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TechRAMEN 2024 Conference 参加者アンケートの思想
TechRAMEN 2024 Conference 実行委員長の西原(@tomio2480)です.2024 年が終わってしまう前に記事を書き切りたい気持ちでいっぱいですが,一体いつ何を思いつくのかわからず,自分に自分が脅されている状況です.
さて,今回は参加者のみなさんにお答えいただいた,イベント終了後のアンケートの考え方について残しておきます.こうした思想の記事は次年度の負荷分散に寄与するはずです.2025 開催の際は自分以外でも同じ思想でアンケートが錬成できるはず……
大前提としてアンケートに答えるのはめんどい
そもそも参加者はオンライン参加だろうと現地参加だろうと,インプット負荷がだいぶかかった状態でイベント終了を迎え,あまつさえ懇親会でたくさん口頭でアウトプットしてしまうため,全行程が終わったあとにテキストでアウトプットするだけの体力なんてほとんどないはずです.
この壁を越えるためにできることの案としては,
体力のあるうちに回答してもらう
質問量自体を少なくする
選択式をメインに据えて記述式を減らす
記述の必須量を減らす or 記述回答を任意回答とする
(そもそもアンケートを取らない)
TechRAMEN 2024 Conference では「体力のあるうちに回答してもらう」を選択し,閉会式から懇親会までの間の待ち時間に回答してもらうこととしました.一つ失敗したのは,QR コードのみでのリンク共有にしてしまったがために,PC で回答したい人が脱落してしまい,回答者数が減ってしまったこと(らしい)です.実際,記述式のところに書きたいことがあっても,スマホだとめんどいみたいなこともあるでしょうから,これは失敗しました.
また,別のカンファレンスでの取り組みとして「体力のあるうちに回答してもらう」の参考例は 2024 年の PHP カンファレンス小田原で行われた "一分間フィードバック" かなと思います.トークセッションが終わり,質疑応答が終わり,そのあとに解散してしまわずに会場内で1行でもいいからアンケートに答えてね,という仕組みです.細かな話は note に書いてありますので,そちらをご覧ください.
アンケートで収集した情報で満足するのは誰か
アンケートは思いつきで作ってしまうと,参加者の時間を奪って主催側をはじめとする受益者に向けて情報を吸い上げる悪魔の作業になりがちです.しかも思いつきも思いつきのアンケートだと,吸い上げた情報をどう使ったらいいかもわからん代物が出来上がってしまって,真の無駄になることも少なくありません.なんなら,取りっぱなしで見てないとかもあるでしょう.
例えば,スポンサーが満足するように,スポンサーに対しての広報効果を説明するような情報が必要であれば「お仕事は?」「興味を持った企業はありましたか?」「どのセッションに興味を持ちましたか?」「次回も来たいと思いましたか?」「知り合いを連れて来たいと思いましたか?」とかそういう,参加人数やプレゼンスに関する情報を集める必要があるのでしょう.
実際,参加者は "知るか" と思っているかもしれませんが,カンファレンス開催にあたり資金等による支援をしてくれている企業に対する説明として,スポンサー契約をする際に約束しているスポンサーメリットを満足したかどうかの説明は必要になるため,回収せざるを得ないというのが実情でしょう.
他にも,運営が次回に向けてどんな企画をしたらいいか考えたいときは「参加者とコミュニケーションをどれだけ取れましたか?」とか「カンファレンス期間中のランチについて教えてください(近くてよかった・遠かった・おいしいところがあった…… など)」とか「ワークショップやトークセッションについてこういったものがあると嬉しいと思ったことを教えてください」などを訊くことになるんじゃないでしょうか.
そこで今回 TechRAMEN 2024 Conference のアンケートは以下の 2 つの機能を持ったツールであると定義付けて,アンケートを設計しました.
(1) 上川地方開催の技術カンファレンスとしての満喫度合いを測る
アンケートの原則?として聞いたことがあったのは「回答に脳のリソースが必要ない質問でウォーミングアップさせろ」という掟でした.今回もそれに則って,選択式の簡単な質問やあんまり考えなくてもいいような質問を先に持ってきています.特に,上川地方こと旭川を満喫できているかどうか,というのをおちゃめに質問していくアンケートの走り出しにしました.
実際のアンケートの質問でいうと,以下の項目がこちらに該当します.
どちらから来られましたか?
旭川市,上川総合振興局エリア,空知・留萌・宗谷・オホーツクエリア,北海道内,道外(国内),国外
旭川に来るのは何回目ですか?
