わるのは初めてだったので、自分が通用するのか、うまく立ち振る舞えるのか不安でしたが、結果的には非常に有意義で充実した10日間を経験する事ができました。
今回は、「CRAFT SAKE WEEK」に参加して私が感じたこと、改めて気付かされたことを、少しお話させて欲しいと思います。
CRAFT SAKE WEEK とは?
「CRAFT SAKE WEEK at ROPPONGI HILLS 2023」は、約4年ぶりに開催された「CRAFT SAKE WEEK」で、厳選された酒蔵100蔵が1日10蔵ずつ日替わりで登場し、更には予約困難な有名レストラン15店が出店。一流シェフによる限定オリジナルメニューと共に、各酒蔵が自ら選んだこだわりの日本酒を楽しむ事ができる、国内最大級の日本酒イベントです。
唎酒師スタッフとは?
唎酒師スタッフは、自身が担当する酒蔵の、酒蔵ブース内での日本酒サーブおよびその補助、または飲食エリア内での日本酒売り歩きを担当し、来場者への日本酒の説明・提案、イベント案内補助等を行います。
私は10日間連続のシフトで担当酒蔵は10蔵、サポートで入った酒蔵を含めると最終的に16の酒蔵の唎酒師スタッフとして日本酒を売り歩きました。
担当酒蔵
【4/21(金)】出羽鶴/秋田清酒(秋田)+ 臥龍梅/三和酒造(静岡)
【4/22(土)】吉田蔵u/吉田酒造(石川)+ 風の森/油長酒造(奈良)
【4/23(日)】春霞/栗林酒造(秋田)
【4/24(月)】常山/常山酒造(福井)
【4/25(火)】二兎/丸石醸造(愛知)+ 神蔵/松井酒造(京都)
【4/26(水)】月山/吉田酒造(島根)
【4/27(木)】雁木/八百新酒造(山口)+ 山本/山本酒造(秋田)
【4/28(金)】三千櫻/三千櫻酒造(北海道)※
【4/29(土)】信州亀齢/岡崎酒造(長野)+ くどき上手/亀の井酒造(山形)
【4/30(日)】東洋美人/澄川酒造(山口)+ 加茂錦/加茂錦酒造(新潟)
※4/28(金)の担当酒蔵は「花巴/美吉野醸造(奈良)」でしたが、当日直前に急遽変更となりました
改めて感じた酒蔵の魅力
自分達にしかできない酒造りを目指している
今回、事前にどの酒蔵が担当になるかを教えてもらえたので、自分が担当する酒蔵については改めて勉強をしました。
もちろんこれまでも酒蔵・銘柄の情報は収集していましたが、今回は蔵元さんも参加されるイベントという事で、今まで以上に深い知識を持って臨まなければと思い、酒蔵から発信されている情報をとにかく読み込み、酒蔵が紹介されている動画を見つけては視聴してを繰り返しました。
その中で感じたのは、同じ日本酒でも酒蔵によって酒造りに対する考え方が本当にそれぞれで異なり、それぞれに魅力があるんだなということでした。
例えば、銘柄「月山」を醸す島根の吉田酒造さんは、発酵に必要な酵母の栄養補助に欠かせないミネラル分が殆ど無く扱いが難しい「超々軟水」を使い、良い状態で届けるため如何に「酸化」を防ぐかを考えて仕込んでいます。
一方で、銘柄「花巴」を醸す奈良の美吉野醸造さんは、”吉野杉”でも有名な吉野の土地ならではの酒造りを大切にし、味が変化する事も一つの特徴として捉え、「酸」をどう活かすかを考えた酒造りをされています。
「酸」という要素一つをとっても、それぞれの酒蔵さんに考えや思いがあり、それがどちらが良くてどちらが悪いということもありません。実際に二つの酒蔵の日本酒を飲んでみると、同じ日本酒なのに全く味わいが違くて、どちらにもそれぞれの「美味しさ」があるんです。
これが、それぞれの酒蔵の”特徴”であり、”強み”であり、その違いを楽しむ・楽しめることが「日本酒の面白さ」なんだなと、改めて感じました。
自分達だからこそできる酒造り、自分達にしかできない酒造りを目指すそれぞれの酒蔵に、今まで以上に愛着と親近感を覚えたのですが、これは当社の企業理念である「Plus One for Everything」という考え方にも通じるところがあるからじゃないかと思いました。
自分達だからこそできる、自分達にしかできない「プラスワン」の価値を提供し続けられる企業でありたいというこの考え方は、当社としてはやはり今後も大事に大切にしていきたいと、改めて強く決心した次第です。
持続可能な酒造りを意識している
先ほど、酒造りに対する考え方が酒蔵それぞれで異なるという話をしましたが、実はそんな中でも一つの共通点があるように感じました。
それが、どの酒蔵さんも「持続可能な酒造り」を意識されているのではということです。
例えば、石川県の吉田酒造さんでは、2021年よりスタートさせた新銘柄「吉田蔵u」の構成要素の一つとして「持続可能な酒造り」を掲げており、蔵が使う電気を再生可能エネルギーに切り替えたり、環境保全活動のために「吉田蔵u」シリーズの売上の一部を寄付をしたり、情報発信をされたりしています。
