個人主義を推奨し、集団主義を否定する

DAOにおけるエコシステムの構築

色々と考えていくと、エコシステムの構築は、徹底した個人主義をベースに考えていかないと、成立しないのだろうと考えている今日この頃。

集団やコミュニティの意見が反映されやすいエコシステムは、結局のところ、癒着や派閥の発生を促進し、その行動によってインセンティブが発生するエコシステムの構築は、現在の社会システムの延長線上にしか到達しないように感じてしまっているのです。


既存のコミュニティの価値観とDAOの課題

個人の自由が阻害される

DAOでは、参加者が自身の投票や意思決定によって組織の方向性に影響を与えることが可能だが、集団主義が優先されると、個人が自由に意思決定を行うことが困難になる。
特に、コミュニティ内の多数派による意見が支配的になり、少数派の意見が軽視されることで、個人の自由が阻害される。

現代社会において、特に意見が軽視される理由は
誰が発信した内容か
・自分に直接関係する発信内容か
・誰が発信に対してリアクションしてるか

で判断され、その発信内容に対する価値判断とは別の観点によって、その判定が行われていることが多い。

また、自由な意思決定や投票は可能だが、その行動自体がコミュニティ内での未来の活動に影響を与えかねない『空気感』が醸成しすぎると、意思表明が難しい環境になってしまう。

本当の意味での自律分散的な活動を可能にする環境に対し、インセンティブ獲得の方法に『集団行動』が有効に働かないロジックが必要となるのではないか・・・という考え方で考察していってみての現時点での考察になる。


創造性の抑制

集団主義が協調されている環境では、多数派や集団の意見に合わせる傾向が強まる。これは、異なる意見や新しいアイデアを持つ個人が自身の考えを表現しにくくなり、DAOでの創造性の抑制につながる。

そもそも、上記テーマに対してDAOは解決の糸口となりうる存在で、それによって既存組織以上の効率的な価値創造が期待されていた。
そして、そこに関わる人たちの貢献が評価され、これまで価値に貢献してきた存在が、そのリターンを享受できる、一部の存在にインセンティブ支払いが集中してしまっていたことを解決出来ると期待されていた。

しかし、単純な多数派によって組織の方向性や価値観が決定する設計にしたら、やはり既存の環境から変化が起こるとは思えない。

これまで、既存の価値観や価値基準から変化することこそDAOの存在意義だという持論を述べてきたものの、現時点で言われているDAOの設計では、これまでと大きく変わる価値観の変化は起こらない。

貢献度の測定方法
・透明化する内容
・ガバナンスへの影響度を再定義
・金銭的価値提供と活動との貢献バランスの再定義
・分散する項目に対する、明確な理解

などと同じように、
『集団化の弊害を取り除く設計』
が、重要な要素として優先度上がってきた。


自己決定の重要性

自己決定は、参加者がDAOの運営に積極的に関与し、個人のスキルや知識をコミュニティに貢献する動機となりうる。
個人が自分の意見やアイデアを自由に表現し、それがDAOの意思決定プロセスに直接的に影響を与えることが可能となり、希望すればアイデアの出し手でありながら意思決定にも参加可能であり、その環境に未来を感じれば投資家にもなれる環境が用意される。
多様な視点が尊重され、コミュニティ全体の様々な解決策の探索が促進される可能性が広がる一方、集団意識をベースとした社会だったことを前提に考えると、意思決定するための素養が不足し、組織全体としての最適解を『能力的』に意思決定できないリスクも大きい。

組織運営や企業経営も、ある意味では立派な『専門性』をもった活動だと考えると、クリエイティブやエンジニアを筆頭とした、各専門分野の中に組織運営という役割は必要となる。
ただし、これまでの組織のような上下関係が発生したり、組織運営の意思によって利益や不利益が左右される環境は改善し、『役割の一つ』というポジションに留まる組織環境を用意することが必要。

自己決定を行える環境は、DAO参加者側にこそ必要

自己決定という行動の粒度が、あまりにもバラバラな現在の環境下では、自己決定に関する意識の統一を事前に行うことは重要なことになると思われる。

言葉だけが先行し、本質的な理解値がバラバラな
『自己判断』『自己決定』『自己責任』
実は、この部分に関しての粒度や温度感が離れすぎていると、その差事態が集団の意思決定に悪影響を及ぼす。