はじめて,2 - 5 回目,6 回以上,そもそも住んでいる
このカンファレンスに参加する一連の日程中,ラーメンを食べましたか?
食べた,食べようとしている,食べていない
よければ,おすすめのラーメン屋さんを教えてください!
(自由記述)
(2) 各参加者が TechRAMEN 2024 Conference をふりかえられる
技術カンファレンスの端くれとして,どんな空間であれ,どんなアクションであれ学びに繋げてやるぞという気概を持って,このイベントを組んできたプライドが滲み出ました.例えアンケートであっても,書いているうちにこのイベントのふりかえりになるような仕掛けにできてよかったです.
こういう色を付けられたのは,TechRAMEN 2024 Conference は一般的なスポンサーの形態を取らなかったため,スポンサーに向けた説明資料がいらなかったという背景があります.そのため,参加者の利益になる方面にグッと舵を切って,ここでもホスピタリティの向上をはかることができました.
この話は同僚のさかいさんから社内で聞いた「イベント設計はアンケートを設計図に行え」という話からインスピレーションを受けているので,そのときの勉強会の参加レポートをリンクしておきます.
ただ自分らは先に強い思想があったので,アンケート駆動イベントにはならず,強い思想をサポートする形でアンケートを使った形になります.とはいえ,共通する事柄として,アンケートからイベントが求めている姿勢を参加者が回答しながら理解できるか,という点は意識しました.
実際のアンケートの質問でいうと,以下の項目がこちらに該当します.
このカンファレンスに参加する一連の日程中,新しく出会った人はどれくらいいましたか?
5 人未満,5 人以上 10 人未満,10 人以上 20 人未満,20 人以上
よければ,カンファレンスで会った人と話したことで,学びになったことや印象に残ったことを簡単に教えてください!
(自由記述)
実際に学びたい,得たいと思っていたことは獲得できましたか?
たくさん学べた・得られた,それなりに学べた・得られた,そんなに学べなかった・得られなかった,ほぼ学べなかった・得られなかった
よければ,参加前に考えていた学びたかったこと,得たかったことなどを教えてください!(実はそんなこと考えていないなどでもよくあるので,そういう感じでも大丈夫です)
(自由記述)
よければ,このカンファレンスで学んだ,得たことで本当にためになったなぁと思うことを簡単に教えてください!
(自由記述)
TechRAMEN 2024 Conference の満足度をおしえてください
とっても満足,それなりに満足,そんなに満足していない,満足していない
TechRAMEN Conference が次あったら来たいですか?
とっても来たい,それなりに来たい,そんなに来たくない,来たくない
最後に自由にコメントをどうぞ!
(自由記述)
アンケート結果と向き合う
実際に答えてくださった方は 113 名中 62 名でした.アンケート結果については以下の note にまとめてあります.記述式の部分は一部のコメントを抜き出していますが,選択式のものは全て載せています.
全部をそれぞれここでは確認しませんが,例えば,初めて旭川に来た人が 3 割程度( 62 人中 20 人 程度)いることと,カンファレンス期間中にラーメンを食べた人が 8 割を超えていることから,初めて旭川にやってきて,旭川名物である旭川ラーメンを体験してくれていることもわかりますし,カンファレンスで得たことの中に地域の技術コミュニティの話が聞けてよかったという声もあることを見るに,観光以外の観点で地域の技術カンファレンスとしての満足度も高めることができただろうことが推測できます.
学びの視点で考えても,我々がねらった近隣地域からの参加者はアンケートで見る限りでも 2 割は超えていることと,カンファレンスで得たことの記述内容を重ねて考えると,近隣地域の方と遠方地域の方の交流はそれなりに発生し,技術の内容でインプットとアウトプットができたんじゃないかということが推測できます.
たったこれだけでも,TechRAMEN 2024 Conference のスローガンである「上川地方に技術の知見を惜しみなく注ぐ,技術好きのための円卓会議」についてもそれなりに満足したのではないか,ということが推測できます.
アンケートでもカンファレンスをよくしよう
こうして,元のねらいが達成できているかどうかを評価できるアンケートを設計することは,参加者に対するリスペクトの意味でも非常に重要です.作業時間をもらうわけですから,参加者のためにもなってほしいし,有用な形で生かされるようにいろいろ工面しておくのがよいでしょう.
みなさんからいただいた声は,TechRAMEN 2025 Conference でも生かされます.初回の熱量ボーナスが無くたって,いい会を作ることはできるんだということを示していきたいですね.