Clandestino〜クランデスティーノ〜移民、難民の違い その1
HOLA! Tomikoです。
みなさま、スペイン語のClandestinoという言葉
ご存知ですか?
クランデスティーノ
世界共通用語とも言えるこの言葉
秘密を持ったもしくは不法の(illegal)という意味です。
世界的に不法移民を指すことが多いです。
日本では不法移民と聞いて皆さんは何を感じるでしょう?
怖い、悪い、正しくない?
では移民と難民の違いはなんでしょう?
ご存知ですか?
自分勝手に移住するのが移民で、酷い状況の中、移住を余儀なくされたのが難民と皆様勘違いしていませんか?
今日はそのことについて少しお話ししたいと思います。
このテーマについて私が深く考えるようになったのは
自分が移民となったことがきっかけです。
もちろん、移民や難民の問題には
もともと考えもあり、基本的にイギリスの移民カルチャーや
アメリカのアフリカ系音楽に興味があったり、
自分自身のルーツがどこか移民と呼ばれる人々に近いことから
私にとって移民・難民と呼ばれる人たちは
特別な存在ではありませんでした。
けれど、移民として生きるという選択をするまで
わからなかったことがたくさんありました。
私は、幸いなことにこの国の永住権も市民カードも
取得できました。
私が暮らす国は世界有数の移民排出国であり、
同時にClandestinoの受け入れ国でもあります。
そんな環境の中で、私はClandestinoについてより深く考えるようになりました。
移民としてこの国に暮らし始めて
私の心の支えとなったアルバムがあります。
このアルバムが私のこちらでの生活を支えてくれました。
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ヨーロッパのPUNKといえば、、、この方が率いた
Mano Negraなしには語れない。
フランスとスペインをルーツに持つことで、多言語Mixed cultureを用い、シーンに大きな衝撃を与えたMano NegraのボーカリストであるManu Chao氏のソロアルバムのタイトルソング。
Clandestino
アフリカ、中東、アジア、中南米から訪れる多くの移民、難民たち。
スペインはその中継地点でもあります。
この曲はヨーロッパが抱える大きな問題、移民問題
いいえ、
世界がシェアすべき大切なことについて歌っています。
まずこの曲を説明するために、
以前私が日本語訳をつけて歌ったものを貼り付けます。
意訳ですが、なんとなく意味が伝わるかと思います。
当時の制作環境が酷すぎて音飛びだらけですがご了承ください。
Manu Chao / Clandestino
日本語訳: tomiko takino
悲しみと共に
決意を胸に
法から逃れ
走るは宿命
バカでかいバビロンの
渦の中失われた
わが名はクランデスティーノ
紙切れ一枚のために
北を目指して働きに出た
道の途中で取り残された人生
海の国境、街の亡霊
姿の見えぬ
許されざる人生
権力はそう罵る
Save Immigrants
Free Them Now
________________________
これは歌うために訳した意訳です。
日本の移民局に収容されている
移民たちの解放を求め歌ったものです。
もっと詳しく歌詞を見ていくと。。
________________________
Solo voy con mi pena, sola va mi condena*1
悲しみだけを胸に、罪だけを背負い
Correr es mi destino para burlar la ley
法を回避するため走るのは運命
Perdido en el corazón de la grande babylon
大きなバビロンの真ん中で失われた
Me dicen el clandestino por no llevar papel
書類不足のため クランデスティーノ呼ばわり
Pa' una ciudad del norte yo me fui a trabajar
北の街に働きに出た
Mi vida la dejé entre ceuta y gibraltar*2
セウタとヒブラルタールの間で失われた人生
Soy una raya en el mar fantasma en la ciudad
海の国境線の様に見えない街の亡霊
(rayaは線、marは海、fantasmaは亡霊、ciudadは街
ということで、海にある線=国境と
見えない幽霊/Clandestinoの存在をかけているのではないかと思います。*2の海上ルートを参照ください。)
Mi vida va prohibida dice la autoridad
禁じられた人生だと権力は私にいう
Solo voy con mi pena sola va mi condena
悲しみだけを胸に、罪だけを背負い
Correr es mi destino por no llevar papel
法を回避するため走るのは運命
Perdido en el corazón de la grande babylon
大きなバビロンの真ん中で失われた
Me dicen el clandestino yo soy el quiebra ley
クランデスティーノと呼ばれる私は
法を打ち壊す
Mano negra clandestina
マノ・ネグラ 不法
(マフィア、ギャングなどアウトサイダー)
Peruano clandestino
ペルー人 不法
Africano clandestino
アフリカ人 不法
Marijuana ilegal
マリファナ 違法!
