Developer Concourse Unit とは何か
サイボウズ株式会社 開発本部 組織支援部 PeopleExperience チーム Developer Concourse Unit の西原 ( @tomio2480 ) です.
ズバリ,タイトルそのままでして「Developer Concourse Unit」という名前をつけて活動し始めてしばらく経つのですが,チーム紹介スライドはあれど,記事の形式では紹介が存在しておらず,単純に不便なのでこの記事を書き始めました.以下がその紹介スライドです.
Developer の Concourse を充実させる Unit
前提として,我々は 開発本部 > 組織支援部 > People Experience チーム といった階層に所属しています.そのため,それぞれの上位組織のねらいを満足させる必要があります.ざっくりまとめると「製品の開発を通じてユーザーに価値を提供する」 > 「より強い開発組織を実装する」 > 「体験のよさを損なわない組織支援を行う」を守った上で,我々の取り組みを行ないます.
サイボウズの開発組織を強くするために必要なのは,他でもなく所属するメンバーの強化です.そのためにできることは無限に存在します.分かりやすいものに採用がありますが,これは我々の範疇の外です.
そこで,我々の名前から何をやっていくかを説明します.まず,Developer は言うまでもなく開発者全般を指しますが,Concourse(コンコース)ということばをご存知でしょうか.
つまり,Developer Concourse とは「開発者たちが行き交う場」ということです.我々はもうちょっと拡大解釈して「開発者や開発に関する情報が行き交う場」としています.類似概念を説明したスライドがありますので,そちらも紹介しておきます.本編は 16 ページ目くらいからです.
この概念を実装するために,我々はいくつかの細かなアプローチを取ることにしました.代表的な取り組みを,大きく 2 つに分類しつつ,かいつまんで紹介します.
エンジニア文化に寄り添い,共に在る
技術コミュニティの文化を守りつつ企業の者として協力し貢献する
サイボウズのOSSポリシー の 1. 前文 に書かれている「当社がオープンソースコミュニティの良き一員であるようにすること」に沿う形で,オープンソースコミュニティをはじめ,技術や開発者に関するコミュニティに寄り添い,良き一員であるよう,それぞれの活動に敬意を表し,協力し貢献することを目指して活動しています.体は有限ですので,全ての技術コミュニティに足を運び…… とはいきませんが,少なくともサイボウズが関係している範囲から貢献の輪を広げる思いでいます.
例えば,西原の直近の活動では Garoon MATSULI チームの一員として PHP コミュニティに貢献できることをしていくぞ,の気持ちで月刊 PHP カンファレンスに参加するだけでなく運営や手伝いをおこなったり,技術コミュニティの観点から発表できることでプロポーザルを提出して,採択されてはワークショップを行ったり,発表したりしています.Garoon MATSULI チームについては以下の記事をご覧ください.
社内の開発者と社外のコミュニティの距離を正しく縮める
はじめて技術系のカンファレンスに立ち入ったときの気持ちを覚えていますでしょうか.高揚感もあれば,不安もあったのではないでしょうか.いざ参加してみると,たくさんの実践者に溢れ,みなさん優しく接してくれたのではないでしょうか.それでもやはり飛び込むには勇気が必要です.
ここの不安のクッション材を我々は目指します.社内のはじめて参加するメンバーと社外の方とをつないだり,どこにいったらいいかわからない時間に話し相手になったり,ブースがあれば戻ってきて安心できる空間にしたり,カンファレンス内での安全基地的な存在になれるように振る舞います.
また,ポイントは "正しく" 距離を縮めることですから,何人と名刺交換して DM 送ってこいとか,カジュアル面談何人捕まえてこいとか,コラボ勉強会必ず一つ約束してこいとか,レポートをまとめろとか,そういう無理強いは一切しません.純粋に知見と出会い,たくさんの実践者と話ができる空間で,技術カンファレンスの真の価値を満喫してもらうために我々はいます.
製品に生きるものがどう手に入るかなんていうのはコントロールできません.しかし,本人が生かそうとする気持ちを持って,製品や開発に向き合いさえすれば,その知見を役立てられる日が来ます.その日までの時間を短くするために,たくさんの知見や実践と出会ってもらい,生かせるだけのものに "する支援" は我々の役目です.そう考えると,採用や認知拡大なんてことをやってもらう暇はありませんので,どのように一点集中して量をこなしてもらうかも考えなければなりません.
