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読み聞かせ

妻がお世話になっている先生の奥様から、読み聞かせの本をいただきました。
子供にそれを読んでやろうと、ページを開くと…

懐かしい!
小学校の教科書に載ってた!!

思わず、日付を無視して読み始めました。

(あらすじ)
いたずらギツネのごんが、ある日、いたずらで兵十のびくにかかっていたウナギを逃しました。
その十日ほど後、兵十の母がなくなったことをごんは知ります。
「しまった。兵十のおっかあが食べたいと言っていたウナギをおれは逃してしまったんだ」
ごんはひどく後悔し、それから毎日ごんはクリやマツタケをそっと兵十の家の前に届けるようになりました。

「これ、ごんはええことしてるつもりなんやろうなぁ。でも、大人になってお父ちゃん気づいたんやけど、これ、全然ええことと違うねん」

ゴフッ!

急に脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返ると、横で寝ていた妻が険しい表情でこちらを見ています。

「余計な解釈は要らんから、黙って読んだって!」

なかなかに難しい要求です。
腹話術の心得のない私としては、とりあえず、そのまま読み進めることにしました。

けれども、イワシ売りのイワシをこっそりとって、兵十の家に投げこんだときは、兵十がイワシどろぼうとまちがえられて、イワシ売りになぐられてしまいました。

「兵十かわいそう…」

「ホンマやで、なぁ。
まぁ、所詮畜生のやることやからなぁ。こんなもんやろ…」

ゴフッ!!

再び脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返るとまた妻が険しい表情でこちらを睨んでいます。

「要らんこと言わんとって!」

(中略)
それでもつぎの日、ごんはまたクリを持って、兵十の家にうら口から入っていきました。それを兵十が見つけました。
「あっ、あいつは、ウナギどろぼうのキツネだな」
兵十はそばに置いてあったてっぽうにたまをこめると、裏口から出ようとしたゴンを…

「ダン❗️ダーーーーーーーン‼️」

とうちました。ごんは、パタリとたおれました。兵十がごんのそばにいくと、クリがかためて置いてあります。
「ごん、おまいだったのか、いつもクリをくれたのは」

ゴフッ!!!

またまた脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返ると例の如く妻が険しい表情でこちらを睨んでいます。

「そんな悲しい話、読まんとって!」

え! ここまで読んできて、今更!?

ご夫人の理不尽に呆気に取られていると、子供がせがんできます。

「お父ちゃん、『ごんぎつね』要らんから、『しらゆきひめ』読んで!」

もう、どいつもこいつも要求が無茶苦茶です。

僕以外、誰も『ごんぎつね』など望んでいなかったことに軽い絶望を覚えながら、リクエストにお応えすることにしました。

(前略)
ある日、おきさきはいつものように鏡にたずねました。すると鏡は、答えました。
「おきさきさまは、美しい。でもしらゆきひめは、おきさきさまの千倍も美しい」
おきさきはいかりくるい、かりうどを呼んでしらゆきひめを殺せと命令しました。

「お父ちゃん、“かりうど”って、なに?」

「お前、かりうど知らんか?

〽︎八時ちょうどの〜
 あずさ2号で〜♪」

ゴフッ!!!!

今までにない鈍痛が脇腹を襲いました。
振り返ると、妻が目に怒りを湛えながら、しかし口元は笑いを噛み殺しながらプルプル震えていました。
人間、こんな面白い表情ができるのか…と鈍痛を忘れて感心していると、妻の口からこぼれるように文句が飛び出しました。

「それ、合ってるけど、違う!」

どういうことやねん、それ?

もはや哲学の領域です。

反対側で子供がせがむので、続きを読みました。

かりうどはしらゆきひめを森にさそいだしました。
かりうどは手にもっていたてっぽうにたまをこめると、しらゆきひめを…

「ダン❗️ダーーーーーーーン‼️」

ひめは、パタリとたおれました。かりうどがひめのそばにいくと、クリがかためて置いてあります。
「ひめ、おまいだったのか、いつもクリをくれたのは」

…あれ?
鈍痛が襲ってこない?

振り返ると、妻が隣で笑い転げていました。

当の子供も一緒になって笑い転げていたので、これでヨシとするかと思った次の瞬間、いきなり真顔になった子供が言いました。

「お父ちゃん、真面目に読んで。」

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