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バカ息子よ、それでも見捨てられないバカ親よ
今日、息子がバイトを辞めて帰ってきた。
「次のバイトがみつかるまで、金欠になる。だから、カット代を節約するために坊主頭にする」と言い出した。
息子はAmazonで5,000円もするバリカンを購入し、私に、「お母さん、美容師免許持ってるやろ、だからバリカンで髪を刈ってくれ」と頼んできた。
私が、夢と希望を胸に、美容師学校に通っていたころだ。カットの授業で、マネキンの髪をやっとの思いで、流行りもしていないオカッパに仕上げ、先生にチェックをしてもらった。しかし、私のカット技術があまりにも下手すぎて、「こんなもんカットでもなんでもないやんけ!お前今まで何を習ってきたんじゃ!」と先生に怒鳴られた経験がある。
その時、ハサミをへし折ってやろうかと思うぐらい腹が立った。
だからといって私は、怒られたことが悔しくて、人一倍練習するタイプではない。残念な人間だ。
その後、なんとなく、国家試験だけ取得し、今は美容師とは関係のない仕事をしている。
息子には、お母さんは美容師免許を持っているけれど、どれだけ美容師としては、ポンコツだったかをこんこんと教えてやった。
しかも今時、1,000円で、プロにカットしてもらえるのだ。「お前がAmazonで買ったバリカンは、カット5回分の値段だぞ」
しかし、いくら言っても聞かないので、さっぱりと坊主にしてやった。
息子の髪を刈っていると、だんだん頭の形が現れてくる。現れれば現れるほど、別れた旦那と頭の形が似ていることに腹が立ってきた。
私の胸の奥に眠っていた、元旦那への恨みが、数々込み上げてきた。手に持っているバリカンで頭を殴ってやりたくなったが、これは別れた旦那ではなく、我が息子だと我にかえった。そして無事、息子は坊主頭になった。
息子は坊主頭になった自分を見て、非常に満足そうにしていた。
息子よ、心の中を一度、坊主にするがよい。