これまでは、意思決定を一部の存在に委ねる環境だったため、意思決定に影響しないことも、メリット化されてきていたわけで、多くの人は意思決定するための脳みそが運動不足状態。
まずストレッチを行い、意思決定するための脳みその使い方を思い出してから実行しないと、すぐ筋肉痛になるし、あっさり転ぶことも多いと思うので、事前の準備や安全な環境を用意することが必要だろうと思う。

自己決定の教育・復習
DAO参加者には、DAOの運営メカニズム、ガバナンスの仕組み、そして自己決定の重要性について教育することが必要。
知識と理解が深まることで、参加者はより自信を持って意思決定に参加し、コミュニティへの貢献を積極的に行うようになる。

自己決定のためのコミュニケーション
DAO内での自己決定を促進するためにコミュニケーションは必要。
オープンなディスカッションフォーラムや情報交換の場があり、また質問に対する回答も自律分散的に行われている環境を用意し、定期的に『自己決定に関わる投票の薦め』などを行っていくことで、参加しやすい状況を作っていく必要がある。

自己決定が行える技術
自己決定をサポートする技術インフラを整備。
参加者がDAOの意思決定プロセスに簡単にアクセスし、貢献することが可能になる。
ブロックチェーン技術やスマートコントラクトを利用して、投票プロセスを自動化し、透明性と公正性を保証する。
ただし、初期段階では意思決定内容が知られたくない(知られることを警戒して意思決定内容にバイアスがかかる)ことが想定されるため、『透明化』する内容を検討する必要がある。


詳しい説明は省くものの、この
【自己決定による意思決定プロセスへの参加】
に対して、どのようなインセンティブを設定し、リスクとコストを与え、結果に対する未来に影響を与えるかが、とても重要。
そして、この意思決定の結果や、そこに至る活動をサーチして、貢献度に対するインセンティブ計算に影響を与え、自己決定が貢献とメリットにつながるシステムを構築する必要がある。

多数派のデメリットをデザインしメリットと相殺

多数派の決定がデメリットになるようなエコシステムの設計で、DAOにおける集団心理の影響を軽減し、個々人の意思決定を促進する重要な戦略とする。
設計理念は、多数派による支配を防ぎ、少数意見の価値を保護することで、より健全でバランスの取れた意思決定プロセスを促進する。

また、それを理由に『少数派』を意識したり『多数派は損』ということではなく『自己決定で自己の正しさから意思決定する』ということに、最大限のメリットを提供できる環境をデザインする。

抑止力としての設計理念

多数派による意思決定が自動的に最適な解決策を導くわけではないという認識と、自己決定による活動の証明に重きを置く環境を目指す。
実際、多数派の意見が圧倒的な支持を受けることで、集団思考やエコーチェンバー効果が生じ、創造的な解決策や重要なリスク要因が見過ごされる可能性が散見される。
不正に関する放置や、不正予備軍への自浄が行われない原因にもなる。
したがって、多数派の決定に対するインセンティブコントロールや、自己決定によるものか否かの判定システムを導入し、意思決定までのプロセス判定が可能な状態とすることが、より望ましい。

方法としては大きく分けて3つ。
ほかにも候補があったり、そもそもの投票システムを別のアプローチで行うことによって、多数決バイアスを取り除いた意思決定プロセスをデザインできるのではないかと模索中ではあるものの、現時点では下記の感じが一般的だと思われる。
※投票権の取得条件などによって、投票の仕組みのデザインは柔軟に変更できる環境が望ましい。

①投票に重みづけ(クアドラティック・ボーティング)
投票権の重みを投票者の意見の強さに応じて調整する。これにより、単純な多数決ではなく、参加者の意見の強さを反映させることができ、少数派の意見が完全に無視されることを防ぐ。
また、投票そのものにコストが発生することで、不用意な投票が起こらない環境とし、コストを支払ってでも意思表示をする貢献者の測定も行える。

