リン酸とストリゴラクトンの関係:植物の枝分かれとアーバスキュラー菌根菌との共生
1. リン酸が豊富な土壌におけるストリゴラクトン分泌の抑制
リン酸を多く含む土壌では、植物はストリゴラクトンという枝分かれを抑制する植物ホルモンの分泌を減らします。これは、リン酸が十分にあると、植物は根からリン酸を吸収するためにアーバスキュラー菌根菌との共生を必要としなくなるからです。ストリゴラクトンは、アーバスキュラー菌根菌との共生を促進するシグナル物質としても働くので、リン酸が豊富な土壌では分泌が抑制されます。
2. ストリゴラクトンの役割
ストリゴラクトンは、以下の二つの役割を担っています。
枝分かれの抑制: 植物は、光合成を効率的に行うために、枝分かれを適度に抑制する必要があります。ストリゴラクトンは、この抑制メカニズムに関与する重要なホルモンです。
アーバスキュラー菌根菌との共生の促進: リン欠乏などの環境ストレス下では、植物は根の先端部分にある根毛や根尖の細胞からストリゴラクトンを分泌します。これが、アーバスキュラー菌根菌との共生を促進し、リンの獲得を助けるのです。
3. リン酸過剰投与の影響
ストリゴラクトンの分泌が抑制されると、植物は枝分かれを増やすことで、光合成を効率的に行い、生殖成長にエネルギーを回すことができます。しかし、リン酸過剰投与によってストリゴラクトンの分泌が過剰に抑制されると、以下の問題が生じます。
アーバスキュラー菌根菌との共生の弱体化: ストリゴラクトンは、アーバスキュラー菌根菌との共生を促進するシグナル物質としても働くため、その分泌量が減少すると、共生関係が弱体化します。
菌根菌の働き:菌根菌は、植物にリン酸やミネラルなどの栄養素を供給し、植物の生育や病害抵抗性を高める役割を果たします。しかし、共生関係が弱体化すると、菌根菌の働きも抑制され、植物への栄養供給が減少します。
植物への影響: 栄養供給の減少は、植物の生育不良や病害抵抗性の低下を引き起こす可能性があります。
4. 結論
リン酸とストリゴラクトンの関係は、植物の枝分かれとアーバスキュラー菌根菌との共生に重要な影響を与えます。リン酸過剰投与は、ストリゴラクトンの分泌を抑制し、菌根菌との共生関係を弱体化することで、植物の生育に悪影響を及ぼす可能性があります。