技術や開発組織の情報にアクセスしやすくする
公開可能な情報にリーチしやすい環境を整備する
簡単にいうとアクセシビリティの向上ですが,それはコンテンツ自体へのアプローチを意味すると捉えられることも多いです.もちろん,現在でもスライドをよくする会などの,コンテンツそのものへのアプローチを行っている活動もありますが,実はそれだけではありません.
データや情報そのものがアクセスできる状態であることは極めて重要ですが,それと同じくらい,存在することが知られることも大事です.例えば,今コネクト支援チームで整備している,エンジニアポータルの「Cybozu Tech」は各種情報へのアクセスが極めてしやすい取り組みではありますが,これをどうにかして知ってもらう必要もあります.
我々はさまざまなカンファレンスやコミュニティに出向き,サイボウズのメンバーが行きやすい状態を作る関係もあって,たくさんの人とお話しする機会をいただけています.SNS での発信も当然ですが,それ以上に物理で人間が足を運び「こんなのがあるよ」と話すことも大事です.
ポイントは,広報的にいいところだけを話すのではなく,公開情報を話すことです.成功だろうが失敗だろうが,ブログや SNS 等で発信されている情報ならば,どれも誰かの役に立つ可能性があるため,話題に沿った情報であれば役立ててもらう意味でお伝えします.言うまでもありませんが,ここで提供できる情報を増やすために,社外に向けた情報発信の活性化も必要になります.ここもあくまでも,エンジニア文化に寄り添う活動であるべきで,無理に会社のアピールのために挟み込むのは,変な空気になるのでやるべきではないと考えています.
また,逆向きに社外から社内へ情報を流入させることも大事です.先のカンファレンスを通じて個人が情報を持ち帰り,チームに流入させる経路も大事ですが,我々が得た情報を社内に展開することも大事です.
眠れる知見を発見し知識創造を活性化する
社内外問わず,たくさんの情報にアクセスでき,また活用できることが大事だと考えています.そのためにはいくつかしなければならないことがありますが,今の我々は,知覚できない知見を知覚できる状態にすることを目指して活動しています.いわゆる,暗黙知から形式知へ変換する活動です.詳しくは以下の記事を参照してください.
ゆくゆくはこうして形式知化した知見を各所で使ってもらい,新しい暗黙知を形成し,それからまたより力強い形式知を形成する,知識創造のループが自然と回るような取り組みにしていきたいと考えています.
現在は「各チームの知見共有ノウハウを詳らかにする会」という取り組みからはじめており,各チームでの知見共有に関する取り組みの知見を知覚可能な状態に持っていき,各所に生かしてもらえるよう画策中です.
成長を基軸に人と情報の流通を整備する
結局 Developer Concourse Unit の活動はこれが全てです.通常,企業にて取り組まれる技術コミュニティへのアプローチは,広報か採用かの枠組みで語られることがほとんどです.我々はそことは袂を分かち,開発組織の成長と強化に集中した取り組みを行うことにしました.
採用や広報とセットでやれば社内政治もしやすいじゃんと言われますが,長期的な視点で見ると本当にうまくいきません.少しでも各所が望む別の指標を含んでしまうと,各々自分の好きな成果のみを見るようになり,成果が上がってないと判断すると,そんなつもりじゃなかったといって揉めるというよくある衝突を引き起こして,早い停滞を招きがちです.
実はショートバージョンの思想紹介スライドにその苦悩を盛り込んでいましたので,こちらで紹介しておきます.7 ページ目あたりからが本編です.
技術コミュニティの文化,開発者による情報発信の文化,これらに支えられて今のエンジニアリング活動があると考えていて,これらの文化に敬意を払うのは当然の前提として活動を考えた結果です.
元の文化を辿れば,採用や認知拡大のために生まれたものなどではなく,お互いに知見を持ち寄って,よりよいソフトウェアを生み出したり,よりよい使い方を見つける取り組みだったはずです.「問題 vs 私たち」を地で行くためにも,元の文化のよさを一社の企業活動で乱すわけにはいきません.
何卒是非ともご贔屓に
外から見るとめちゃくちゃに見えるかもしれませんが,この記事に書いたとおり,我々としては一貫した思想だと信じて取り組んでいます.
現在は 2 名体制,一部の活動は別のチームの方に協力いただき活動中ですが,この思想と共に在れる方がいらしたら一緒に活動できるといいなと思っています.当面,採用の予定はなさそうなので,社内にいらっしゃる方限定になりますが…… そうだな,社外の方で共感いただける方は,そちらの組織で同じ思想で活動しませんか?
謎の名前で謎活動の Developer Concourse Unit ではありますが,今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます.