ビールが作りたくなったので常陸野ネストに行ってきた④

⑤ろ過、煮沸釜へ移動・スパージング

糖化が終わったら、次はグツグツと煮沸する。その際、いまの糖化釜でグツグツさせるのではなく、煮沸用の釜に移動させてグツグツやる。

移動させる際にろ過を行う。糖化釜に残っている麦芽の殻はもうお役御免だ。いや正しくは、麦芽の殻には今から最後の仕事をしてもらう。ろ過フィルターだ。もちろん、糖化釜にはろ過用に目が非常に細かい金属フィルターがついているが、麦芽の殻にもフィルターとなってもらう。前回の記事で書いた工程①麦芽の破砕で、あえて麦芽の殻を残したのはこのためだ。

ろ過によって最初に出てくる麦汁を一番麦汁と呼ぶ。そう、あのキリン一番搾りはこの一番麦汁のみを使ったビールだ。一番麦汁はしっかり甘味があり色も濃いのだが、最初に麦芽と混ぜ合わせた温水の分しかとれないので、世の中のほとんどのビールは、二番麦汁も使う。この二番麦汁を取り出すために行うのがスパージングだ。釜に残っている麦芽の殻や粕にくっついている糖分をしっかり洗い出すために、釜の上から温水のシャワーをかけるのだ。

実際のスパージングは機械によって自動化されているものだが、ここは手造りビール工房だ。原始的に、じょうろを使ってひたすら上から温水を注いでいき、ろ過されて出てきた二番麦汁を隣の煮沸釜に移していく。規定の量に達するまでこれを繰り返す。その時間およそ30分!当然、次第に二の腕が悲鳴をあげることになる。

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人力スパージング

なんとか二番麦汁も煮沸釜に移し切ったところで、一番麦汁と二番麦汁の飲み比べをした。

二番麦汁は、ろ過する際のスパージングによって洗い出された麦汁なので、一番麦汁よりも色は薄く、雑味のないすっきりした甘味が疲れた体に心地よい。

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左からお通じ麦汁、一番麦汁、二番麦汁

⑥煮沸

煮沸釜に移動させたら、温度を上げて60分ほど沸騰をさせる。

しかしこの煮沸が意外と奥深い。単に殺菌するためかと思いきや、それだけでなく

・麦汁を煮詰めて糖度を調整する

・麦汁に含まれる不純物を凝固させる

・ホップの苦み成分を抽出させる

・嫌なフレーバーの原因物質を蒸発させて取り除く

といった役割もある。めちゃ大事。

⑦ホップ添加

そして、いよいよビールの命とも言われるホップを添加。今回はホワイトエールで苦味も低めに設定しているので苦味付けのホップは使用しない。ギャラクシーもアマリロも香りづけのためのホップだ。ぐつぐつ沸騰し始めた釜に、ペレット状のホップを入れると、すぐにホップの香りがふわっと立ち昇る。

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ホップを投入するこの瞬間のワクワク感がたまらない

さらに副原料であるオレンジピール・コリアンダーも一緒に投入する。

⑦ワールプール

先ほど煮沸の役割として、麦汁に含まれる不純物を凝固させる、と書いた。これらはビールの濁りや劣化の原因となるので、取り除かねばならない。そこで煮沸が終わったあと、棒を使って麦汁をかき混ぜて渦巻を作る。そうすると、タンクの底の中心に不純物が集まってくれ取り除きやすくなるのだ。この作業をワールプールという。

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大きく円を描くようにグルグルと何度かかき混ぜる

⑧麦汁冷却

麦汁は煮沸した直後なので当然アッツアツだ。このままだと、この後加える酵母が活動できない。酵母が元気に動ける温度に冷却する必要がある。煮沸釜から熱交換器を通して一気に20℃前後まで冷やし発酵用ポリタンクに麦汁を移していく。

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長方形のプレート状のものが熱交換機


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熱交換器を通った後の麦汁

発酵用ポリタンクに麦汁が全て移し終えたら、スタッフの方が酵母を手早くポリタンクに入れて、仕込み作業完了!

ここからおよそ2週間の発酵期間およびドライホップを経て完成となる。ここからは手造りビール工房のスタッフの方にお任せとなる。

冷えた麦汁は、ホップが入っているので甘さだけでなくしっかり苦みを感じ、ビールに少し近づいた印象。出来上がりが楽しみだ。

⑨まとめ

ビールの作り方は知識としてはあったものの、手造りビール工房でスタッフの説明を聞きながら実際に手を動かしてみることで、ちゃんと腹落ちして理解ができ、とても勉強になった。

何よりスタッフに相談しながらレシピを決める、特にどんなホップをどれくらい使おうか〜とあれこれ悩む時間がとても楽しかった。
作れるビールの範囲も、ピルスナー、IPA、濃色ビール、ウィートと幅広く、ホップの持ち込みなどもできるため、色々なレシピに対応してもらえるのがとても良い。

また麦芽の粉砕やワールプールなど身体的にしんどい作業があったり、仕込みの間、待ち時間が意外と長かったりと、そういった醸造のリアルを体験できるのも貴重だと思う。

ビール醸造に興味のある方のみならず、仲間内でわいわい作って完成したらみんなで飲む、というのもめちゃくちゃオツな楽しみ方だと思うので、興味ある方はぜひ。

全4回に渡る手造りビール工房の体験記でした。
(まさかの2年越しだが完結できてよかった…)


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