映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」の感想(ネタバレ)

映画.comに投稿したレビューをnoteにも転記しました。
ネタバレありの感想なので、あらかじめご了承くださいませ。

予想を超える凄い映画でした。
ラストの説明を読んで、この裁判がまだ継続中であることに愕然としました。
ちょっと前に起きた「悲惨だけど今後の改善が見込まれる」中くらいのハッピーエンディングを予想していただけに、本当にショックでした。
マーク・ラファロの怒りがひしひしと伝わってくる構成と演技でした。
家族もキャリアも危うくしつつ、住民からの不審を買いつつ、それでも戦いを続ける理由は、単純明快な正義感だけではないように思えます。
残念ながら、今も昔も権力者は大事なことを隠蔽しがちで、それを防ぐための仕組みが整備されてきたはずなのだけれど、現実はとても厳しいのですね。
デュポンのお膝元でデュポンに歯向かうというのは、自分達の生活を危うくしかねないリスクがあります。
ましてや訴訟から11年という年月は、住人の健康を後戻りできないレベルに悪化させてしまうのに充分すぎる時間です。
行政が自分達を助けてくれないのなら、正義が勝てない現実で生きていくには、自分自身が闘うしかない。
ある種の諦めを抱えながら、今日もまた訴訟に立ち向かっていく主人公の姿は、もちろん美しくもあるけれど、「明日は我が身」という恐怖を観客に突きつけてもくるのです。
この日本でも、公害による健康被害はたくさん起きているし、これから起きないという保証もない。
経済活動はとても大切なことだけれども、それと引き換えに人命や健康が損なわれることを良しとしてはいけない。
そんな当たり前に思えることすら平然と裏切っていくのが、 企業法人という「人ならざる人」の危険な側面であることを改めて痛感させられました。

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