福井県の常山酒造さんでは、令和4酒造年度より商品ラインナップを一新し、酒米農家・地域と想いでつながり、互いに高めあい、より良い関係を築きながら持続可能な酒づくり・酒文化を牽引する「The Areas(地域との友和)」シリーズを展開しています。
山口県の八百新酒造さんでは、持続可能性を追求する農家と酒造家による酒米づくり(=酒造り)を通じての里山蘇生に挑戦する商品「雁木 MUSUHI」を展開されており、この売上の一部を中山間部にある栽培困難地域を蘇生させて有機山田錦を栽培する取り組みのための原資にされています。
例として、3つの酒蔵を挙げさせていただきましたが、その他にも「SDGs」や「サステナブル」という言葉が頭に思い浮かんできそうな取り組みをされている酒蔵がとても多い印象を受けました。
酒蔵の皆さんがここまで「持続可能性」を意識されているとは、お恥ずかしながら知りませんでしたし、それと同時に私自身の意識の低さ、そしてこれらはもっと意識をしていかなければならない事も痛感させられました。
「持続可能性」とは少し違うかもしれませんが、当社は「エンジニアの”キャリアファースト”」を掲げ、10年後も活躍できるエンジニアを育成する、10年後もエンジニアとして活躍できる環境を提供することを第一に考えており、システム開発会社として、これらを実現するためのビジネス展開を進めています。
当社の今後のビジネス展開については、また別の機会に改めてお話させていただきたいと思います。
日本酒資格持ちとしてのあるべき姿
「日本酒って美味しい、楽しい」と感じてもらうために
私が日本酒を勧める時に一番大事にしているのは、「日本酒に詳しくならなくても良い。楽しく美味しく飲めればそれで良い。」という事です。
確かに日本酒の知識があった方が、この日本酒はどういうお酒なのか、どんな味わいなのかについてはより分かると思います。
でも、それが分からなかったとしても日本酒は美味しいし、事前知識が無くたって日本酒は楽しめるもの。そしてその為のサポートをするのが、我々日本酒資格持ちの役目だと思っています。
唎酒師スタッフを経験して、この考え方に自信を持つことができましたので、私が考える日本酒資格持ちとしてのあるべき姿について、少しお話させてください。
ストーリーと共に楽しむ日本酒 ― 日本酒資格持ちは蔵元の代弁者であれ
日本酒には「甘い」「辛い」、唎酒師的に言えば「薫り高い(薫酒)」「軽快でなめらかな(爽酒)」「コクのある(醇酒)」「熟成された(熟酒)」といった味わいの違いがありますが、それだけでなく、このお酒はどのようにして生まれたのか、このお酒にはどのような想いが込められているのか、といった”ストーリー”と一緒に味わうのも、日本酒の楽しさの一つであると私は考えています。
酒蔵見学に行った経験がある方や、蔵元さんから直接お話を聞いた経験がある方なら、「蔵元さんから直接お話を聞きながら飲む日本酒ほど、美味しくて楽しいものはない」という意見に、ご賛同いただけるのではないでしょうか。
同じ銘柄・同じスペックの日本酒でも、初めて聞く知らないお話やストーリーを知った上で飲む時は、何も聞かずに飲む時よりも何故だか美味しく楽しく感じるんですよね。
そして、このストーリーを語ってもらう一番の適任者は、蔵元さんだと思っています。その日本酒に対しての「気持ち」が一番強いのが蔵元さんですからね。
全ての日本酒を蔵元さんのお話を聞きながら飲むことができれば、日本酒は今以上に人気が出ることは間違いなしなのですが、現実的には日本酒を飲む全てのお客様に蔵元さんがお話できる訳ではありません。
そこで必要になってくるのが、我々のような「日本酒資格持ち」の存在だと思います。
これは、私が「唎酒師」の資格を取得した時に感じたことですが、日本酒の資格を取得したからといって日本酒や酒蔵に詳しくなれる訳ではありません。
あくまで日本酒を深く理解するための「術」を身に付けただけで、より理解を深める為には、日本酒や酒蔵の情報を収集・勉強して、沢山日本酒を飲んで味わいを知ることが重要です。
その中でも、やはり蔵元さんから色々なお話をお伺いすることは、その酒蔵、その銘柄に対する理解を深める、「気持ち」を知る一番の近道であると、今回のイベントを通じて強く感じました。
何事も「”気持ち”があるか」というのは、とても重要です。
当社では「自由な労働環境で、自分の”やりたい”を仕事にする『フリースタイル』な働き方の実現」を中長期計画として掲げていますが、これは趣味や好きなことの延長線上にあるもの、世の中にこういう仕組みがあったら良いのになと思うこと、そういった自分の中に”気持ち”があるもの/ことを仕事にする。そこに”気持ち”が無ければ、良い仕事、良い働きなんて絶対に出来る訳がない、という考えに基づいており、”気持ち”のある仕事をすることを大事にしたいと考えています。
繰り返しになりますが、蔵元さんは全てのお客様に対して自らの「気持ち」を伝える事はできません。
