today me, tomorrow you.
真っ白い光がさす道を歩んでいる。眼前には見渡すかぎり青々とした芝生が広がり、遠くにゆるやかな傾斜の丘がポツンと佇んでいる。それにしてもこの光はいったい何だ。太陽から発せられるとは思えないほど白く、強く、すべての存在を曖昧にする。景色すら曖昧になったその白い光のなかを、道が示すままに歩んでいく。
入口と思わしき場所まで辿り着いた。
そこには扉があるわけでも、敷居があるわけでも、建物があるわけでもない。巨大な漆黒の十字架がひとつ、道の脇に立っているだけだ。その先にも道は続き、青々とした芝生は広がり、遠くにゆるやかな傾斜の丘がポツンと佇んでいる。白い光ですべてが曖昧に存在している景色のなかで、その巨大な漆黒の十字架は道の脇にただ立っているだけだ。そしてその足下にはこう書かれている。
today me, tomorrow you.
today me, tomorrow you. トゥデイ ミー、トゥモロー ユー。今日はわたし、明日はあなた。きょうはわたし、あしたはあなた。キョウハワタシ、アシタハアナタ──白い光はさらに強くなり、漆黒の十字架すら曖昧なシルエットを描きはじめ、グレイがかった道と青々とした芝生、遠くに見えるゆるやかな傾斜の丘。すべてが真っ白な光に包まれる──きょうはわたし、あしたはあなた。きょうはわたし、あしたはあなた。きょうはわたし、あしたはあなた。
遠くに人影が見える。その顔は笑っていたような気もするし、ひどく怒っていたような気もする。スキップしていた気もするし、ベンチに腰掛けていたような気もする。何も着ていなかったような気もするし、シーツのような薄い布を身体に巻きつけていたような気もする──キョウハワタシ、アシタハアナタ。キョウハワタシ、アシタハアナタ。キョウハワタシ、アシタハアナタ。白い光がすべてを曖昧にする。道、芝生、丘、十字架、ベンチ、シーツ、文字──トゥデイ ミー、トゥモロー ユー。トゥデイ ミー、トゥモロー ユー。トゥデイ ミー、トゥモロー ユー。
さあ、起きよう。
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