ビールが作りたくなったので常陸野ネストに行ってきた③
さあいよいよビールを醸造していこう。今回は麦芽の軽量から、マッシュアウトまでを書いていく。
①麦芽の計量・破砕
今回作るホワイトエールでは3種類の麦芽=モルトを使う。ベースモルトである「ラガーモルト」、ホワイトエールには欠かせない「ウィートモルト」、そして「クリスタルモルト」が少々だ。前回のレシピ設計で、本家のホワイトエールより少し色を濃くしてみようと決めたが、その色を濃くしてくれるのがこのクリスタルモルトだ。
スタッフの方に作成していただいた45Lのビールに必要な麦芽の配合表に従って、麦芽を計量していく。
3種類の麦芽を計量し一つのバケツに入れたら、次は麦芽破砕機に投入する。粉砕ではなく"破砕"だ。麦芽を粉々にするわけではなく、麦芽の表面を覆っている殻はある程度残し、中身をしっかりつぶす。麦芽の殻は、後工程にある「ろ過」で【フィルター】の役割を果たす。
②糖化釜に投入
破砕した麦芽を、温水とともに糖化釜にザーッと投入する。
温水と麦芽がしっかり混ざるように、木べらで混ぜ合わせる。
一気にブルワー気分になる瞬間だ。やはりブルワーといえば、真っ先に思い浮かぶ姿が、でっかいタンク(今回はミニチュアだが)の前に立ち、へらでタンクの中身を混ぜ合わせている姿ではないだろうか。ビール作っているぜ今!、と気持ちを昂らせるながらしっかり混ぜ合わせていく。
しっかり混ぜ合わせた後、この時点での麦汁を試飲させてもらった。糖化していないので、当然甘味はなく繊維質たっぷりのお湯、という感じだった。お通じが良くなりそうだ。
③糖化
お通じに効く麦汁に舌鼓をうった(?)ところで、いよいよ麦汁の糖化に移る。
糖化とは、麦芽に含まれているデンプンを糖に変化させる工程だ。その名の通りだ。
どうやって糖化させるかというと、温度を65℃に上げるだけだ。いたってシンプル!なぜ温度を上げるだけでデンプンが糖に変わるかというと、麦芽がもともと持っている”アミラーゼ”という酵素が、65℃付近の温度になると、元気になって、デンプンを糖に変えてくれるのだ。人間は温度管理をして時間を計るだけでよいのだ。煮込み料理と同じ要領だ。
アミラーゼが頑張ってデンプンを糖に変えてくれている間に、我々人間は昼食をとることに。木内酒造特製の常陸さばサンドをいただいた。実は、木内酒造がある茨城は鯖の漁獲高が日本一だそうだ。
さばサンド以外にも、ほらビールを飲めよと言わんばかりに、ビールに合いそうなおつまみがずらり。飲みたいけど、でも酔っ払って午後の作業に支障が出るのも避けたい・・。どうしたもんかとビール売り場で悩んでいた時に最適解を発見した。アルコール度数0.3%の”ビールテイスト飲料”である「ノン・エール」だ。低アルコールでありながら、モルト・ホップが効いたしっかりした飲みごたえで大満足。
お昼を済ませ一息ついたころに、タイマーが鳴り響く。糖化完了のお知らせだ。
だが糖化が本当に終わったかどうかを確かめる必要がある。そこで行うのがヨウ素テストだ。原理は学校の理科で習ったヨウ素デンプン反応だ。ヨウ素液を麦汁にたらすと、麦汁にデンプンが残っていると、青紫色に変色。糖化が完了していてデンプンが残っていないと色が変化しない。
お通じに効く麦汁は、糖化する前なので青紫色に変色。そして糖化が終わった麦汁では色が変化しないことを無事確認。糖化は完了だ。
④マッシュアウト
糖化が無事完了したので、アミラーゼの役割は終了だ。温度を76℃まで上げることで、アミラーゼの働きを止める。この作業をマッシュアウトという。
糖化を経て釜の中の麦汁は、お通じ麦汁に比べて色が濃くなり、甘い香りが立ち上がってきた。
ここまでほとんど煮込み料理をしている気分。なんだ意外と簡単じゃないか!と思っていたが、この後”スパージング”という作業で二の腕が悲鳴を上げることになる・・。(次回につづく)