読み聞かせ
妻がお世話になっている先生の奥様から、読み聞かせの本をいただきました。
子供にそれを読んでやろうと、ページを開くと…
懐かしい!
小学校の教科書に載ってた!!
思わず、日付を無視して読み始めました。
「これ、ごんはええことしてるつもりなんやろうなぁ。でも、大人になってお父ちゃん気づいたんやけど、これ、全然ええことと違うねん」
ゴフッ!
急に脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返ると、横で寝ていた妻が険しい表情でこちらを見ています。
「余計な解釈は要らんから、黙って読んだって!」
なかなかに難しい要求です。
腹話術の心得のない私としては、とりあえず、そのまま読み進めることにしました。
「兵十かわいそう…」
「ホンマやで、なぁ。
まぁ、所詮畜生のやることやからなぁ。こんなもんやろ…」
ゴフッ!!
再び脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返るとまた妻が険しい表情でこちらを睨んでいます。
「要らんこと言わんとって!」
「ダン❗️ダーーーーーーーン‼️」
ゴフッ!!!
またまた脇腹を鈍痛が襲いました。
振り返ると例の如く妻が険しい表情でこちらを睨んでいます。
「そんな悲しい話、読まんとって!」
え! ここまで読んできて、今更!?
ご夫人の理不尽に呆気に取られていると、子供がせがんできます。
「お父ちゃん、『ごんぎつね』要らんから、『しらゆきひめ』読んで!」
もう、どいつもこいつも要求が無茶苦茶です。
僕以外、誰も『ごんぎつね』など望んでいなかったことに軽い絶望を覚えながら、リクエストにお応えすることにしました。
「お父ちゃん、“かりうど”って、なに?」
「お前、かりうど知らんか?
〽︎八時ちょうどの〜
あずさ2号で〜♪」
ゴフッ!!!!
今までにない鈍痛が脇腹を襲いました。
振り返ると、妻が目に怒りを湛えながら、しかし口元は笑いを噛み殺しながらプルプル震えていました。
人間、こんな面白い表情ができるのか…と鈍痛を忘れて感心していると、妻の口からこぼれるように文句が飛び出しました。
「それ、合ってるけど、違う!」
どういうことやねん、それ?
もはや哲学の領域です。
反対側で子供がせがむので、続きを読みました。
「ダン❗️ダーーーーーーーン‼️」
…あれ?
鈍痛が襲ってこない?
振り返ると、妻が隣で笑い転げていました。
当の子供も一緒になって笑い転げていたので、これでヨシとするかと思った次の瞬間、いきなり真顔になった子供が言いました。