②異議申し立ての機会
意思決定プロセスにおいて、異議を唱えるための明確な機会を設ける。
これにより、決定に対する慎重な検討が促され、一方的な多数決による決定のリスクを減少させる。
また、内容の異議だけではなく、『不定期&抜き打ち』による、意思決定プロセスに関する確認などが行われる環境とすれば、行動履歴のサーチと合わせて、自己決定か否かの判定に役立つ可能性はある

③意思決定の透明性
全ての意思決定プロセスを透明にし、議論と投票の記録を公開する。
透明性が高まることで、参加者は決定の背景にある理由や論拠を理解し、より情報に基づいた意思決定が可能になる。
ここに、無言の意思や、行動による意思表示過去の投票との一貫性など、様々な要素から、意思決定プロセスを判定することが可能となっていき、インセンティブ設計や貢献度測定との合わせ技で、参加者の行動に自己決定の理由付けが行えると思われる。


個人主義と貢献度測定の相乗効果

今回は貢献度測定に関しては省きますが、
貢献度の測定方法の確立
・自己決定を前提とした意思決定プロセス参加に対する、リスクや責任、インセンティブへの反映
・透明化された貢献度測定アルゴリズム
・バランス調整をしたガバナンス投票権の付与システム
・DAO参加者の活動そのもので変化させられるDAO内の判定アルゴリズムの実装

あたりを整えて、DAO組織がポテンシャルを最大化できる環境となるのではないか
と現時点では考えているものの、考えるほどに新たな調整項目が出てくるので、あくまでも『現時点では』。
複合要素を検討していく過程で、より最適な変数が発生する可能性を模索し続けたい。


投票と責任:未来への影響を考慮した設計

現状では、かなり無理があると言われている考え方になるが、本来はあってしかるべき・・・という、投票するコストとリスクに関して、しっかり設計する必要があると考えている。
コストがかかると投票がされない
・リスクがあるなら投票しない


という参加者を『貢献者』と扱う理由はなく、貢献者ではない『参加者』にたいして、組織の方向性を決定する意思決定に参加する環境を用意する必要は、現時点ではないと断定して考えていく。
※将来的には、緩やかな意思決定への参加が必要になっていくはず

コアな参加者や、本気でDAOによる未来を目指す参加メンバーと、そうじゃないメンバーがリワードのみの差で終わる組織設計なら、やはり既存組織構造のほうが数倍優れているわけで、DAOとして新たな組織としてポテンシャルを最大限発揮させるには、やはり分散化が必要。
そして、その分散項目は【リスク、責任、メリット】をセットで考えることが、前提条件となるべき。

投票行動の責任

投票には、個々の参加者がコミュニティに対して負う責任が含まれる。
これは、提案された決定がコミュニティの長期的な目標と価値に合致しているかどうかを検討し、その影響を考慮することも意味する。
投票は、短期的な利益ではなく、コミュニティの持続可能な成長と健全性を優先することが求められるが、自由な投票が可能な状態とすべき。
短期的な利益を追求する存在が少数派であるように、組織自体が存在価値や存在意義を見出し続けるべき。

また、悪意や意図的な組織崩壊を目的とした攻撃に対しての体制はガバナンスの仕組みではなく、行動理由のほうでコントロールすべき。
・多くの人に否定されないように存在し続ける
・組織崩壊によってメリットが生まれないような設計にする
・組織の消滅が、多くの人のデメリットになるように価値創造すべき

など、やろうと思えば組織への乗っ取りや崩壊が可能な自由環境でありながら、その行動を起こす存在が現れない
という設計にしてこそ、DAOであり自律分散的な組織といえるのではないか。

強制力を極限まで放棄し、存在価値や存在意義を、その参加者たちが醸成し、その判断すらも参加者が判断できる環境のために、エコシステムの考察とDAO設計をする毎日は続く・・・・


DAOに参加するすべての人々が自らの意思決定の重要性を理解し、個人としての自由と創造性をコミュニティの利益にどう結びつけるかを考える日々です。
DAOのエコシステムにおいて、個人主義と集団主義の適切なバランスを見つけることは、その成功の鍵を握っていると考えて、今日も頭を悩ませます。

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