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窃盗罪――脅迫犯に金を差し出すため売春を繰り返し客の金を盗んだ女

 被告は20代後半の女性。手錠と腰縄をつけられており、女性刑務官と比べると小柄。太っており、大人しそうに見える。

被告が問われている罪は、窃盗罪である。売春を繰り返す中で、客の隙を見て金品を奪うという事件を二回起こした。盗んだ金額については異議申し立てをしたものの、その他の犯行内容は認めている。

被告の経歴と障害

被告は大阪で生まれ育ち、高等支援学校を卒業した。被告には軽度の知的障害がある。知性が小学校高学年程度のものだと診断されている。DQ(発達指数)を近年に調べた結果は、66だったという。発達指数は心身の発達程度と年齢のギャップを測るものであり、年相応に発達していれば100となる。健常か異常かの境は70であり、66である被告は下回っている。

人を信じて騙されやすい、という特性を持つ被告は昔からよくトラブルの渦中にいた。高等支援学校時代、同級生に騙されるまま大阪から遠出して、福岡で監禁されたことがある。警察に発見された時には、被告は借金を背負わされていたという。

大人になってからの被告は、障害者支援を受けながらスーパーで9年間勤続した。結婚し子供を二人生んだが、2019年の春に離婚し、シングルマザーとなった。

事件に至るまで

2019年の5月か6月ごろ、被告はIという男性とネットゲームを介して知り合った。ネット上の付き合いと電話でのやり取りのみだが、被告はIを信頼し、自分の名前や住所などの個人情報も明かした。

借金があり金に困っていた被告に、投資をして儲けないかとIは誘いをかけた。被告には投資に関する知識がなく、どのようなものか詳細を聞いたが、実際の取引はIではなくその上司がやっているとのことで「俺は詳しくは知らん」と返された。それでも被告はIを信じ、Iの口座に3万円を振り込んだ。

二週間ほど経ってから、Iは投資が成功したが金を引き出すのに手数料がかかるとして更に金を求め、被告は言われるまま送金した。更には、Iの母親が入院しており治療費が必要だと言われるなど、様々な要求をされては何度も送金した。

被告は詐欺ではないかと思い、別居している母に相談し、母にも詐欺だろうと言われた。しかし、詐欺について扱ったテレビ番組を見たところ、「詐欺犯は金を取った後で消える」と言われていた。Iが送金後も消えないのなら詐欺ではないのかもしれないと、信じることにしたという。

Iの金を求める態度は次第に脅迫的なものになった。
「お前の子供がどうなってもいいのか」
Iに子供が通う保育園まで教えていた被告は恐怖した。

振り込む金のなくなった被告に、Iは体を売ればいいと教えた。被告はネットで売春相手を募集し、稼ぎの1/3だけを交通費や生活費として使うことを許され、残りの2/3をIに送った。家に帰らずネットカフェを転々としながら、ほとんど寝る時間もなく体を売り続けていたという。

一度目の犯行

2019年7月17日、被告はネット友達のAとデートをした。Aとは、Iと知り合ったのと同じネットゲームを介して4月に親しくなり、5月以降何度か実際に会っていた。Aは大阪府外に住んでいるが、被告に会うために来てくれていた。

大阪市北区のホテルでAは被告と性交し、7月18日の午前5時30分頃に就寝した。眠るAの傍らで被告は、Iと電話で話した。「今がチャンスやんか、盗めや」とIは金を盗むよう指示した。躊躇ったが、子供に危害を加えることをIにほのめかされて断れなかった。


被告はAの財布とスマホを盗んでホテルから逃げ去った。

その際にAの財布に入っていた金額の申告が、Aと被告で異なっている。Aは財布には3万5千円残っていたはずと主張。被告は2万5千円だったと主張し、被告の意見が採用された。

被告は金を得た後で、Aの財布とスマホを公園に捨てた。

Aは「信用していたのに許せない」と被告に対し厳罰を望んだ。しかし、被告が示談金10万円を支払ったことで和解した。

二度目の犯行

2019年7月21日、被告はネット掲示板で知り合ったBという男性と顔を会わせた。Bは大阪府外に住んでいるが友人に会うために来阪した。ついでに女性と一夜を過ごしたいと思って、掲示板で売春相手を募集していた被告に連絡したのだった。


