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ぶどう栽培におけるストリゴラクトンの合成とアバーキュラー菌根(AM)菌との関係

ストリゴラクトンは、主に植物の根で合成されるホルモンです。その後様々な部位に運ばれ、分枝の抑制や菌根菌との共生との相互作用、種子の発芽などの役割を果たします。

ストリゴラクトンの役割
ストリゴラクトンはオーキシンと互いに協力して分枝制御を行います。オーキシンの高い濃度はストリゴラクトンの合成促進し、ストリゴラクトンは更に側芽の成長を抑制するために機能します。これにより植物は頂芽が優勢な形で成長し、適切な資源(栄養、ミネラル、光合成産物など)配分が行われます。

ストリゴラクトンの輸送
ストリゴラクトンは師管を通じて輸送されます。師管は植物の有機物(例えば、当分やホルモン)の移動を担当する組織であり、ストリゴラクトンもこの経路を利用して植物体内を移動します。
道管(木部)は水や無機栄養素を根から地上部に運ぶ役割を果たしますが、ストリゴラクトンは師管を通じて茎や他の分に運ばれます。
これにより、ストリゴラクトンは植物全体に信号を効率的に伝達し、分枝抑制や他の機能を調整することができます。

良い影響
1.資源の集中;ストリゴラクトンにおる副梢成長抑制は、植物全体の資源を主要な新梢や果実に集中させることができます。
2.分枝の管理:適切な分枝管理によりぶどうの木はより効果的に光を受けることができ、光合成効率が向上します。

悪い影響の可能性
1.徒長枝の発生:ストリゴラクトンが副梢の成長を抑制する一方で、新梢の成長が過度に促進されることがあり、その結果として徒長枝が生じる可能性があります。徒長枝は果実の成長に必要な養分を奪い、果実の品質にやサイズ、重量などに悪影響を与えることがあります。

※ 総じて、ストリゴラクトンは果実の成長に良い影響を与えることができますが、過度の作用は逆効果になる可能性があるため、バランスを取ることが重要です。

リン酸欠乏とストリゴラクトンの過剰生産
リン酸欠乏でストリゴラクトンの生合成が促進することがあります。そして、過剰なストリゴラクトンが作られることでバランスが崩れ、徒長枝が発生する可能性もあります。
ストリゴラクトンの過剰生産の例として、リン酸欠乏、遺伝子異変、環境ストレス(例えば水ストレス、塩ストレス)等が考えられます。

1.リン酸が固定されやすい土壌環境では、植物はストリゴラクトンの生合成を増加させ、AM菌と共生を促進します。
2.ストリゴラクトンの増加により、AM菌が根に寄生し、リン酸などの栄養素を効率的に吸収できるようになります。
3.AM菌が効率的にリン酸を供給するようになると、植物のリン酸状態が改善されます。
4.リン酸が十分に供給されると、植物はストリゴラクトンの生合成を減少させるフィードバック機構を発動します。
5.過剰なストリゴラクトン生産が抑制され、バランスが保たれます。

黒ボク土壌と持続可能な果樹栽培
リン酸が多く固定された黒ボク土壌では、結果としてバランスが保たれ、持続可能なぶどう栽培が実現されます。
ストリゴラクトンとAM菌の相互作用は、ぶどう栽培におけるリン酸供給を効果的に管理するために重要な要素となります。


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