________________________
*1
Mi condenaというのは収容されるという意味になります。
Sola vaは〜して欲しかった
というような意味合いで使うこともあるので、
収容された方が楽だったという気持ちも奥に潜んでいる可能性もあります。
歌詞の表記が色々あるんですが、
Solo, voy con mi pena,
Sola, va mi condena
カンマがついていることもあります。
この場合、ただ収容されるだけの道をただ悲しみを背負い行く
と未来への悲観や不安をこめた意味合いにもなります。
*2 セウタとヒブラルタール
セウタはモロッコにあるスペインの領地。
ここはアフリカとヨーロッパが最も密接する場所で
海の向こうわずか15km先にヨーロッパ大陸(ヒブラルタール)があります。
ヒブラルタールはイギリスの領地であり、
難民申請ができる場所となっています。
ここへは多くの移民・難民が詰めかけ、キャンプは過密状態でかなり危険な状況にあると言います。
国境は有刺鉄線で管理され、越境やキャンプにおいて命を落とす人も少なくはないのです。
特に、ボートでの海上移動距離が最も短いセウタでは、
立地上、ヨーロッパへたどり着く可能性も高い反面、
現在は取り締まりが厳しくなり、
移住に成功する確率がかなり減っているといいます。
ここで私たち知るべきはなぜ人々がここに集まり、移住をしようとするのかということ。
シリア難民もアフリカ経由でヨーロッパに逃れようとしている他、コンゴやスーダン、中央アフリカなど紛争や内戦から逃れるためにサハラ以南の国の人々が集まってくるということです。
モロッコの東側のリビアからは、イタリアやギリシャがボートで渡る移民たちの目的地となっているものの、海上の移動距離が長く、危険は遥かに高いです。こちらのルートは越境での死亡率も低くないのです。
シリアにしろ、アフリカ南部にしろ、ここまで辿り着くには途方もない移動距離を辿ることになります。
海を渡るボートの上から亡命要請をすることが多く、その申請がおりるまでは、例え世界中で難民として認定されるであろうシリアの人々ですら、難民ではなく移民として扱われるということです。
そう全てはClandestino
ビザや永住権を持たない
不法移民であるのです。
これを聞いて、
アメリカンドリームを掴むために海を渡る人々が
Clandestinoと未だに言えますか?
あなたが移民に対して知っていることは、
偏見や間違った知識ではありませんか?
例え、無事ヨーロッパにたどり着いたとしても
Clandestinoという苦しい人生が待っています。
全員が難民認定されるでしょうか?
亡命が認められるでしょうか?
苦しい状況にいる人たちの出どころに線引きしても意味がありません。
それこそ、ドキュメントを出せと言ってるのと同じです。
何故そこまでして移住するのか。
その理由は皆さんが難民という言葉に想像するもの
そのものだと思います。
ほぼ全ての移民が抱えているものです。
生きられない。
家族に未来への可能性を与えたい。
自分の国で命を奪われるなら
生きる可能性を求め
ただ前進したい。
その先すら見えずとも
辿り着けるかすら
わからずとも。
そんな苦渋の決断から
国を離れた人々。
それを世界はClandestinoと呼んでいるのです。
そういえば、私がこの国に移住して、
本当に苦しい毎日の中で、
自分を亡霊と感じていた毎日の中で、
何をやっても歌を歌っても
丸ごと無かったことにされていた毎日の中で。
初めて私の声を聞こうとしてくれのは
初めて私を存在するものとして扱ってくれたのは
他の誰でもない、マヌ・チャオ氏でした。
この日を境に、私の移住生活は随分と変わりました。
次回は、私が出会った移民たちについて少し話したいと思います。
続く
tomiko