深夜に大阪市浪速区のホテルに着くと、Bは売春代として1万円を被告に渡した。被告は性行為の前にシャワーを浴びるようBに促した。Bは別にいいと断ったが、被告に強く要求されて渋々浴室へ入った。

被告はその間にBの財布を盗もうとしたが、Bのカバンの中には物が多く財布を探すのに手間取ったため、カバンごと盗んで逃げた。外で財布を探し当てると現金7千円を抜き取り、財布とその他の荷物を投棄した


Bは「刑務所に入ってほしい」と厳罰を望んだ。和解すべく弁護士はBと連絡を取ろうとするも、Bは電話を無視し交渉ができない状態となっている。

二件の事件とも、被害者は直後に警察へ通報した。
被告は盗んだ金のほとんどをIに送金した。

法廷にて

裁判では、情状証人として障害者相談支援員の女性が出廷した。3年ほど前から被告の担当をしているという。
「人を信じやすいので危ないと思っていた。でも犯罪をするとは思っていなかったのでショックを受けた」
「周りの支援者を信じて、一緒に生活してほしい」
「釈放後は子育てと就労の世話をしたい」

また、被告の母親も出廷した。母親は被告の父親と離婚後に別の男性と再婚し、現在は被告とは別に暮らしている。被告が高校を卒業するまでは共に暮らしていた。今でもLINEで頻繁にやりとりし、月に一度は夫も混じえて被告と食事会をしていたという。

母親は、Iについて被告に相談され心配していたところ、被告が行方不明になってしまったため警察に捜索願を出していた。被告の失踪は売春のためにネットカフェを転々としていたからだというのを、被告の逮捕後に知った。
「(事件を知ってから)人様を傷つけてはいけないと娘に言い聞かせました」
「親として至らないところがたくさんあり、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「一日も早く社会に復帰できるようがんばってほしいです」
「娘が大変なことをしてしまい申し訳ないです」
被告の母は涙混じりに話した。

どうして支援員や母親にもっと頼らなかったのかと問われ、被告は泣いた。

Iとのやり取りは読むと怖くなるのですぐに削除しており、証拠がなければ信じてもらえないと思っていた。人に何かを話しても上手く伝わらず信じてもらえなかった経験がこれまでにもあったという。
「インターネットがすごく怖いと思いました。もうネットでの儲け話とかには乗らない」

判決

懲役1年6ヶ月 執行猶予3年。
つまりは、今後3年間なんの罪も犯さなければ服役をしなくてもよい、ということ。
犯行自体は重く見られたものの、脅迫されて行ったことや、被告が抱える障害の特性が考慮された。
なにかおかしいと思うことがあれば、母や支援員に相談するよう裁判官は述べた。

感想

お金がなくて万引き、という単純なケースを想定していたら背景が複雑だった。Iのやったことは詐欺や恐喝に当たると思うのだが、逮捕されたのだろうか。あくまでも被告の窃盗についての裁判なので、Iの処遇には触れられなかったが、指示役は実行犯より罪が重くなるというし、ちゃんと裁かれてほしい。

売春を繰り返していた被告であるが、見た目は素朴な印象だった。拘置中で化粧などできないせいもあるのだろうが、年頃の女性らしい垢抜けた感じがないため、歳より老けているようにも、逆に中高生ぐらいのようにも見える風貌だった。

被告は子供がいるらしいが、子供についてはあまり触れられなかった。元から同居しているわけではないのかな?どこか施設に預けていたり?? ネカフェ泊まり歩いてる間に家に子供だけ置いていくわけにいもいかないだろうし。


やはり窃盗事件には関係ないため多くは触れられなかった、福岡に監禁された事件というのも気になった。監禁された上に借金?保護後に借金はチャラになったのか?未成年じゃそうホイホイ借金できないし、謎だらけだ。

この裁判、「信じる」というワードがよく出てきた。被告は人を信じやすい。だから顔を合わせたこともないIを信じてしまう。実際に会って情を交わしたわけでも暴力奮われたわけでもないのに。なのに、より信頼に値するはずの母親や支援員のことは信じない。相手にも信じてもらえないだろうと思ってちゃんと相談できない。「信じる」ってなんなんだろう……聞いていて概念がわからなくなっていった。

正誤や善悪よりも、強い言葉で命じられることに弱いのだろうか。あと被告が二人の男性と出会うことになったネットゲームってなんだろう。

動画にしてました。

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