【春秋一話】 6月 「Z世代」が担う日本の将来
2021年6月21日 第7097号
最近「Z世代」という言葉を様々なメディアで目にする。「世代」という言葉を辞書で調べると、「親・子・孫など、同じ血筋を引いたそれぞれの代」という意味と「時をほぼ同じくして生まれたり、時代的経験などを共有したりしている一定の年齢層。ジェネレーション」の二つの意味がある。日本国内でよく使われる「団塊(だんかい)の世代」は2つ目の意味で使われており「Z世代」も同様である。
「団塊の世代」という言葉は1976年に発表された堺屋太一氏の小説「団塊の世代」により名付けられたものだが、1947年から1949年の3年間に生まれた約800万人の加齢とともに、オイルショックを経た日本経済がどのように変容していくかを描いた未来予測小説である。いまこの物語を振り返ってみると1976年当時に経済企画庁の官僚だった著者が描いた未来が、社会の中で現実のものとなっていたことがわかる。
高度成長期を支えてきた団塊の世代であるが、バブルの崩壊を境に日本経済は大きく変容し、2025年にはこの世代が後期高齢者となることにより医療保障制度が懸念される問題が大きくクローズアップされている。
最近話題となっている「Z世代」は、1990年代後半から2015年頃までに生まれた世代を指すと言われている。1980年代以降、バブル世代、就職氷河期世代、ゆとり世代など、日本の社会情勢を背景にした名称で呼ばれてきたが、この「Z世代」はこれまでのように日本の時代背景を投影した呼び方ではなく、アメリカで生まれた概念がそのまま使われている。
アメリカでは戦後の人口増世代をベビーブーマー世代と呼んでいるが、日本の団塊の世代が戦後の3年間に生まれた世代を呼ぶのに対して、アメリカのこの世代は1946年から1964年までの20年ほどの間に生まれた世代を指している。
アメリカの人口は日本のように第二次大戦後の3年間だけ極端に増加したということはなく、この20年間ほど微増ないしは横ばいで推移しており日本とは異なる。アメリカではこのベビーブーマー世代に続く世代を、ジェネレーションX、ジェネレーションY、そして1990年代後半から2015年頃までに生まれた世代を引き続く形でジェネレーションZと呼んでいる。
この呼び方が日本でも使用されたということであるが、これまで日本では世代の呼び方を社会情勢に合わせていたのに、何故この世代だけアメリカで使われた呼び方をそのまま使用することになったのだろう。
世界的にデジタル化が加速してきたのは90年代後半であるが、「Z世代」が育ってきた時代はさらにデジタル化が進み、生活の中でデジタルを活用することが当たり前の真のデジタルネイティブ世代、SNS世代とも呼ばれ、他者との関係性にも変化が現れる。
これは世界の先進国ではどの地域でも同じであり、デジタルネイティブの世代は個人中心の考え方からダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(一体性)という考え方に基づき、他者との関係性を重要視するようになってきたと言われている。
戦後の高度成長が終わり、バブル崩壊からの終わりの見えない失われた時代、そして世界的なパンデミックなど、混沌とした現代の日本。かつて団塊の世代が高度成長期を担ったように、新たな世代である「Z世代」がこれからの日本の将来を担い、希望をもたらすことができるのか、注目していきたい。
(多摩の翡翠)