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ぶどうの根と共生する菌根菌

東御市の畑の土壌:黒ボク土について

 東御市は、長野県の北東部に位置し、周辺には浅間山や八ヶ岳などの活火山があります。そのため、東御市の畑の多くの土壌は、火山灰由来の黒ボク土です。黒ボク土とは、火山灰が積層したところに茂った植物が枯れ、時間をかけて土となった土壌です。黒ボク土は、火山灰に含まれるアルミニウムと有機物が結合することで、黒色や黒褐色の色を呈し、多くの腐植を含みます²。腐植は植物に必要な栄養分の供給源になり、また、土壌の粒子を適度に結合させてフカフカの土にしてくれます。しかし。黒ボク土は、リン酸の吸着能力が高く、リン固定しやすいという特徴があります。これは、リン酸が土壌中の鉄やアルミニウムと結合して不溶性の化合物となり、植物の根から吸収できなくなる現象です。リン酸は植物のエネルギー代謝や糖の生産に必要な栄養素であるため、リン固定はぶどうの生育や品質に悪影響を及ぼす可能性があります。

リン固定の欠点回避:菌根菌について

 菌根菌は、植物の根と共生する微生物で、リン酸の利用効率を向上させる効果があります。菌根菌は、土壌中のリン酸を溶出する酵素を分泌したり、菌糸を伸ばして遠くのリン酸を吸収したりすることで、植物にリン酸を供給します。また、菌根菌は他の菌根菌と菌糸をつなげて菌根菌ネットワークを形成することがあり、その場合は数mにも及ぶ範囲でリン酸や他の栄養素を吸収できる可能性があります⁵。

 菌根菌によるリン酸の供給は、ぶどうの糖度や品質にも影響すると考えられます。実際に、菌根菌の接種がぶどうの果実の糖度や酸度、ポリフェノール含量などに有利に働くという研究報告があります。また、菌根菌は、亜鉛や鉄などのミネラルやアミノ酸などの有機物質の吸収も促進します。これらの物質は、ぶどうの風味や香りにも重要な役割を果たします。菌根菌によって、ぶどうの果実に多種多様な成分が蓄積されることで、甘さと複雑さが増すと期待されています。

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