だからこそ、日本酒資格持ちである私達が、蔵元さんの話を聞き、蔵元さんの「気持ち」を知り、蔵元さんの代弁者として、その魅力をお客様へ伝える役目を果たさなくてはならないと思っています。
お客様の知識レベルに合わせた説明を ― プレゼンテーション能力の重要性
これまでに日本酒をどれだけ飲んできたのか、日本酒についてどれだけ詳しいのか。お客様の日本酒に対する知識レベルは、その人その人によって違います。
我々日本酒資格持ちはその事を意識して、全てのお客様が今まで以上に「日本酒って美味しい、楽しい」と感じてもらえるように働きかけなければなりません。
例えばシステムエンジニアが、クライアントのITリテラシーの高い低いに関わらず、誰に対しても難解な専門用語を使って説明してしまうのが好ましくないのと同じように、誰に対しても精米歩合の話をすれば良い訳ではありません。
ITに詳しくないクライアントには、ITに詳しくなくても理解できる言葉で説明する事が必要ですし、一方でIT知識が豊富なクライアントに対して、ITに詳しくないクライアントと同じように説明してしまうと、きっと煩わしさを感じさせてしまう事でしょう。
日本酒も同じだと思います。
そうすると我々日本酒系資格持ちがすべきことは、お客様に対して自分が知っている日本酒の知識をひけらかすのではなく、その人その人の知識レベルに合わせた説明をしてあげれば良いのだと思います。
ただし、これは簡単なことではありません。
知識レベルがどの程度か分からない初めてのお客様に対しては、最初に伝えたい内容を簡潔に、相手を惹きつける話し方によって説明し、その中で相手が求めているものが何かを把握し、臨機応変な対応力で相手が欲しい情報を的確に伝える必要があるからです。
これは言ってしまえばプレゼンテーション能力で、日本酒に対する豊富な知識があるからといって上手くできる訳ではありません。
エンジニアも日本酒資格持ちも、そしてボードゲーマーもそうですが、知識は豊富なれどプレゼンテーション能力が不足していることで、その知識を十分に活かせていないというケースが非常に多く見受けられます。
もちろん、どんなにプレゼンテーションが上手でも、知識が無ければ何も伝えることはできません。
日本酒や酒蔵に関する知識と、それを上手に伝えるプレゼンテーション能力は、日本酒資格持ちにとって必要な構成要素ですし、どちらが欠けてもいけません。
そしてもっと言えば、これは日本酒業界に限った話ではなく、何かを誰かに伝える仕事をする全ての人にとって、必要な構成要素であるとも言えます。
我々はそのことを忘れずに、より多くの知識の習得と更なる能力の向上を目指して、これからも日々、自己研鑽に励まなければならないと私は考えています。
日本酒業界のDXを目指して
ここまで、日本酒資格持ちとしてのあるべき姿について、私なりの考えをお話してきました。
蔵元の代弁者であるために、蔵元の「気持ち」を知り、情報取集や勉強を怠らない
知識の習得に加え、お客様に伝える能力を含めた自己研鑽の継続が必要不可欠
蔵元さんは日本酒のプロであり、自分達の銘柄に誰よりも強い「気持ち」を持っています。
日本酒のプロであるからこそ、その「気持ち」に重みと説得力が生まれ、お客様の心に届くのだと思います。
私は「唎酒師」「酒匠」「日本酒学講師」「SAKE DIPLOMA」と、日本酒資格を4つ取得しています。
それでも、「気持ち」も「知識」も、蔵元さんと同じレベルに到達することは難しいでしょう。
ですが、蔵元さんが全てのお客様に対して語らうことが出来ない以上、日本酒資格持ちができる限り蔵元さんのレベルに近づく。その為に、蔵元さんの話を聞き、酒蔵や銘柄に対する知識を深める。
そして、日本酒の美味しさ・楽しさを一人でもお多くのお客様に伝えるために、知識だけではなく、上手に伝えるプレゼンテーション能力の向上も併せて目指していく。
「CRAFT SAKE WEEK」に参加して、日本酒資格持ちとして今後、何をしていくべきなのかが見えてきたように思います。
そしてもちろん、当社はシステム開発会社ですので、日本酒業界のDXにも貢献したい、できるようになりたいと考えています。その為にも、今後は今まで以上に日本全国の酒蔵に足を運び、蔵元さんのお話をお伺いし、日本酒業界に必要なDXとは何かを探っていきたいと思います。
という訳で、日本酒に関連するお仕事をされている方で、IT分野でのお困りごと(ホームページが欲しい、Excelの作業を効率化したい、独自システムを構築したい、etx…)がございましたら、どんな小さなことでも構いませんので、是非お気軽にご連絡・ご相談いただければと思います。
また、弊社では開発エンジニア社員の募集も行っておりますので、SE(システムエンジニア≒酒好きエンジニア)の方で、当社に興味がある方がいらっしゃれば、是非一度、弊社まで飲みに…もとい遊びに来てください。
皆様からのご連絡も、お待ちしております!
※この記事は、弊社コーポレートサイトで「2023年5月10日」に掲載した内容をnoteにて再投稿したものです