良い写真とは何か・・その3
良い写真とは何か
「良い写真とは何か」とか、「写真の創作とは何か」とか、とずっと色々考えていて、noteにも、あ〜でもない、こうでもないと書いている。その答えは、写真家の吉田亮人(あきと)さんがその著書「しゃにむに写真家」にて示していてくれた。
吉田亮人さんの「しゃにむに写真家」
JR上野駅構内のセレクトショップに、本が並べてある。その中で、吉田亮人さんの「しゃにむに写真家」という本が置いてあった。なんだか読んでくれと背表紙が語っていたので、買ってみた。これがなかなかいい。
吉田さん、仕事を辞めて写真家になる
吉田さん、奥様とご本人が当初は二人とも教員だった。ある日、奥様が二人とも教員なんてつまらない人生を送ることになる、と言って、自分じゃなく、ご主人の亮人さんに転職を勧める。言われるがままに教員を辞めることになるが、どんな仕事に着いたらよいかと思案していると、これまた奥さんに「写真家になれば」と言われる。写真を学んだことはないが、とにかく教員辞めて写真家に向けて出発する。奥さんの協力なリーダーシップ。でも、奥さんに約束させられる。「写真家やったらって勧めたのは私だけど、やるって決めたのはあなた。失敗してもあたしのせいにしないで」と。
いきなり海外
それで、その後の吉田さんの行動がすごいのだけれど、一番最初にタイにあるミャンマーの難民キャンプへ行く。そこで写真撮ってくるが、その写真に自分の「覚悟」がないと気づき、次はインドで自転車旅行。そこで、更紗(さらさ:キャリコ)工場の更紗職人を撮影・・エプソンの公募展に入選(個展開催)する。
さらに、チベット、バングラデッシュへと渡り歩き、写真家として成長していく。
その行動の範囲が桁違い。その体験の中で、色々な風景、人間模様、出会いがあり、都度、写真の本質に目覚めていく。この本を読むことでその追体験ができる。
奥さんのすごい指摘
そして、写真に対してのすごい眼力のある吉田さんの奥さんが・・笑える。チベットで鳥葬を撮影し、帰国後のある日、スティーブ・マッカリーの凄さを吉田さんが奥さんに説明したあと、その鳥葬の写真を見せたら、あっという間に見て、以下の顛末になる。
良い写真って何?
吉田さんの奥さん、写真家でもなんでもないけど、その故か、率直ですよね。
そこに行けば「誰でも撮れる写真」じゃだめ
どんな苦労も写真の良し悪しに関係ない
ということを明確に言ってます。
写真の創作性
判例では、「写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。」とし、著作権法による保護対象となることを認めてはいますが、その創作性を認めるには表現自体の独自性が要求されます。「誰でも撮れる写真」
に表現自体の独自性を出すのは、相当難しいことでしょうね。
額に汗理論
著作権法の解釈理論に、「額に汗理論」というのがあります。額に汗をかくぐらい一生懸命頑張ってお金や労力をつぎ込んだものは著作物として保護すべきであるという考え方です。しかし、我が国著作権法ではこのような理論は認められていません。吉田さんの奥さん、無意識に著作権法に従った評価していますね。
良い写真とは何か・・まだまだその4へ続きます。
参考:その1 良い写真とは何か・・その1
https://note.com/tomfarmount/n/ncc9c095bc1ea
参考:その2 ファインアート写真とは何か
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